55話 類は師を呼ぶ
どうもです!
目を擦りながら書いてます!
首から出た血が、海のように広がるとサシミの方へと流れてくる。トイプードルの首が当たった糸は血が滴り落ちていた。
「クソが・最初っから捕まえる気なんてさらさらねぇ・・殺す気満々じゃねぇか・・・」
「オエェッ!ゴホッボァァ!」
男性とトイプードルが走ってきた森の奥を睨み付けるが、微かに風が吹いており、これまた沢山の糸が張り巡っている。
(誰も追ってくる様子がねぇ。さっきだって聞こえてきた足音はこの男とトイプードルだけだった。コイツらはいったい誰に追いかけられてたんだ・・・あ?)
すると血が滴り落ちている糸がスルスルと、何も無かったかのように木の中に消えていった。
(なんで・・消えやがった・時間経過か?なら周りにある糸の方が先に消えるはずだ。第一急に糸が出てくるのがおかしいだろうが・・・遠隔操作か、それとも・・・」
サシミは血の海に右足を突っ込んだ。まだほんのり温かい血が肉球を刺激する。すると、
「・・・なるほどな」
木から消えたはずの糸がまた出てくると、反対にある木に張り付いた。先程より低い位置。血の付着していない新品の綺麗な糸がサシミの首元すれすれに現れた。少し離れ、糸が消えたのを確認し、
『怪物化 右拳』
右拳を怪物化すると巻いていた包帯がはち切れる。そしてその手で思いっきり血の海をぶん殴った。その衝撃で血は雨のようにサシミの頭に落ちてくると、同時にまたまた糸が反対の木に張り付く。しかし今度はサシミの首元はおろか、誰の首も切断できない木の天辺あたりに現れた。
(これで確信したぜ。自動で糸が出てくるようにここだけ仕掛けを施してやがる。木に目がついてるわけじゃない。体重だ。体重によって人間か動物か異能力ペットか。そして、首の位置が何処かおおよそ決めて、その場所から糸が出る。さっきはあのトイプードルの方が前に出てたからトイプードルの体重が乗ってその首元に糸が出た。俺の体重はトイプードルより軽いからそれより下に。俺の怪物化で殴れば場違いな木の天辺。おいおいマジか)
耳を動かしながらサシミは奥に進んでいった。
「おいただし、吐くのは後だ。今すぐにこっから離れるぞ。テメーの言う通り作戦を立てた方が良さそうだな」
「で、でもザジミ、離れるってどこへ・・」
「奥に進むんだ。この糸の異能力ペット、相当のやり手と見た。遠くからでも能力が発動するタイプかもしんねぇ。ここでじっとしてたら相手のペースになっちまう。いいな!一歩一歩力強く踏みしめて歩きやがれ。じゃねぇとテメーの首が吹っ飛ぶぞ」
未だに吐いている禎は立ち上がると、サシミに言われた通り地面を力強く踏みしめて歩き出した。その足は微かに震えており、顔色が悪くなっている。
「あ、そうだ。警察、警察に連絡「絶対にするんじゃねぇぞ!」え・・何で・・」
携帯を取り出し、110番を押そうとしたがサシミに止められた。
「・・意味ねぇからだ。入口には糸が張り巡ってるんだからよ。もし入れたとしても、相手は殺しを何とも思わないやつらだ。死人が増えるだけだぞ・・というかそれが狙いかもしんねぇ」
「・・・わかった」
携帯をしまいおぼつかない足取りで糸を飛び越える。すると目の前に首が切断された死体とその頭が転がっていた。
「・・・・・助けられなくて・・本当にすみません・・これが終わったら必ず警察を呼んで戻ってきます」
それを見ると自然と禎の目からは涙が出てきた。声を震わせ、手を合わせ、頭を下げると涙を拭いてサシミの背中を追いかける。
「・・クソッ・むしゃくしゃしてきたぜ。一発入れてやる。逃げるなんて馬鹿なことはしねぇぞ!絶対に!」
「サシミ・・・」
「あ?」
サシミが振り向き禎の目を睨み、話しかけるた。怒りで毛が逆立ち、握り拳を作っている。口から出している息も少し荒れていた。
サシミに追いついた禎はその場でしゃがみ込み、目を見つめあう
「必ず、必ず倒せるか・・?」
