63話 飼い主ゆえの宮に迷う
早めにどうもです!
よろしくです!!
「フンッ!ゴラァ!ドリャアッ!ドレァッ!」
「荒れてるね・・・サシミくん」
「いつも通りです・・」
サシミは一刻も早く、永遠迷宮世界の能力を解除させようとすぐ側に奥に続く道があるにもかかわらず、大型犬の声がした方向の壁を怪物化した拳で足を休める事なく破壊していく。禎達はその様子を早歩きでついて行きながら見つめていた。火星ちゃんは万歳のか足につかまっており、ロージはフラフラと歩いている。
「あの・・ロージくん、君の飼い主はどこへ・・?」
「わからない・・・山に連れてこられて、他の異能力ペットから逃げ回ってて、気がついたら逸れちゃって・・・それで・・」
「遠吠えを聞いて・・この迷宮に・・・?」
「・・・・・うん・・」
ロージは顔を下げて、この暑さで翼にあまり力が入っていない。
「なぁ、お前らが助けてくれるんだよな!僕をここから出してくれるんでしょ!!」
「おうよっ!!任せとけっ!早く外に出てっ!ジジィをぶっっっっっ飛ばす!!」
サシミはロージの質問に答えながら壁を一つ一つ力を込めながら壁を壊していると、連鎖的に周りの壁も崩れかけていた。
「呪〜」
「ん?さっきからどうしたの?火星ちゃん」
サシミが両腕を振り回している最中、火星ちゃんは万歳の足に隠れながらロージを睨みつけている。
「呪呪呪呪呪呪・・・・・」
「ねぇ、この怖い猫、僕をメッチャ睨みつけてるんだけど・・・・」
「猛禽類系のマゼラブート星人が気に入らないのかな?」
「呪ッ!」
ロージから顔を背けるとサシミの元に走って行った。
「呪・呪・死」
「ドリャアッ!ゴラァッ!ゴラァ!!オラァァッ!」
火星ちゃんはサシミの背中を突っついているが、当のサシミはガン無視を決めている。
「呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪」
「ドァァァ!!ドァァァ!背中に穴開くだろうが!んだよ!壁じゃなくてお前を殴るぞ!今俺を怒らせないほうがいいぞ。腹も減ってるからなぁ。お前を食べてやろうか!あぁ!?」
さっきとは違い凄いスピードで背中を突っつくと、ついにサシミはキレ始めた。血管を浮き上がらせて顔を引きつらせながら、火星ちゃんのホッケーマスクを両側から掴んだ。
「呪・・・・」
「何照れてんだボケェェ!!俺の手を止めてまで何が言いたい!」
火星ちゃんは顔が近くなったサシミに落ち着きなく両手をモジモジさせていた。
「殺っ!呪、殺死死殺呪怨死。殺呪呪殺怨。死殺殺」
「あぁ、そうか・・・なるほど・・・猫語か日本語で喋れ、オカルト猫・・」
火星ちゃんがサシミの言葉で用件を思い出して、また長い呪いの言葉で何かを伝える。しかしサシミは怒る気も失せたのか、諦めた表情で火星ちゃんを見つめた。
「呪〜」
「『あの鳥さん小さいけど苦手〜(;ω;)』って言ってるよー」
距離が離れている万歳が大声で火星ちゃんの言った言葉を翻訳する。
「あ?そうなのかよ」
「呪!呪!」
「初対面でそれはショック・・・・」
火星ちゃんが激しく頷くと同時に、ロージは下げていた頭を更に下げた。もう顔も見えない。
「気にすんな。コイツら変人変猫に嫌われたって、死ぬわけでも人生が終わるわけでもねぇんだからよっ!!そんな合コンもどきしてるより今はこっから出ることの方が大事だろうがっ!ハァ・ハァ」
勢いが止まったことにより、溜まっていた疲労が出てきたのか、サシミの拳の動きが徐々に遅くなってきていた。
「サシミ、少し休憩した方が・・・」
「休憩?必要ねぇ。俺は今、一度でも座り込んだらこの暑さでぶっ倒れる自信がある。息を荒くして、喋り続け、壁をぶん殴る事で意識を保ってんだよ。こんな意味不明な場所でカッコ悪く死ねるかよっ!」
もう限界が近づいているサシミが力を振り絞って壁を破壊した。その時
「ワオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!」
「まただ!!」「ッ!」「ひぃ!」「呪!」
「待ってたぜ!この声を!!」
三回目の大型犬の遠吠えが、真正面の壁の奥から聞こえた。その距離は誰でも分かるほど近い。ゴゴゴと音を立てながら、地面が揺れる。
「ワオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!」
「すぐそこだ!あとこの壁一枚破壊した先にいるぞ!!お前ら!早く走ってこい!破壊した壁が元に戻るぞ!」
「うん!」
「呪呪殺!!」「一体なんなんだよぉ!」
遠吠えと揺れがまだ続くなか禎達がサシミの元へ走り出そうとした次の瞬間
「ッ!!」「呪・・?」
サシミが壊してきた壁の両側にあった別れ道の地面から壁が生え聳え立った。もう迷路ではなく一直線の道になってしまっている。
「壁が・・出来た・・」
「でも、あの猫くんが壊した壁は元に戻らないよ・・戻るはずなんでしょ?」
(何がしたいんだあの大型犬。壁を作り道を狭めて何の意味がありやがるってんだ。俺たちを挑発してんのか?)
