61話 先んずれば迷宮を制す
まぁ、一週間も二週間も同じでしょ多分
よろしくお願いします!!
「えいえん・・・めいきゅう・・」
「永遠迷宮世界。意味わかんねぇ・・それに暑ぃ・・んだよここ・・」
目がチカチカする黄色い壁に囲まれている謎の場所。さっきまで目の前にいた大型犬は消え、全く見覚えのない蒸し暑い場所に変わっていたことに禎達は混乱していた。真正面には二つに分かれている通路があり、後ろは黄色い壁で閉ざされている。
「・・・猫ジャンプでも超えられない高さだな、ここらの壁・・・」
「・・・・ワールド・・」
「あ?なんだって!」
禎はサシミが腕から降りると小言で呟いた。
「この前、一茶街にいっただろ?その時、武捨さん達が戦った異能力ペットが言ってたらしいんだ」
『ここここここれは私の能力、暗黒世界』
「自分の世界に相手を引き込む能力・・」
「・・・じゃあコレも同じようなタイプの能力ってわけか・・・遠吠えをしたから発動した、大型犬の能力ってか?ふざけやがって・・俺に襲われるとでも思ったのか!?友好的な顔してただろうが!」
「・・・・それってどんな顔・・・?」
「こんな顔だが?」
サシミが見せた友好的な顔は目がつり上がり、歯を剥き出しにした、見るだけでちびりそうな顔であった。
「・・・完全完璧にサシミがわるい・」
「あぁそうかよ!どうせ俺は鬼みたいな顔だよ!ジッとしてても暑さでぶっ倒れるだけだ。先行くぞ!あ・・・?」
「どうしたのサシミ・・・っ!」
サシミが数歩歩くと壁と同じように黄色い床にサシミの足跡が残っていた。サシミの足裏が土で汚れてついたにしてはかなり濃い足跡がくっきりついている。
「サシミの肉球が・・綺麗に・・」
「ただし、足あげてみろ・・・」
「ッ!」
サシミに言われた通りに足を上げると、床にはサシミと同じ、靴の跡がついていた。驚き後ろに下がると足跡が禎を追いかけるように床に付いている。
「なんで足跡なんか・・・」
「まぁコレで俺たちがどこの道を通ったかがわかる。気にせずに進むぞ。もしかしたら出口があるかもしんねぇ」
サシミは歩き出し二手に別れている通路の前まで来ると右に曲がっていった。禎もその後を追う。その曲がった先には、
「チッ!まさに迷宮だな・・」
「・・・・」
いくつもの黄色い通路が左右、そして正面にあった。同じ景色、そしてこの蒸し暑さでサシミは気が狂いそうになっている。
「行くぞ・・・」
「うん・・」
禎達は1番近くにあった広々とした通路を進む。禎は汗を流し、サシミは舌を垂らしながら歩みを進める。しかし、
「・・・・・」
「・・・・・」
歩いた先に待っていたのはもはや見慣れた黄色い壁だった。行き止まりである。
「・・戻ろう・・」
「あぁ・・」
すぐさま来た道を戻り他の通路へ入った。さっきよりも長い道を進んでいく。何かがある予感がする。
「・・・・」
「・・・・・」
しかしその期待も虚しく、またもや行き止まりであった。汗が床に滴り落ち、言葉数も少なくなっていく。
「よ、よし!次に行こう!」
「・・・・・・あぁ」
禎達は別の通路に進む。
「また行き止まり・・・・」
「・・・・・あぁ・」
また別の通路に、
「・・・行き止まり・・」
「・・・・」
またまた別の通路に、
「・・・行き・・・止まり・・」
「・・・・・・」
またまたまた別の通路に、
「・・・・・・」
「・・・・・・」
またまたまたまた別の通路に、
「・・・・・・」
「・・・・・・」
別の通路の別の通路に、
「・・・・・・」
「・・・・・」
別の通路の別の通路の別の通路に、
「・・・・・・」
「・・・・・」
どんなに汗を流し、足跡をつけて道を進んでも一向に進む事ができず、最初の通路を右に曲がってからの分かれ道が全て行き止まりになっていた。
