59話 ヤモリを割くに焉んぞ真剣を用いん
お久しぶりです!
ちょっとグロ注意かもです!
血の雨が降り注ぎ、ハリちゃんは真っ赤に染まった。そのハリちゃんの前には、
「ハァ・ハァ・ハァ・・・だから荷物と言ったんだ・・・・・グッ!!」
「で・・・でちゅ・」
「そんな・・・・・剣山ッ!!!」
白い毛の生えた腕が転がっており、そのすぐ隣には左腕が切断されている剣山が立っている。ハリちゃんを蹴飛ばし、反射的に腕を出した為、腕だけが糸に切断されたのだ。剣山の左腕からボトボトと血が流れ出る。
「なんで・・なんでケンケンが・・・」
「・・・一つの命と腕なら腕を取るに決まってるだろうが・・・ク・・ソッ・・・」
「優しい能力に優しい性格。馬鹿みたいに損な役周りべや!!あのままそこのハリネズミを見逃して俺に斬りかかっていたら勝ってたかもしれないのに・・・お人好し野郎べや!!」
「剣山・・っ!!」
心配して離れた場所にいる虎太郎が剣山に近づこうとした。しかし
「来るな!!」
「ッ!」
大声を上げて虎太郎を静止させた。
「お前は俺がいつ殺されても能力半径から出れる場所にいる・・・・こっちに来るな・・・来たところで、この腕が元に戻るわけじゃない・・・お前の命が更に危険に晒されるだけだ・・・・ハァ・ハァ・・俺がアイツを倒すまで・俺に・・・・近づくな・・」
剣山は腕と共に切断された着物の袖を拾い、口を使いながら包帯のように巻いてキツく結ぶことで血を止めた。しかし血は着物に染み込み、少しづつ滴り落ちている。
「その方が賢明べや。まぁでもどのみち、お前ら全員!ここで死ぬんべや!!」
ヤモリが両手を木につけた。するとその木の中から沢山の糸が姿をあらわし、クネクネ動くと、剣山達の方へ向き直る。
「ハリヤマ・・走・・・れ・・・走りながら・・針を撃ち込め・・・あの糸に・・触れるなよッ!」
「でも・・ケンケンは・・どうするんでちゅか・・・」
「俺は動ける・・片腕を無くしても・・俺は生きている・やるべき事は変わりない・・構えろハリヤマ・・死にたくなければな!」
血を滴らせてフラフラ揺れながら息を荒くして、歩みを進める。ヤモリを睨みつけると、ヤモリは口角を上げる。
『卍糸』
そうヤモリが呟くと、一斉に糸が剣山達に襲い掛かった。
「走れ!!」
「でちゅっ!!」
「キョキョ〜!!」
それと同時に二匹は左右に分かれて走り出す。次々と糸が剣山達目掛けて地面に刺さる。
「でちゅ・・!!でちゅ・・!!」
「ハリちゃん!!」
「ハァ・・グッ!!」
「剣山!!ゴホッ!」
ハリちゃんは手足をバタつかせながら走り続け、剣山が一歩、また一歩と歩みを進める度に止めていた血が噴き出した。それでも剣山は糸に触れないようにと、その足を休ませない。
「でちゅ・・!でちゅ!」
「ヤモリ、どっちからだ!」
「もちろん着物の犬からべや。あのハリネズミは大したことないべや。いずれ自滅する」
木から降りると、剣山に近づきながら両手を上げ人差し指を折り曲げる。すると剣山に糸が降りかかってきた。
「ハァ・・ハァ・・ガッ!!」
「やっぱり五体満足じゃないと生物はうまく機能しないべや!それを失った直後なら尚更。バランスを取るのが難しいべや?さっきからずっと斜め前に走ってるべや」
「ッ!!」
躓きながらも糸をギリギリのところで避ける。触れそうになると刀を生み出し、それを振るうことで、砂埃を起こし糸を混乱させた。
(砂埃で狙いが定まらない・・べや)
「ハリヤマ!撃て!!」
「べや?」
「了解でちゅ!!二十針!でちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅ!!」
攻撃が止んだ瞬間ハリちゃんは四つん這いになり針をヤモリに向けて二十本飛ばした。しかし、
「お前・・めんどくさいべやな?」
「で・・でちゅ・」
「・・・」
全ての針が地面から現れた糸に防がれた。
(さっきまでのコイツなら防げていなかった・・ハリヤマを襲った糸もそうだ。腕を失わず、無傷でかわせていたはずだ。糸の操作が短時間で上達している・)
「やっぱり先にハリネズミの方から倒すべや・・・楽しみは更に後に取っておくべや!」
「でちゅ!?」
地面に刺さっていた糸を消すと、ハリちゃんに近づいて木から糸を繰り出した。
「うおぉ!!こっち来たでちゅ!!」