サシミが破壊した壁は元に戻るどころか激しい揺れで崩れていた瓦礫が更に崩れていた。もう壁の外観は残っていない。
「どのみち、あの大型犬がこの壁の向こうにいることには変わりねぇ!!迷宮のゴールはすぐそこだぜ!」
やっと目的であった、大型犬に会えると思うとさっきまで荒く息をしていたサシミが嘘のように、意気揚々と最後の一枚の壁を殴った。すると、
「・・・呪・」
「・・・・壊れねぇ・・」
殴った壁は傷一つ付かず、辺りにはその衝撃だけが響き渡る。さっきまで破壊してきた壁とは桁違いに硬く、サシミが怪物化した拳で思いっきり殴っても壊れなかった。
「猫?どうしたの!?」
「壁が壊れねぇんだよ!!さっきまで気持ちよく壊れてたのに!硬度が変りやがった!!」
「ワオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンォ!!」
サシミは何度も壁を壊そうと殴る。しかし壁はその黄色い原型を崩さない。大型犬の遠吠えと壁を殴り付ける音が反響する。
「クソっ!クソっ!あともうちょっとなんだ!壊れやがれこのクソ壁がぁ!」
「おい・・・サシミ・・・・・早く壊してくれ・・・」
「何もしてねぇくせに急かすんじゃねぇぞ!この・・・やろう・・」
禎の言葉に苛立ち振り向いたサシミは動きを止めた。禎達が何かに気づいたのか、後退りをしながら、サシミの方へ向かってくる。
「ワオォォォォォォォォォォォォン!!」
「おい・・おいおいおい!!」
「呪呪・・殺!!」
「あぁ・・」「・・・・・・」
サシミは禎達の真後ろの状況に苦笑いするしかなかった。火星ちゃんも怯えている。地面の振動が徐々に激しくなってきていた。その振動の正体は、
「お、お前ら!全速力で走れぇぇ!!」
「呪殺ゥゥ!!」
「ヒィ!!!」
黄色い壁だった。禎達目掛けて、黄色い壁が凄いスピードで突っ込んできていたのだ。逃げ場などどこにも無い、完全なる密室であった。禎達はサシミに言われた通り全速力で走り、サシミは焦りながら壁を殴り続ける。
(このためか!俺たちを潰すために逃げ道を壁で塞ぎやがったのか!あの大型犬、ここで俺たちを殺す気だ!)
