60話 瞳の奥まで似る
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ヤモリが眼球を取り出した同時刻、
「ハァ・ハァ・ハァ」
「フゥゥ、スゥゥゥ」
禎はサシミを担ぎながら山を駆け登っていた。登り坂を休みなく、全速力で走っている為、息を荒げている。サシミの方は息を大きく吸い、大きく吐いていた。
「ハァ・ハァ・ダメだ・・・ちょっと・・休憩・」
サシミを下ろし禎は膝をつき、肩で息をしている。
「休憩だと!?そんなものしている暇なんてねぇぞ!俺も肺の調子が戻ってきたところだ。行くぞ!」
「行くって何処へ・・?」
「あぁ?そんなの決まってらー!もう一匹の異能力ペットのジジィのとこだよ!」
サシミは周りを見渡す。木々の奥は猫のサシミでも見えないほどの闇が広がっていた。まるで別の世界に飛ばされるようだ。
「だから何処に行くんだよ!」
「この山の頂上だよ!頂だ!い・た・だ・き!」
「頂上!?なんでまた・・」
「黙って文句言わずについて来やがれ・・・わかったか・・?」
息を切らしている禎に飛びつき顔を近づけ、ガンを飛ばす。よほど苛立っているのか少し血管も浮き出ている。
「・・・わかりました・・」
「おう・・・」
(腹が減ってる上に、あの糸の異能力ペットと戦えなくてピリピリしてるなぁ)
小さく舌打ちをしながら顔から飛び降り、疲れている禎に気を遣っているのかゆっくりと山を登りだした。それに禎も続く。
「クソっ!めんどくさい方を押し付けやがって、あのヤモリを見つけたのは俺だぞ!」
「見つけたというか見つかったんじゃ・・」
「あぁぁ?」
しかしサシミはUターンをしてまた同じように飛びつくと、禎の額に痕が残るほど頭をめり込ませる。耳を澄ませばサシミの腹から化け物が唸っているような音もする。
「そ、それに・・動けなかったあの状況じゃ本当にただの足手まといだったよ。酷ければ死んでいたかもしれないし・・」
「・・フンッ!」
ゆっくり飛び降りると黙って歩きだした。毛が逆立っておりかなり怒っている様子である。
「・・・俺がアイツに負けたってか!だぁぁぁ!次会ったら潰す・・!」
「ハァ、落ち着けって・・」
土を蹴り上げながら道を進む。声のトーンも低く両手を握りしめていた。よほど悔しかったのだろう。
「でも、大丈夫かな。剣山の刀じゃ、あの糸は斬れないし・・・」
「そんなに気になるんだったらお前が持ってきた手紙を見ればいいだろうが。まぁ、あのヤモリはまだ生きてるみたいだけどな・・・」
少ないが、所々にまだ糸が垂れ下がっていたり、木から木に張り付いていたりしていた。
禎はその場で立ち止まり、手紙を取り出すと剣山の名前が載っていないか、敗退チームの名前が書いてある欄を見始める。
「・・・・・・・・・・名前がない。よかった。生きてる・・」
「だろうな。コレで敗退してたらカッコ悪すぎだろうが」
サシミは剣山が生きていることに安心したのかさっきよりも気分良く歩いている。しかし禎は逆にさっきよりも落ち込んでいる雰囲気であった。
「・・・また・・死亡したチームが増えてる・・」
「・・・・・・」
手紙には敗退した飼い主とペットの名前が載っており、その横には気絶したか、死亡したか。飼い主ならば能力半径外かが書かれている。嫌でも目立ってくる、死亡という文字。以前に手紙を見た時よりもかなりの数が増えていた。最近敗退したチーム達も5連続で死亡と書かれていた。
「やっぱりおかしいよ・・なんで僕たちが戦いあって、殺しあわないといけないんだ・・死ぬ必要なんてなかったんだ。正義くんも、この手紙に書かれている人達も・・さっきの人だって・・この戦いが無かったら、みんな死なずに済んだのに・・一体誰が・・誰がこんなことを・・」
「俺がそんなこと知るわけねぇだろうが。今はその手紙を書いた野郎の言う通り戦って、数を減らすしかない。ムカつくけどよ・・・それしかねぇだろ・・もうすぐ頂上だ。行くぞ・・」
「・・・・・うん・・」
禎は手紙をしまうと、落ち込んだまま、サシミについて行く。さっきよりも坂が緩やかで歩きやすなっており頂上が目の前に迫っていた。なのに禎は足を引きずりながら歩いている。その靴と地面が擦れた音にサシミは
「いつまでもいじけモードに浸ってんじゃねぇぞ!!腹立つんだよその音!!」
「ぐおぉぉ!」
遂にキレて拳を怪物化させて、禎を山頂に投げつけた。
「いったぁ。何すんのさ!?」
「ウジウジウジウジしやがって!コレでジジィに負けたらお前のせいだからな!」
「え・・なんで・・」