「師がお前も強いって言ってたべや。その程度の力じゃないよな?」
「ハリちゃん避けて!!」
次々と襲いくる糸を走り避けていく。小さいが故に糸の間をすり抜けていった。
「貴様ッ!」
「ヤモリ!刀だ!!」
「べや?」
後ろから剣山が刀を投げつけてきたがバクトの一言で間一髪、木から更に糸を出して刀をバラバラにする。
「だからお前は後って言ってるべやッ!」
「ッ!」
ヤモリが手を握りしめると剣山とヤモリを隔てるように地面から無数の糸が飛び出してきた。剣山はヤモリに近づくことができなくなってしまった。
「クソっ!」
「お前はそこで片腕を犠牲にしてまで守った奴が死ぬ様を見とくべや!」
「でちゅでちゅでちゅ!!」
楽しそうに腕を動かしながら糸を操り涙目になっているハリちゃんを追い詰める。
「上!右!下!下!左!上!!もっと動け!走るべや!!」
(走りながら針を撃ち込め!走りながら針を撃ち込め!走りながら針を撃ち込め!走りながら針を撃ち込めでちゅ!!)
ハリちゃんは糸が降り注ぐ中、鬼気迫った顔で身体を屈ませた。背中の針が一層鋭くなる。
「くらえ十針!でちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅう!!」
「キョキョ!!」
針が十本、背中からヤモリに向かって放たれた。しかし
「でちゅ・・!?」
「へ!?なんで!!」
「・・・」
ヤモリは糸を出すことなく、手で顔を守り七本の針が全身に刺さった。残りの三本の針は地面に刺さる。
「少しチクッとするだけ。十本程度なら殺傷能力は皆無。数百本を豪勢に、派手に撃てばいいのに撃たないのは・・・お前、飛ばせる針の本数が決まってるべやね?」
「そ・・それは・」
「図星・・べやッ!」
「チュ!?」
両掌から糸を出すと鞭のように振り回す。ハリちゃんはヤモリが腕を下ろしたと同時にジャンプして糸を避ける。そしてその隙をついてヤモリに背中を向け、手を握りしめると
「でちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅ!」
「おっとっと」
針をまた何本か飛ばした。しかしヤモリは振り回している糸から糸を生み出し見事に防いだ。
「やった!成功べや!」
「また・・防がれたでちゅ・・」
「・・・・・」
糸の壁越しに剣山はハリちゃんが懸命にヤモリを近づけまいと針を飛ばし、逃げ回っているのを見ることしかできない。
「おい剣山!このままじゃ・・」
「わかっている・・・!」
虎太郎と智晴が刀を強く握りしめている剣山の元に息を切らしながら走り寄って来た。
(今のままじゃ、ハリヤマは勝てない。殺される。刀をこの糸の隙間から投げてもきっと気付かれてしまう・・・)
「でちゅ!!でちゅ!!」
「キョキョキョッ!キョキョキョッ!何本飛ばしても無駄べや!!
糸の攻撃は更に激しさを増していく。ハリちゃんも針を飛ばして必死に応戦するが、全て防がれていた。
(この刀を投げずに直接アイツに刺せれば・・・それならアイツを・・・・・ッ!!)
「・・おい!剣山!」
「ねぇどうしよう!もうすぐハリちゃんの針が!」
目を見開きながら持っている刀を見つめ、次の瞬間、剣山は糸の壁に沿って走り出した。その様子に虎太郎は、不思議そうに首を傾げ後を追いかけた。智晴はそれに気づかず、手をアタフタさせながら壁の隙間から逃げているハリちゃんを覗き見る。するとハリちゃんが、
「でちゅちゅちゅちゅちゅちゅ・・・ちゅ?でちゅちゅちゅちゅ・・でちゅ!?」
「べや?」
四つん這いになりヤモリに向けて針を撃とうとしたが、何度も気張っても針は発射されない。
「そんな・・」
「お前・・ついに弾切れ・・いや、針切れべやぁ?」
「ち・違うでちゅ!ちょっと針の出が悪いだけでちゅ!後十分くらい待てばまた針飛ばせるでちゅから!一回休憩するでちゅ!」
「やっぱり!針切れべや!」
その場にへたれ込み、手を振っているハリちゃんにヤモリは素早く近づく。掌の糸を消すと、両手を地面につけた。
「俺さっき言ったよな?お前ら全員、ここで死ぬって。強いお前らを全員殺したら、俺は更に成長できる気がするんべや。だから死んでもらうべや」
「な・何が成長でちゅか!ハリを殺しても身長は伸びないでちゅ!伸びないでちゅ!」
「内面の話をしてるんべや!成長すれば!もっとたくさん殺せるんべや!
