62話 迷わぬ者に怒りなし
お久しぶりです!!
よろしくお願いします!
「呪殺〜〜」
「ダァァァァァ!引っ付くなマーズ!更に暑くなるからやめろコラァァ!ぐべっ!」
「呪〜殺〜」
火星ちゃんは嬉しそうにサシミに乗り掛かりながらたまに力を入れすぎて首を絞めている。そんなことをされながらも、サシミは大型犬の声がした方に向けて歩いていく。その後ろを禎と万歳が続いた。
「なるほど。マゼラブート星人が同断山を根城にしているって情報を掴んで、その子達を倒しにきたってわけか」
「はい。それがまさかこんなおおごとになるとは思わなくて・・・」
床についたサシミの足跡を見つめながら汗を垂らして足を進める。
「それで先輩は連れてこられたって言ってましたけど・・どうやって・・」
「アブダクションだよ」
「へ?」
腕をゆっくりと広げながら万歳は目を輝かせながら空を見上げた。
「あの、すみません。アブダクションってその・・何ですか・・・?
「・・・・・・え?」
禎の問いに万歳は何で知らないの常識でしょ信じられないの眼差しを向けてくる。
「オカルト部なんだからそれくらいは知ってないと、目からレーザー撃たれちゃうよ?」
(いつのまにかオカルト部に入部した事になってる!?)
「アブダクション。簡単に言えば宇宙人が人体実験をする為に、人間を誘拐することを言うんだ。僕達、昨日君達が家に帰って約束通り救急車を呼んだ後すぐに、宇宙人にアブダクションされたんだ!いやー!いやー!」
少し興奮気味に禎に語りかけた。さっきよりも表情豊かに、
「どんなふうに拐われたか覚えてますか!何か能力を使っていたとか!その、マゼラブート星人の顔を見たとか!」
「それが全く覚えてないんだよね。顔全体が柔らかい何かに掴まれた感覚はしたんだけど、どんどん意識が遠退いていって、目も全開してたんだけど霞んでいって、それで気がついたら同断山にいたんだよ。そういえば、トラクタービームの光もなかったな〜。あ!でも安心して、脳はいじられたかもだけど、死んでもないし、体のどこかを取られた感じもしないから、キャトルミューティレーションでもないよ!」
(また知らない単語が二つ出てきた・・)
この世の常識を覆す体験ができた事が嬉しかったのか万歳の舌が止まることを知らない。
「いやー貴重な体験ができたな〜!!その後目が覚めて起き上がると火星ちゃと一緒に同断山にいて、いきなり何処からか声がすると思ったら年老いた声でマゼラブート星人に全力で逃げろって言われるし」
「・・・先輩達はいつ目が覚めたんですか?」
「ん?多分五時間前くらいかな?」
「昨日から丸一日目を覚さなかったんですか!?」
「君の話を聞くとそうなるね。やっぱりマゼラブート星人はすごいな〜!!きっと僕たちを使って実験をしてるんじゃないの?」
「・・・実験」
「実験なんて固いもんじゃねぇよ・・」
サシミが立ち止まったかと思うと目の前は行き止まりになっている。それを睨みつけると火星ちゃんが背中にひっついているにもかかわらず、拳を怪物化させた。
「サシミ・・?」
「アイツらは遊んでんだよ。命をかけて、命をかけさせて楽しんでんだよ。罪悪感を抱くこともせず、自分達の娯楽のために。ふざけやがって。クソ共がっ!!」
「呪殺〜ッ!!」
怒りに身を任せ、目の前に聳え立つ壁を拳で思いっきりぶん殴る。すると音を立てて崩れ出し、先ほどと同じような穴が空いた。しがみついていた火星ちゃんは殴る瞬間の勢いに負けて後方に転がっていく。
「おっと、大丈夫?火星ちゃん」
「呪〜〜殺殺死〜〜」
回転している火星ちゃをを万歳が膝をついて受け止める。頭をクラクラさせ、ホッケーマスク越しからも分かるほどに目を回していた。