「調子が出ないってことだよ・・・!ここの異能力ペットを倒そうって言ってたカッコいいお前は何処いったんだよ!」
「ッ!」
同じく山頂に足を踏み入れたサシミが牙を剥き出しながら尻餅をついた禎を通り過ぎた。サシミの言葉に禎は、
「まだウジウジするんだったらぶん殴るぞ!」
「・・・そうだよね」
自分の頰を叩き気合いを入れた。その頰はほんのり赤くなっている。
「お前の言う通りだ。今は落ち込んでいる場合じゃないよな・・」
「それでいいんだよ。前を向いて明るく笑ってアイツらの分も生きやがれ!地面ばっかり見やがって、金でも探してんですかぁ?あぁ!?」
(コレが通常運転だとすると、いじけてた方が良いような気がして来た・・・)
禎は立ち上がり、山頂の崖から下の景色を見ているサシミに近づく。この場所はさっきまでいた場所とは打って変わって、空気が澄んでおり、空が更に近くにあるように感じた。月の光も少し眩しい。
「うわぁ、思ってた以上に高いね・・」
「こんなの森じゃねぇな。樹海だ樹海。立ち入り禁止の理由は、自殺の名所だからじゃねぇか?」
「こ・怖いこと言うなよっ!」
サシミに追いつくと恐る恐るスロープも何もない崖から顔を出して下を覗く。沢山の木が生えていたが、倒れている木も所々に見受けられる。うっかり足を滑らして落ちたら、ひとたまりもない高さだ。
「冗談だよ・・それより今から本格的にこの山に潜んでいるジジィをぶっ飛ばすとするか・・」
「それで、これからどうするの?まさか、ここから探すとかじゃないよね・・!」
「珍しく感がいいじゃねぇか!当たりだ!」
親指を立てて嬉しそうに禎を見つめてくる。その顔に禎は少し不服そうな目を向けた。
「無理だって。確かに上からなら見回し放題だけど、高すぎるし木が邪魔で、小さなペットを探すなんて不可能に近いよ」
「誰もお前に探させるなんて言ってねぇだろうが」
「サシミだって一緒だろ?いくらお前が猫で、暗闇でも動いている物を識別できるからって・・」
「わかってんじゃねぇか・・」
「サシミ・・・?」
サシミは自分の右目を抑え、ゆっくりと空を見上げ始める。身体を震わして、汗が滴り、痛みを我慢しているようだった。
「おい・・・何してんだよ・・」
「拳も腕も耳も足も頭蓋骨も、おまけに肺まで怪物化できたんだぜ・・・ならよ、コレもできるはずだ。今やろうとしてんだけど・・・中々難しいな・・いてぇ・・」
歯を食いしばり、抑えていない左目は血走っている。足もフラフラ揺れておぼつかない感じだった。
「お前・・まさかっ!」
「あぁ、そうだよ・・・俺が猫で良かったなぁぁぁ!!!!!」
大きく叫ぶと同時に震えていた身体も止まり、一気に気が抜けた表情になると右目を抑えていた手を離した。
「視界良好・・コレで探せんだろ・・・」
「・・・・・・・」
『怪物化 眼』
サシミの右目は左目に比べて二倍くらい大きくなっており、緑色の瞳はギョロギョロとしたグロい瞳になっていた。まさに怪物そのものである。そんな目に禎は
「うわぁ・・」
「あぁ!?」
明らかに蔑んだ声を無意識にあげた。その声に反応したサシミがその眼で睨んでくる。怖すぎる。
「な、なんでもない。でもピンポイントで見つかるかな・・?僕たちその異能力ペットの顔も知らないんだよ?」
「別にジジィじゃなくても構わねぇ。異能力ペットなら誰でもいい」
サシミはその目のまま、崖から下の景色を見回している。怪物化した目の性能はすごく、木が生い茂っているにもかかわらず、その間を縫って、地面を動く蟻まで見える。
「誰でもいいって・・」
「ヤモリが言ってたろ」
『今は俺の邪魔にならないように他の弱っちぃ異能力ペットの処理をしてると思うべや』
「他に異能力ペットが生きてるんなら、ジジィはそいつらを追っかけてるはずだ。ジジィが見つかったらラッキー。それ以外の異能力ペットだった場合、保護して餌になってもらう。完璧な作戦だ。待ってろジジィ!」
「やろうとしてる事が悪者すぎる・・・」
自分がこのゲームの首謀者を倒しているところを想像しているのか悪魔の笑みを浮かべながら目をギョロつかせる。それも相待って真剣に怖い。すると、
「お!いたぞ!でっけー犬だ!大型犬が歩いてやがる!」
「やった!どう?あの時の異能力ペットかな?」
サシミは思っていたより近くで、コチラに四足歩行で歩いてくる大型犬を発見した。怪物化した目を凝らすとその犬の毛先までしっかりと見える。するとサシミは何か異変に気付いた。
「あ?なんだアイツ、怪我してるぞ・・っ!後ろ足血塗れじゃねぇか!」
「えっ!?なんで!」
