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俺の飼い主 僕の異能力ペット  作者: 一つの装置
怪物獣道ファング 願いを求める500チーム
56/93

51話 女を知り仮面を知れば百戦殆うからず

遅ぇぇぇ!!


オッス!ヨロシャス!

「サシミ!!!」

「ッ!」

「・・・呪!?」


シフォンがガムを吐き出したと同時に禎と万歳が顔を学校の校門から覗かせた。サシミはその声を聴き、能力を解除した火星ちゃを抱きしめている手を振り上げ、拳を怪物化させる。それを勢いよく地面に振り下ろした。その瞬間、





パァン!!





見上げるほどの高さだった風船ガムが凄い音を立てて破裂した。


「ハァ・ハァ・サシミ・・・」

「あの猫の飼い主・・・危ないから離れた方がいいし。アンタも破裂するよ?ドロドロな血と肉がポンってね?」


破裂したガムは辺りに飛び散り禎達の足元にも落ちてきた。その足元のコンクリートは所々亀裂が走っており、息を切らしながら禎はその場にへたれこんだ。シフォンは三日月のような笑みを浮かべている。それはもう嬉しそうに、


「ヒハッ!諸々直撃だったし。まだ死んでなくても血を大量に出していずれ「死んでねぇって・・・」ッ!」

「・・・・」


破裂したガムの側に二つの影がある。その一つの影がもう一つの影を大きな手で支えていた。それは、


「ハァ・ハァ・ハァ」

「サシミ!!よかった!」

「あ・・火星ちゃんもいる・・・」


サシミと火星ちゃんである。怪物化した手で火星ちゃんの肩を引き寄せていた。


「・・アンタらはまたあーしの確信を無意味にしたしね・・・何なんだしアンタ?その大きな手・・・それがアンタの能力だし?アンタもキモ猫じゃん」

「・・・ぶん殴られテェのか?どの道殴るけどよ!」


サシミの固まっている右半身のガムは破裂したガムの膜が当たって所々デコボコになっており、少ないが血が身体の至る所から垂れていた。その右足にはコンクリートの塊がくっついている。


(あの大きな腕で、固まった足の下のコンクリを殴って無理矢理コンクリごと脱出。左に避けることで飛び散る破裂の膜を固まったガムでガードする。するとキモ猫はアイツに守られるって無傷。あの猫、見た目と言動の割にはかなり器用なことするんだね・・・全く・・)

「サシミ!大丈夫なのか・・」

「・・・・ああ、心配ねぇ。ちょっと動きにくいだけだ。安心してそこで見てな・・・」

「殺!死殺!!」


足の裏にくっついているコンクリートはサシミが勢いよく殴った為とても歪な形をしており、歩けばバランスを確実に崩す。


「あーあ!!」


その声はこの一体全土に広がった。シフォンは耳をピクピク震わせ、全身の毛が逆立ち、自分の確信していた勝利を邪魔され怒り奮闘している。


「ッ!!」

「呪?」

「・・・・・」

「全くふざけんなし・・・!あーしは言った筈だし・・あーしが嫌いなのは確信していた事が無意味に終わる事だって・・・この世に無意味な事は何一つないって・・・なのにアンタらは逆らってあーしの行動を無意味なものにしたし・・無理矢理に無意味を作って・・・嫌いって言ってんのに!無いって言ってるのに・・・!無意味はあーしが一番嫌っているのに・・・・・!!何なんだし・・さっき死ねばあーしは満足して死ねたんだし。さぁ殺すし・・・飼い主も揃った事だし、全員ぶっ殺すし!!」


乱暴にポケットを弄ると、二つのガムをこれまた乱暴に取り出した。その勢いでポケットに入っていたその他のたくさんのガムが地面に散らばる。


「ちょっとシフォン!そのガムそれなりの値段するんだから落とすなって」

「後で全部拾うし!キモ猫2。何が心配ねぇだし。強がって、アンタが限界なのあーしはわかってるんだし。固まったガムもそんなにくっ付いている。片足には重いコンクリート。傷ついた身体。アンタが死ぬ事は何一つ変わってないんだし。延命しただけ」

「ハァ・ハァ・誰が・キモ猫2だ・・コイツと一緒にするんじゃねよ・・・」

「殺?」


手に握りしめた二つのガムを口に放り込み噛み潰しながら、片手をサシミに向けて伸ばした。口を上下させながら手の隙間からサシミを睨みつけている。


「ガチャッ!グチャ!グチャッ!アンタを固まるガムで拘束したのは簡潔に確実に仕留めるためだし。別に拘束しなくても今のアンタだったら、ガム操ってるだけで勝てるし。これは油断じゃないし。確信なんだし!」

「サシミッ!その足についたコンクリート壊さないの?サシミの怪物化でドカンと!」

「・・・・いや、壊さない・・」

「え・・・なんで・・・・・・ッ!」


サシミの目は戦うことを楽しみにしている時の目であった。禎はそれを一瞬で理解した。何か考えがあるということを。


(性根が腐ってる悪い顔だ。サシミを信じるしかない・・・)

「さぁ!!来やがれ!ガムギャル猫!俺らが死ぬか!お前らが気絶するか!決めようじゃねぇか!」

「どこからそんな自信が出てくるかわからないけど、面白いし!ブチャ!ブチャ!ブチャ!ブチャ!ブチャ殺す!」





最強の風船ガム(チューイングガム)






掌から紫と橙色の混ざったガムがゆっくりと、口から出す風船ガムのように、大きさが露わになった。その大きさはサシミの何倍もある大きさである。先程のガムよりも遅いが全くぶれること無くサシミの方へ進行していた。