「呪!呪!」
「サシミ!真正面の壁がダメなら横の壁だ!横の壁を壊して!!」
「どりゃぁぁ!」
サシミは真横の壁を拳をスイングさせて殴った。更に力が上乗せされるように。
「・・ダメだ。横の壁もびくともしねぇ。きっと、ここだけじゃねぇ。ここら一体全部の壁が同じように硬くなってやがる」
「そんな・・」
「ワオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!」
しかし期待も虚しく、結果は真正面の壁と同じだった。壁は崩れず、サシミの疲労だけが溜まっていく。揺れが強くなり、壁がコチラに狭まってきている。
「じゃあ!どうするの!僕たちこのまま!袋のネズミ!?」
「そんな事ならねぇ!クソッ!クソッ!クソがッ!」
サシミが真横の壁を諦め、真正面の壁を殴っているとついに禎達が合流して全員が一か所に集まった。壁は距離をどんどん縮めている。
「呪!殺!」
「ハァ・ハァ・ハァ、こうなったらっ!」
「ちょっ!サシミっ!?」
いくら叩いても無駄だと思い、サシミはあろうことかコチラに向かってくる壁に右足を怪物化させて突っ込んだ。
「サシミくん何で・・・」
「戻れっ!何してんだよ!!」
「壁が壊れねぇなら!こっちの壁を止めてやる!!思い通りにさせるかよ!!」
サシミは足の怪物化を解き、右拳を怪物化させてコチラに突進してくる壁を空中で殴ろうとした。しかし、
「ごばぇ!!」
「サシミィ!!」
壁がコチラに向かってくる力は凄まじく、サシミが壁を殴った瞬間、まるで車に轢かれたかのように、壁がサシミを押しのけた。サシミは壁に引っ付いたまま、禎達のいる壁に向かっている。凄い速さで。
(クソッ!壁が壊れねぇ事は薄々わかっていた。問題はこっからだ。まずは、俺が正面を向かないことには始まらねぇ・・ちょっとキツイが出来ない事はないっ!)
大の字に壁に引っ付いて、頰と腹を勢いよく回転させる。すると今度は背中が壁に引っ付き、壁に怯えている禎達を直視することに成功した。遊園地の絶叫アトラクションと同じように風をもろに身体全体に受けている。
「サシミと壁がどんどん近づいて来る!!!」
「あぁぁ!!ヤダァ!!死にたくないよぉ!!ここから出してくれぇ!!」
「呪呪呪ッ!」
もうすぐそこまでせまっている壁に、ロージは恐怖し、真正面の壁を両翼で叩いていた。
火星ちゃんも壁に頭突きをかましているる。
「ワオォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!」
「ねぇ!そこにいるんでしょ!!僕たちを助けてよぉ!ねぇぇ!!」
「その声、きっと聞こえてないよ」
「ぇ・・・?」
万歳は爪を噛みながら壁に耳を当てる。
「自分の咆哮、そんでもってこの壁が迫ってきている音、まだ続いているこの振動音。どんなに耳がよくてもこれだけの雑音の中、ちっぽけな声は届かないよ。それに聞こえてても、ここまでしている奴が助けるかな?
「そ・そんな・・・」
ロージは壁に手をつきながら、その場に崩れ落ちた。そんな中、サシミは
「ゴルァァァァ!!」
またまた右足を怪物化させると、右足のかかとを床に落とす。すると思った通り、かかとは床に減り込んだ。
「サシミ!!頑張って!!」
「簡単に言うな・・・イ・イテェ・・」
怪物化させた足を使い、壁の進行を少しでも遅くしようとしたが、壁のスピードは一向に変わる気配がない。痛々しい音を立てながらサシミの足に重いダメージが蓄積されていく。それも凄いスピードで。
「グッ!!ハァ・ハァ・ドリャアァア!」
右足の怪物化を解き、今度は左足を怪物化させて、同じようにかかとを床に落とした。また痛々しい音が響いた。
「止まれ!止まれ!!止まりやがれぇ!!!」
サシミは歯を食いしばり、痛みに耐えていたが、壁は無関心。かかとを犠牲にしてもまるで意味がない。
「止まれ!!止まれ!止まれぇ!!」
「足が・・・」
怪物化した足から血が吹き出ているのがわかる。温かい感触が全身につたわってきていた。
「ッテェ!!ダメだ!止まらねぇ・・・やっぱりあの壁を壊すしか俺たちの生き残る道はねぇ!」
足を上げ怪物化を解くと、視界がぼやけてきた。サシミはこの蒸し暑さと、遠吠え、かかとの痛み。そして壁に押され、脳が揺れる。もうサシミは限界だった。それでもサシミは右拳を握りしめた。
「面白いじゃねぇか・・・・またここでも一か八かかよ・・・・壊れるか壊れねぇか・・死ぬか死なねぇか・・・俺が勝つか大型犬が勝つか・・・・この一発で・・・・・決めてやるぜ!!」
「ワオォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
大型犬の遠吠えがゴングかのように鳴り響いた。
残り・403チーム
ありがとうございました!!
感想・意見宜しければお願いします!!