その両手を高く挙げると、その地面から二本の糸が飛び出て来る。
「成長もできる・・殺せる・・あぁ!最高べや!」
「最高じゃないでちゅ!お前一匹のワンマンウィンウィンじゃないでちゅか!」
「それでいいんべや!俺だけが楽しめればそれでいいんべや!お前らは楽しむ必要なんてないんべや!喚いて、泣いて、失禁して、絶望して、死んでればいいんべや!!」
ヤモリが両手をハリちゃんに向けると糸が二本共同時にハリちゃんの顔に向かってきた。
「で・でちゅぅぅぅ!!」
「ハリちゃん!立って!逃げてぇ!!」
「まず一匹!」
ヤモリは笑みを浮かべ、智晴の叫び声が辺りに響き渡る。身体を伏せているハリちゃんに糸が命中すると思われた。次の瞬間、
「ガァァ!!」
「ヤモリッ!」
ヤモリが嗚咽を漏らすと同時にハリちゃの顔のすぐ近くにあった糸が動きを止め、その糸はすぐさま、地面の中に消えていく。
「は・・・あぁ・・どうなってんだ・・コレ・・ガァァァ!」
「で・・でちゅ!?」
ハリちゃんが顔を上げると目の前にたっているヤモリの小さな腹には刀が突き刺さっており、切先が腹から飛び出ている。
「なんで刀が刺さってるんでちゅか・・?ケンケンなら糸の向こうに・・・でちゅ!?」
「おいおい・・・マジ・・・べや・・・・・?」
ハリちゃんの反応にヤモリが後ろを振り向くと刀身が数十メートルはあるであろう刀を糸と糸の隙間からヤモリに片手で突き刺している剣山がいた。糸の壁越しにこちらを睨みつけている。
「間に合ったな・・」
「ケンケン!!」「剣山くん!」
「なんだよ・・!それ・・がはっ!」
口を開くと同時に刀を更に深く押し付けた。ヤモリは眼を血走らせながら腕と顔を垂れ下げる。口からは唾液も垂れていた。
「追い詰められて・・迷い・・・・焦り・・逆転した。漫画なら最高の展開だな・・・だけどお前のような奴は主役になれやしない・・そんなこと絶対に起きやしない・・」
「ァァァア・・ガァ・!」
「おい!しっかりしろ!その刀!痛みだけだ!斬れてない!血も出てない!耐えろ!」
手足を震わして、眼を限界まで見開いて痛みに耐えている。心なしか耐性もどんどん猫背になってきている。バクトはその場から動けずにいた。
「誰も背中に目なんてついていない。言われないと気付かないよな・・・調子付いているんだから疑いもしない・・!」
「アァァアアアアァァァア!!!」
「で・でちゅ・・!」
「ヤモリ!耐えろ!」
切先が真上を向くように腹に刺さっている刀をゆっくりと回転させる。するとヤモリが両手で顔を覆った。それを見たハリちゃんの顔が何故かみるみる真っ青になっていく。
「グウァァァァァァァァァァァァア!!」
「ッーーーーーーー!ムッーーーーー!!」
剣山は背負い投げをするかのように刀を肩に担いで力一杯振り下ろそうとしたが、刀の刀身は重く、片手では中々振り下ろすことが出来ない。左腕からは血が更に噴き出てきていおり、剣山の大声とヤモリの断末魔がぶつかり合う。
「グォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
「フーッ!ッーーーーーー!!ガァァァァァア!!!」
「頑張れ!!剣山くん!」
「剣山!!いけぇぇぇ!!!」
「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ッ・・・・・!」
虎太郎と智晴の声に応えたのか、ヤモリの上半身を真っ二つに斬りさき、振り下ろすことに成功した。振り下ろした途端凄まじい風圧が虎太郎を襲う。ヤモリは顔を覆ったままである。
「ハァ・ハァ・ハァ、どうだ・・・即死の痛みは・・・もうすぐ気絶する・・」
「ハァ・ハァ・ゴホッ!」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「ヤ・ヤモリ・・・」