「おい!サシミ!」
「んだよ!俺は何度もそいつに離れろって言ったんだぞ?話を聞かねぇ馬鹿に、行動を制限されてたまるかよ。こんなところで油を売ってる暇はないんだからな。暑ぃ・・・」
「まったくアイツは・・・・ごめんね・・・火星ちゃん・・」
万歳と同じく禎も膝をつき、火星ちゃんに謝罪をする。回していた目を禎に向けると火星ちゃんは、
「呪殺ッ!!」
「ゴフゥ!」
半端ない勢いで禎の腹に頭突きをかました。何が起きたかいまいち分からず、腹を抑えている禎を尻目に穴を通り抜けようとしていたサシミの元へ走り出す。
「呪!呪!呪!」
「え?え?なんで腹に激突されたの・・・!」
「火星ちゃん謝られるの嫌いだからね。しょうがない」
「それでこの痛みは割に合わないですよ・・」
「おい!早く行くぞ!テメーは離れろ!」
「殺!死!」
穴の奥からサシミが声をあげた。サシミを見ると、早くも火星ちゃんに抱きつかれておりウザがりながらも歩みを進めている。禎達もそれに続いて穴を一人ずつ通りねけて行った。
「先輩、同断山って・・・・」
「ん?さっきまでいた山の名前だよ」
「やっぱり、そうなんですね・・・まさか名前があるなんて・・」
「この山は左右対象なんだ。山を真っ二つに断ったとしも同じ。だから同断山って言われてる。立ち入り禁止、イコール宇宙人。もしくはミステリーサークルだと思って中学の時に来て調べたんだ。だから不思議なんだよね〜」
禎は腹を抑えながら歩き、万歳は不思議そうに首を傾げる。
「え?何がですか?」
「五年前に来た時にはこんな沢山の見上げる程の木は生えていなかったんだ」
「そんな!まるで樹海のように広がってたあの場所は・・自殺の名所のようなあの場所は・・・」
「迷うことも、首を吊る為の頑丈な木さえもなかったよ。五年であそこまで変わらない」
「それじゃあ、あの木は・・」
すると禎達が見たあの並び立った沢山の木は一体何だったのだろうか。すると、
「おい!来てみろ!足跡だぜ!」
「本当!!」
サシミが指を指している床に近づくと、そこには足跡が一つだけあった。それは、
「鳥だね・・」
「呪死死死・・」
「鳥・・」
「鳥かよ。あの大型犬じゃねぇ・・」
鳥の足跡だった。その足跡は奥へ奥へと続いている。大型犬の足跡でないことを確認するとサシミは歩き出した。
「・・・・飼い主の足跡がねぇってことは、コイツも逸れたのか・・」
鳥の足跡を自身の足跡で踏み潰しながら後を追っていると、
「誰かぁ!!誰かぁぁぁ!!いるんでしょぉぉぉ!!いるんだったら返事してよぉぉぉぉぉ!!」
「ッ!」「呪!?」「・・・」
鳥の足跡が続いている通路の右奥から、叫び声が聞こえた。
「ねぇ・・今の・・・・この鳥の・・」
「チィ!!」
その声を聞いた途端、サシミは全身の毛を逆立たせて、全速力で先程の声の主のであろう鳥の足跡を走り辿っていく。
「サシミ!!」
「僕たちも追うよ!またマゼラブート星人に会えるかも!」
「呪呪殺!」
「ちょ!ちょっと!!あまり走ると体力が!!」
万歳と火星ちゃんも同じように足跡を踏みつけてサシミの後を追った。この蒸し暑さで体力を失うことを避けていた禎も折れて走り出した。
「ハァ・ハァ・ハァ(なんだ・・なんだよこの感覚は。嫌な感じだ。気分も悪くなってきやがった。この暑さでおかしくなったんじゃねぇ。そんな生っちょろいもんじゃねぇ・・)」
暑い息を吐きながら腕を上下させて通路を進む。やっと壁の端まで来ると、足跡が続いている大型犬の遠吠えが聞こえた方とは逆の、右へと曲がった。するとそこには、
「い・いたぁ!いたぁぁ!!他の異能力ペットだ!お前ぇぇ!!」
「ハァ・ハァ・ハァ」