「何、当たり前のこと聞いてんだよ。もちろんだぜ。俺だぞ?倒せるに決まってんだろ!どんなにボロボロになろうが今まで勝ってきただろうが!相手がどんなに強力な能力を持ってたとしても、最後に立ってるのは俺だ!!」
「・・・・・」
『・・・・ぁ・・』
「・・・・・目の前であんなの見せられて、まだ足は震えているし怖い。でも、許せない。こんな簡単に、遊び感覚で殺して、怒りが湧いてきた。逃げ回って、何もしないで自分の中だけで解決するのはもう嫌だ。お前が勝てるって言うなら・・」
「・・・・・・」
禎は決意を固めたのかサシミに向かって汗だくになっている拳を突き出した。
「僕はサシミを信じる!僕とお前で・・・この山を占領している異能力ペットを倒すぞ・・!」
「・・・・へっ!ノミの心臓だったお前が一丁前にカッコよく言うようになったじゃねぇか。もちろんだぜ」
同じくサシミも拳遠突き出し二つの拳が交わった。その時、
「コボォォォォォォェェ!!」
「ダァァ!!どのタイミングで吐いてんだお前ぇぇぇ!!!」
目が血走るほど、我慢していたのか勢いよく嘔吐した。
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禎が滝を流している同時刻、
「ハァ・ハァ、畜生!ミユッ・・・!」
「自分の飼い主を置いて逃げるのか〜!もっと遊ぼうぜぇ?せっかく楽しくなってきたんだからよ!」
木に引っかかっている糸が逃げ回っている犬の異能力ペットに向かって伸びていく。犬の身体はボロボロで左耳が無くなっており、その後ろから一人の男が焦らず歩いて来る。辺りに張り巡らされている糸がその男が通ると木の中に消えていく。
「ハァ・ハァ・ハァ」
「疲れてんだったらゆっくり休めばいいべや!!」
「ガァ!!!」
犬の左足が鞭のように襲ってきた糸に切断され、その場に倒れた。
「ッーー!!グッヴ!ガァァァァ!!」
「ほら、これで休めるべや!キョキョキョ!!痛いべや?痛いにきまってるべや!これじゃあまるでプラモデルべや!頑張って作るべやー!キョーキョッキョッ〜!!」
「おいヤモリ、痛いだろうが。笑いながら叩くんじゃねぇぞ」
地面に顔を押し付けて痛みに耐えている犬を見下している男の肩には小さなヤモリが立っていた。とても大きな目。裂けたかのような口。不気味な紅い皮膚。男の頰を叩き、狂ったような笑いが周りに響き渡る。
『逃げて!!早く逃げて!わたしがアイツらを足止めするから、パスコーは逃げて!!』
(・・・・逃げるんだ・・・逃げて助けを・・生きてる・きっとミユは生きてる・・・)
「アハっ!片足切られてまだ動くか!切っといてなんだけど、動かない方が絶対にいいべや?そっちの方が数分だけ長生きできるべや?」
「まぁどのみち、殺すけどよ・・」
「早くお前も楽になるべきだべや!お前の飼い主みたいにさぁ!」
「ッ!!」
パスコーは足を引きずり、這いずって逃げていたが、急に動きを止めて男の肩にいるヤモリを信じられない目で見つめた。目線が合うとヤモリがニヤける。
「・・・・嘘だ・・」
「お前を逃したあの女。足止めできるとでも思ったのか、しょんべん漏らしながら体当たりしてきてな?助けてくれって連呼してさぁ!足から順番に切り刻んでやったべや!こりゃあまた傑作でさー!飼い犬であるお前に見せてやりたかったなぁー。ペット想いの優しい飼い主だったべや!」
「・・・・・・黙れ・・・」
地面の土を握りしめ、歯を食いしばりながらその場に立とうとしたが、足を切断された為バランスを保てず、立つことが困難になっていた。
「そうだ!いいこと思いついたべや!今からお前の飼い主のところに戻るべや!最後に飼い主の顔を見ながら死ねれば心残りはないべや?優しいべや!俺って!」
「おいおいヤモリ、顔を見るってお前、顔面までバラバラにしただろうが・」
「あ!そうだったべや!!ごめんなさいべや!お前の飼い主は・・・・・・顔がどこかも分からなくなりましたべやぁ!」