「・・・右の方面は全部行き止まりだ。戻って左の道に・・」
「グァァァァァァァッッ!!」
「のわっ!」
イライラの限界がきたのかサシミは大声で頭を掻きむしり叫び出した。
「腹も減った!喉も渇いた!蒸し暑いは!行き止まりばっかりで腹も立つ!流石の俺もプッツン行くぞコラァァ!!そんで振り出しに戻れってか!そんなのスゴロクだけで十分だボケェェ!」
「でも、先に進む為には戻らないと・・・左の道に進めば更に道が広がってる・・・・かも・・」
「かもだろぉぉ!?ここの沢山の分かれ道が左にもあるんだろ!?その事とこの暑さの事を考えると頭狂っちまうわぁぁ!!俺に!飯をよこせ!」
(1番サシミに向いてない・・・この異能力との相性最悪だ・・)
壁に額をつけて歯をギリギリ鳴らしながら力なく壁を殴っている。すると、
「あ!そうだ!」
「何!どうしたの」
「最初からやっておけば良かったぜ・・・ケケケッ!!」
何かを閃いたのか悪い顔をして気味の悪い声をあげながら腕を振り回す。
「えっと・・・何をする気・・?」
「道がなければ作ればいい!強制的に道を引っ張り出せばいい!あの大型犬、俺をこの世界に送った事、後悔させてやる」
「ちょっとそれは!禁断の!」
サシミは拳を怪物化すると目の前に聳えたつ壁に構えた。
「迷路の壁壊しじゃい!!」
「やっぱりぃぃ!!」
そのままサシミは壁をぶん殴る。すると行き止まりだった壁は崩れていき、人が一人ギリギリ通れるくらいの穴が空いた。その奥には道が続いている。
「しゃあ!やってみるもんだな!思っていたよりもろいぞこの壁」
「本当に壊れた・・」
禎達がその穴を通り抜けると先程の場所とは打って変わって広い空間に出て来た。しかしその空間の左右色々なところには同じような分かれ道がいくつもあった。
「よーし、今からこの黄色い壁、全部壊して綺麗さっぱりの更地にしてやるぜ!」
「・・・・・・」
「おい!どうした?あ?」
サシミはまた腕を回しながら辺りの壁を見渡し、機嫌が戻りかけている。しかし禎はこの空間に入ってからその場に突っ立ったまま動かなくなっていた。そんな禎を不思議に思い近くまで寄る。
「なぁ、ア・アレ・・・」
「アレ?アレっ・・・て・・おいおい・・」
禎は震える手で床を指刺した。そこには、黄色いはずの床が見知らぬ足跡によってその空間全体が所々黒く塗りつぶされている。ここで何が起こったのだろうか。
「コレ・・足跡か?」
「足跡って事は・・・僕たち以外にも・・」
「この世界にいる・・・」
乱雑についている足跡に近づくとサシミは床を見つめた。足跡の付いていないスペースに自身の前足を床につけて上げる。その床には可愛らしい足跡がついた。
「この足跡・・・人間と猫のだ・」
「え!?」
「見てみろ。こっちは人間が履いている靴だ」
サシミが床を指すとそこにはスニーカーの跡がついていた。
「本当だ。僕の靴より大きい・・・」
「そんでもって、こっちは猫の足跡。コレは後ろ足だな」
猫の足跡はサシミの足より小さく、辺り一面を走り回っていたのか人間の倍以上の足跡がついていた。
「じゃあ、早く探そう!この足跡を辿ればきっと会えるよ!」
(なんだ?この足跡・・・どこかで・・・・ッ!)
何かを感じたのか、耳を立てて真正面に向き直ると腰を低くして道の奥を睨みつけた。
「何!?どうしたの!?」
「来るぞ・・何かが走って来るぞ!」
ドタドタと激しい音がこちらに近づいて来る。サシミは拳を怪物化した。
「なんで戦おうとしてるんだよ!」
「先手必勝だ馬鹿野郎!この状況で錯乱して攻撃して来るかもしれねぇだろうが!この世界を作ったあの大型犬みたいにな!」
更に足音は大きくなってきている。もうそこまで迫って来ているのがわかった。
(来るっ!!)