ペタペタと音を立てながらコチラに走ってくる小さなミミズクがいた。サシミ同様少し息を切らせている。ミミズクは怒った様子で近づいてきた。
「ハァ・ハァ・ふくろう・・」
「ふくろうじゃなくてミミズクだ!!ミミズクのロージだ!!そうじゃなくて!お前がやったのか!どうなんだ!説明してよぉ!!」
「あぁ?何のことだよ!テメーが説明しやがれ!」
「とぼけないで!!アレだよ!アレ!」
「ッ!」
ロージが翼で指した先には、遠くて見えにくいが確実に男が一人倒れていた。指一つ動いていない。その光景に急いで男の元へ走り出した。ロージも走ってついてくる。
「・・・・嘘だろ・・」
男の元まで辿り着くと、男は年老いた老人であり目を見開いたまま死んでいた。男に隠れて気付かなかったがその側には、首の骨が折れている犬の死体があった。
「ね・ねぇ・・まさか・・次は僕を殺そうってこと・・・?そうなの・・!」
(誰かが・・コイツらを殺した・・・)
サシミは死んでいる男達が歩いてここにきたであろう通路を見つめた。床にはその男と犬の足跡がついていた。かなり焦っていたのだろうか。擦れている靴跡がいくつもあった。
(・・・・・なんでコイツらの足跡だけしかねぇんだ・・・この男の足跡は誰かから逃げていた感じだ。でもそれなら追ってきた奴の足跡までくっきりと残るはず・・・自分達が体験してきた事だから良くわかる。でもねぇ。追ってきた野郎の足跡がねぇ。じゃあコイツらは一体誰に・・・・・・・・あれ?)
《おかしい・誰も追ってくる様子がねぇ。さっきだって聞こえてきた足音はこの男とトイプードルだけだった。コイツらはいったい誰に追いかけられてたんだ・・・》
「・・・・同じだ・・あの時と・・」
「おいサシミ!何が・・・って!!そこの人・・まさか・・」
「・・・死んでる・・」
「呪〜〜」
やっと追いついてきた禎達は目の前の死体に、驚きを隠せなかった。その様子をロージは首を回している。
「えっと・・もしかして・・お前が殺したんじゃない・・のか・・?」
「さっきの声の・・ふくろう・」
「ふくろうじゃなくてミミズクだ!!羽角があるでしよ?羽角が!!」
ロージが翼で自分の頭にはえている羽角を突っついていると、サシミが、
「ッ!」
「おい!サシミ!」
「おい!!!どこ行くんだよ!まだ話は終わってないぞ!」
凄い勢いで元来た道を走っていく。暑さの事など忘れて走っている。
「早く!早く大型犬を見つけてこの能力を解除してもらわねぇと大変なことになりやがる!!」
「どういう事だよ!しっかりと説明してくれ!あの死体は一体何なんだよ!!」
サシミはそのまま、大型犬の遠吠えが聞こえた方向へと向かう。後ろから禎達も疲れ切りながら走ってきた。
「この能力はきっと遠吠えを同時に聞いた奴をこの世界に引きずり込むんだよ!聞いてやがったんだ!!この蒸し暑い迷宮でも関係なく、用済みの異能力ペットを殺しやがった!」
「それって・・・!」
そのまま走るスピードをおとさず、真正面に壁が見えると、右拳を怪物化させる。
「あぁ、追いかけ方が一緒なんだよ。足音一つ立てず、足跡一つつけずに追いかけれる。この永遠迷宮世界にいやがるぞ・・もう一匹の追いかける異能力ペットのクソジジィがな!!」
壁を思いっきりぶん殴ると、音を立てながら勢いよく崩れていく。サシミのか顔は焦りと怒りが混ざっている顔をしていた。
「って事はあの男の人・・その異能力ペットに・・」
「殺されたんだ・・・このままじゃ、この蒸し暑い中、アイツの能力がわからずに俺たちみんなぶっ殺されて・・・・・・・
全滅しちまうぞ・・・」
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