振り終わると剣山は刀を消した。ヤモリは顔を覆ったまま声も荒げず、全く動かない。すると、
「あ!」
「糸が・・!」
壁のように聳え立っていた、糸が次々と地面に消えていく。周りの木に張っている糸も木の中に消えていった。
「糸が・・消えていく・・」
「ハリちゃん!!」
「ち・ちはるん!」
智晴が地面に膝を立て両手を大きく開けるとヤモリの正面でへたれ込んでいたハリちゃんが全速力で両手を開けながら走ってくる。
「良かった!本当死んじゃうと思ったよぉ!」
「違うんでちゅ!ちはるん!」
智晴の胸にジャンプしたハリちゃんは震えており顔色も悪かった。大声で何かを訴えかけてきている。
「違うだと・・?何がだ・・・」
「アイツは・・・まだ!「本当に・・・楽しいべや・・・」でちゅ!」
「何ッ!」
ヤモリは片手を垂れ下げると同時に悠長に喋り出した。ハリちゃんは智晴の胸に顔を埋めて、剣山は刀を生み出し直立不動のヤモリに向けて構えた。
「ヤモリ!お前!」
「バクト・・心配するなべや・・お前はそこで・・・見てればいい・・・べや・・」
「どうして・・どうして気絶していないんだ!気合でどうにかなる問題じゃない!腹から脳にかけて斬り裂いた痛みだぞ!」
ヤモリは片手で右眼を押さえながらこちらに近づいてくる。一歩一歩、ゆっくりと。
「痛み?そんなの偽物の痛みべや・・・本物の痛みには敵いはしない・・・」
「本物の・・・痛み・・」
「で・・でちゅぅ・・」
「痛みには痛みを上書きさせればいいんべや・・・そっちに注意を逸らせればそれでいいんべや・・・」
徐々にヤモリの口角が上がっていくのがわかった。そして眼を押さえている手が血塗れになっていることも。
「あの子・・手が・・・」
「ッ!」
「そこのハリネズミ・・・ありがとうべや・・俺が今こうして喋っているのもお前のおかげべや・・・!」
「ッ!」
「ひっ!!」
ヤモリが右眼から手を離すと、その眼には惨たらしく、ハリちゃんの針が一本刺さっていた。そこからは血が垂れておりその針も血塗れであった。
「貴様・・・正気か!」
「身体に刺さったのを放置しておいて良かったべや・・・この針自体には殺傷能力はない・・だけど・・こうやればさぁ!!」
「ッ!」
ヤモリは眼に刺さっている針を掴む。そして次の瞬間、
「痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!!痛い!!!痛い!痛い!痛い!痛い!!痛い!痛い!!イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイィィ!!痛い!痛い!痛い!イタイ!痛い!痛い!イダァイ!イタイ!イタイイタイ!痛い!!」
「ウッ!」「・・・・」
「・・・・・・」
「おい・・ヤモリ・・・」
グチャグチャと針で眼をこねくり回した。血しぶきが飛び散り、どんどんヤモリの眼が原型を留めていない形になっていく。
「ハァ・・ハァ・・コレで正気を取り戻せたんべや・・・殺せるんだったらなんでもやる。眼を失っても殺せるんだったらなんでも・・・」
赤い身体に血が飛び散り嬉しそうに話してくる。無邪気な顔で。
「お前達が俺をここまで追い詰めなかったらきっとこんな事はできなかったべや・・こんな小さな俺がここまで・・成長できたんべや・・・・・」
ズタボロになった眼に刺さっている針を握りしめる。そして、
「自分で自分の眼ん玉をほじくり返せる程になぁ!!」
次の瞬間、名一杯力を込めて針を引っ張った。プチっと音がすると、針と共に眼の玉も取りだし、ヤモリは地面に投げつけた。
「キョキョキョッ!キョキョキョッ!キョキョキョッ!キョキョキョッ!キョキョキョッ!キョキョキョッ!キョキョキョッ!」
「・・・・・」「でちゅ・・・」
残り・404チーム
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