「黙れぇぇぇ!!!ミユを、アイツを侮辱するなぁぁぁぁ!!!!!」
パスコーは勢いよく地面を片足で蹴り上げ口を開け、鋭い牙でヤモリに噛みつこうとした瞬間、
『卍糸』
ヤモリが指を少し動かすと、周りの木々から沢山の糸が飛び出してくる。その糸はパスコーの顔、そして身体全体を原型がわからなくなるまで細かく切り刻んだ。血が飛び散り、肉片が地面に散らばる。
「うわグロ・・」
「・・・・犬ってのは実にわかりやすい生き物べや。逃げろと命令されたから逃げて、飼い主のことを悪く言ったら命令を無視して怒りを爆発させる。まぁ、飼い主に従順なペットがとる当然の行動だべや・・・その粋がった行動に免じて飼い主と同じようにしてやったべや」
「つーかよ、思ってたより弱っちくね?他の異能力ペット」
「俺も思ってたべや。面白いのは確かだけど、一方的すぎて張り合いがないべや。もっとこう、手に汗握る勝負がしたいべや〜!」
ヤモリは男の肩から降りると手足を振り回し駄々をこねる子供のように転がった。すると
「ホホウ、なら少し早いが次のレベルに進むかのぉ?」
「あ!!師!」
優しくヤモリに語りかけてくる年老いた声が聞こえてきた。しかしその声の主の姿は見えない。
「まだ異能力ペットと戦ったことがなかったお前の為に、戦う意欲のない、弱い異能力ペットだけをここに集めたんじゃ。許しておくれヤモリよ」
「全然問題ないべや。それどころか感謝してるぜ!それで、次のレベルってなんべや?」
ヤモリは血の海で大の字に寝たまま、笑っている。
「先程、3匹の異能力ペットが自ら参加してきてのぉ」
「まじべや!?」
「それこそがヤモリ、お前の次のレベルじゃ。自ら参加するという事は自信があるという事。警告し、森の中で何が起こっているか分からないのに入るという事は無謀という事。これでわかるかな?ヤモリ。自信かあり、そして無謀な者は・・・」
「あ〜ん〜あ〜はっ!!強いって事べや!」
「その〜通りじゃ。少なくともさっきまでの異能力ペット達よりは強いじゃろう。声のデカいハリネズミ。着物を着た犬。口の悪い猫。さて、ヤモリは誰を殺したい?」
「そんなの決まってる・・・」
ヤモリは起き上がり、掌から数十本の糸を出すと、近くの太い大木に向けて手を振るう。すると、大木に一本一本の糸が通り抜けるとその場に倒れて輪切りになった。
「全員殺したいべや・・」
「・・・よろしい。そのまま真っ直ぐ歩けばすぐに出会えるじゃろう。誰がいるかはお楽しみじゃ。後の弱い異能力ペットの処理はワシに任せて、お主は楽しんできなさい」
「わかったべや!そうと決まれば、早速向かうべや!バクトゴー!!べや!」
「・・・わかったから引っ張んな」
ヤモリはバクトの肩に飛び乗ると、進行方向に向かってバクトの髪の毛を力一杯引っ張る。ため息をつきながら、バクトは肉片を踏みつけながら歩いて行った。
「最後に、これだけは忘れるな」
「何がべや?」
「相手が驚異的な能力を持っていたとしても、追い詰められたとしても、恐れ慄くな。自信を持てヤモリ。お主の『殺戮糸』は誰であろうと殺すことができるのだから」
「心配しなくてもわかってるべや、師。全員殺して師を優勝させてあげるべや・・」
ヤモリとバクトは月を見つめながら森の中に消えて行った。
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「本当によくできた異能力ペットじゃ・・・この調子で数を減らしなさい、ヤモリよ。木を隠すなら森の中。糸を隠すなら木の中じゃ」
目の前には星々が輝き、月という光が差し込んでいる。暗闇の中に、まるで一つのスポットライトがあるかのようだ。
「誰にも渡さん・・・・・・・・優勝するのは・・・この、ワシじゃ・」
残り・406チーム
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