大型犬は足から血が垂れており、顔や胴にかけて、何箇所かに傷があった。サシミは大型犬の周りを見渡す。
「周りには誰もいねぇ・・・木に張ってた糸に身体が当たったんだろうぜ・・」
「誰もいないって・・じゃあ飼い主もいないの!?」
「やべーぞ。次に狙われるぞアイツ。他の異能力ペット探してる時間もねぇ。よし、下るぞ!あの大型犬を餌にする!」
大型犬の場所を再度確認すると、怪物化した右目を押さえ元に戻す。怪物化した時とは違い、今度は簡単に元の綺麗な瞳に戻った。
「言い方はアレだけどわかった。行こう!」
「おい!どっち行ってんだよ」
「へ?」
サシミはもう見えなくなった大型犬の方を見ながら、反対方向である、来た道を戻ろうとした禎を止めた。
「いやだって、一旦ここから降りて迂回しないと・・・」
「時間がねぇって言ってんだろうが。遠回りしている暇なんてないんだよ!」
「うぐぇ!」
サシミは不思議そうな顔をしている禎の胸ぐらを掴む。そのまま、大型犬を見つけた方向の崖まで引きずった。徐々に禎の顔が青ざめる。
「ま・まさか・・・・」
「今日はやけに感がいいな。喜びなパラシュートなしのスカイダイビングだ」
「ちょっと待って!!嘘でしょ!?無理無理!死ぬって!死んじゃうから!」
何かを悟った禎は手足をジタバタさせたり、胸ぐらを掴んでいるサシミの腕を叩いたりしていた。しかしサシミは一向に手を離そうとしない。
「死なねぇて。俺は猫だぞ?こんくらいの高さなら・・・・・・・・まぁ、大丈夫だろ」
「今の間は何!?僕、人間だし!大丈夫な訳ないから!!」
「俺の怪物化を信じろっ!!」
「ッ!」
するとサシミは叫ぶ禎をよそに、崖から大きくジャンプをして、すごい速さで地面に落ちていく。その素早さは凄まじかった。
「〜〜〜〜〜ッ!」
「意識は保っとけよ!お前が気絶したらマジで死ぬぞ!」
(そういうことは落下する前に言ってェェ!!)
サシミは顔色一つ変えずに風を体全体に受けている。禎はというと涙を流しながら今にも気絶しそうな顔をしていた。
「よっしゃ!目瞑って口閉じとけ!舌切るぞ!」
「んっ!」
目の前に木が近づいてきた。禎は急いで口を閉じ、目を閉じた。
「どりゃぁぁぁ!!」
「うごぉ!!」
サシミは生い茂っている木をクッションにした。禎を庇いなら左足を怪物化させると地面を蹴り上げ更に勢いを殺す。その後に怪物化した足を戻すことによってゆったりと着地することに成功した。
「なっ!なんとかなるもんだろ!二十分のマイナスだ!」
「ハァ・・ハァ・体力もマイナスだ・・・」
「あの犬はコッチに向かってた。きっとすぐそこにいるぞ!」
「ちょっと・・待ってぇ・・・」
サシミは身体についた葉と枝を払い除けると、大型犬がいるであろう方向に走っていく。生と死の狭間にいた禎は足をフラフラさせながらも後を追いかけた。
「ハァ・ハァ・お!いたぞ!おい!そこの犬!」
「ハァ・本当だ・おーい!!」
サシミの数メートル先には大型犬がコチラにゆっくり歩いてくる。大型犬の方はまだサシミ達には気づいていない様子だった。そのためサシミ達は大声で語りかけた。
「ヒッ!!」
「へへっ!やっと見つけたぜ!」
コチラに気づいたのかサシミと目が合う。その顔は怯えており、目も涙が溢れていた。その顔は見るに耐えない傷が痛々しく残っている。
「嫌だ・・!僕に近づくな!!」
「あ?」「へ・・?」
しかし大型犬は目を見開き大声で叫ぶと、大粒の涙をこぼしながら後ろに後退った。すると
「ワオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!」
「おいおい!」「どうしたの・・あの犬・・」
大型犬は遠吠えをし始めた。透き通った声が周りに響き渡る。サシミは不思議に思いながらも大型犬に近づいた、次の瞬間
「ッ!」「へ!?何?」
先程まで目の前で遠吠えをしていた大型犬は消えて代わりに目の前には黄色い壁が聳え立っていた。それだけではない。木々が生い茂っていたはずの周りの景色も高い黄色い壁に変わっておりおり、細い道になっていた。更に涼しい風が吹いていたのに、今は蒸し暑い。
「んだよここ・・どこだよ!!
「サ・サシミ・・・アレ・」
「あ・・!?・・・ッ!!」
禎が震えた指で空を指すと、空は真っ黒になっていた。そこに目立つように黄色で漢字が書かれていた。そこに書かれていたのは
「なんだよ・・・アレ・・」
『永遠迷宮世界』
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