「・・・・」
サシミは拳を強く握りしめて、いつでも殴れる態勢をとった。そして真正面の通路から現れたのは、
「呪呪殺!呪殺ーーーーーーーー!!!!」
「マーズ・・・・」
「・・火星ちゃん?」
火星ちゃんだった。上空に向けて奇声を発っしてこちらに向かって来る。顔に被っているホッケーマスクから目が光り輝いていた。
「グギャァァァァ!!!」
「呪殺死呪ーーーーー!」
さっきまでの威勢はどこにいったのだろうか。サシミは怪物化を解除して自身が壊した壁に向かって逃げ出した。
「ドガッ!!」
しかし火星ちゃんは大ジャンプをしてサシミに覆い被さると、そのままサシミの背中に落ちて来る。サシミの背中に衝撃が走り、顔面を床に強打した。
「イッテェ・・・」
「殺死呪呪呪・・・・」
「ドギャァァァァァァァ!!」
黄色い床から身体をあげると、右肩から火星ちゃんが顔を覗かせる。サシミは恐ろしいホッケーマスクに驚くが、後ろから首を絞めるように抱きつき、頬ずりをしてきた。
「呪〜呪〜呪〜呪〜」
「ちょっ!お前ッ!クビ・・!」
「火星ちゃん!締まってる!首が地味に絞まってるから!!」
「火星ちゃーん。急に走り出してどうしたのー。あれ?」
火星ちゃんが走ってきた通路から万歳が爪を噛みながらゆっくりとこちらに歩いてくる。
サシミは何度も火星ちゃんを引き剥がすが負けじと何度も抱きついてきていた。
「富士崎先輩!なんでここに!!」
「それはこっちのセリフだよ。さっきまで『同断山』にいたのに。やっぱりマゼラブート星人の仕業かな?そうだったら今日で二回目だ!そうだよね!呪呪殺、呪殺ーーーー!!」
「呪呪殺、呪殺ーーーー!!」
「グボラァァ!!マーズお前!殺す気か!」
「死ッ死ッ!」
「二回目?どういうことですか・・?」
上空に向けて万歳は声を荒げる。火星ちゃんも同時に声を荒げるとサシミの首を一瞬だけ締め上げた。
「え?君達もマゼラブート星人に連れてこられたんじゃないの?同断山に」
「連れてこられたって!先輩達も参加者なんですか!?」
万歳が首を傾げると何処からともなく、
『ワオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン』
「ん?」「呪?」
「この声って・・・!」「ッ!!」
聞いたことのあるあの大型犬の遠吠えがこの迷宮一帯に響き渡った。すると次の瞬間、
「うわっ!」「呪呪!?」
地面が尋常でないほど揺れ始めた。火星ちゃんは頭を下げて、サシミは辺りを見渡している。そんな中、
「サ・サシミ!!」
「あ?なんだよ!・・・ッ!!おいマジか!」
禎が見ている方を見てみると、そこはサシミが破壊した壁であった。信じられないことに破壊され崩れていた壁がみるみるうちに元の形に修復されていく。
「・・・壁が・・」
「戻りやがった」
数十秒でサシミが破壊した壁は何事もなかったかのように元の綺麗な黄色い壁に戻っていた。
「やっと収まった・・・」
「呪〜死」
「ケケケッ・・」
「ど、どうしたの・・・」
揺れが収まったことに安堵していると、サシミがまた気味の悪い笑い声を上げた。指の骨を鳴らし、全身の毛を逆立てさせる。
「どうしたも、こうしたも、そうしたもねぇ。いるじゃねぇか!あの大型犬がよ!!声のした方向に向かって壁を壊し続ければ、すぐ見つかるぜ!!待ってやがれぇぇ!大型犬!ケケケッ!!ケケケッ!ケケケッ!ケケケッ!ケケケッ!!ケケケッケケケッ!!!」
「呪呪殺、呪殺ーーーー!!!」
「呪呪殺、呪殺ーーーー!!!」
サシミは舌をクネクネ動かしながら更に笑った。この暑さでおかしくなったのか、顔がどす黒い。大型犬に向けた顔よりどす黒い。火星ちゃんと万歳もそれにつられて叫び声を上げる。
「・・・・・・ハァ・・・・悪人・・・悪猫」
禎は今思っていることを呟くと、目の前で大きな笑い声を上げながら歩みを進めるサシミ達の後を追った。
残り・404チーム
ありがとうございました!!
次回もこのくらいです!!