「何・・あの大きいの・・・」

「グチャッ!!グチャッ!グチャッ!グチャッ!!!噛めば噛むほど!大きく!」

「・・・・・・・」

「殺!呪〜殺・・・・」


風船ガムはシフォンが口の中でガムを噛むたびどんどん面積が広く、大きくなっていく。


「ハァ・ハァ・・ハァ・グッ!」

「呪・呪〜」


サシミの身体から血が噴き出る。これには火星ちゃんも心配の眼差しをサシミに向けていた。


「おい・・・マーズ。俺の後ろに立て。勝てるぞ・・」

「呪?」

「グチャ?何しようとしてるし・・」


火星ちゃんは不思議そうな顔をしながらサシミの後ろに立った。


「よーし、マーズ、














殴らせろ」

「へ?」

「は?」

「・・・・・呪?呪?呪?」


サシミは風船に背中を向けると火星ちゃんに向き直る。その拳は火星ちゃんの顔を指していた。


「ガムギャル猫、そんでもってお前も潰す・・」

「・・・・なるへそ・・・」

「ッ!サシミ!そんな賭けみたいな事!」

「呪?」


火星ちゃん以外の全員が何かを察し、サシミは口角を上げる。風船ガムはすぐそこまで迫っていていた。


「追い詰められてんだよ・・賭けでもしねぇと、あのガムギャル猫には勝てねぇ!勝つための賭けだ・・勝つための勝負だ!おい!マーズ!能力だ。能力を使え!!アイツになりやがれぇ!」

「やりたかったらやればいいし。キモ猫があーしになったところで、あーしは気絶してでもアンタを必ず道連れにするし!」

「・・・・うるせぇぞ・・・・・早くしろ!マーズ!」

「呪ッ!!殺殺・・・・・・・・」


言われた通りに火星ちゃんは能力を発動させ、仮面の中の目の光がなくなり、手は力が抜けてだらんとたれている。


「意地でももっとガムを近づけて、あんたを・・・・・・・・・」

「・・・・・」

「・・あ?キモ猫は能力を今、発動してるだよね・・・?」

『・・・・・』


シフォンが喋っても火星ちゃんは口を全く動かさない。火星ちゃんはシフォンになっていなかった。火星ちゃんの能力は、ランダムな近くにいる異能力ペットになり、言葉と感覚。身体の痛みを共感する能力。ランダムなのだ。その火星ちゃんが共感した異能力ペットは、


「クソが・・」












『クソが・・」

「ッ!!」『ッ・・』

「あ?なんだし・・・・・ヒハッ♪」

「そんな・・よりによって、サシミに・・・」


サシミになってしまっていた。サシミと痛みを共感している。これにはシフォンも驚きを隠しきれなかったが理解するのにそう時間はかからなかった。


「・・・イヒ♪賭けってそういうこと・・もしかしてもしかすると、キモ猫の能力。ランダムだし?ランダムな異能力ペットになるし?だからアンタになってるし?よりにもよってアンタに!!ならキモ猫2!アンタはもう負け確だし!!イヒヒ♪」


風船ガムがさっきよりも素早くサシミに近づく。


「そんな身体で逃げるのは不可能!飼い主が担ぐ?飼い主がアンタらに近づくより先に破裂するし。そこにいるもう一匹のキモ猫を置いていけばまだわかんないけど、今のキモ猫はアンタ!これまた破裂するし!アンタだけがね!あーしは助かる!破裂!破裂!!破裂!!!」

『「ハァ・ハァ・ハァ」』

「サシミ!!逃げるんだ!まだ間に合うかもしれない!」

「間に合わないし!!アンタはもう死から逃れられない!賭けも精神もあーしが上だったし!!」

『「ハァ・ハァ・グッ!!」』

「サシミ!何してるんだ!!」


サシミは身体中から血をダラダラ垂らしながら火星ちゃんに左拳を構える姿勢をやめようとしない。足がふらついておりもう限界寸劇だった。


「勝った!!勝った!!アンタの負け!!!勝った!!勝った!!」

『「お前・・・無意味な事は無いって言ってたよな・・・」』

「あ?」


虚な目で悪魔のような笑みをサシミは火星ちゃんに向けていた。


「・・サシミ・?」

『「いい考えじゃねぇか。その考えが本当ならよ、俺のこの行いも無意味じゃねぇってわけだ・・」』

「何がいいたいし?もう死ぬし!黙って死ぬし!アンタの小細工もここまでだし!」

『「無意味じゃなかった・・・賭けてよかった。最後に必要なのはよ・・それを行動に移す事。俺にはそれができる。お前に勝つためならな。だからよ・・」』


サシミは拳を怪物化させると更にその腕を引く。


「俺たちの」『俺たちの』















『「勝ちだ!!」』


サシミはその大きな拳で火星ちゃんの腹を思いっきりぶん殴った。なんの迷いもなくぶん殴った。


『「ゴバァッ!!」』

「サシミィィ!?」

「火星ちゃん!」


火星ちゃんは殴られた衝撃でぶっ飛び、見事、万歳にキャッチされる。そしてサシミは感覚と痛みを共感している火星ちゃんと同じように空中に投げ出された。口から血を吐きながら。


『「グォォォァァ!!」』

「は?は?は?は?は?はぁぁ?」


クルクル回りながらあの大きな風船ガムの頭上を通り越し、シフォンの真上でその体勢を戻した。サシミは空中に向け叫び、シフォンは目を見開いて大きく口をあんぐり開けていた。


(なんで・・・さっきまでボロ雑巾みたいになってた猫が・・あーしの真上にいるんだし・・・自分で自分を殴ってチャンスを作った・・・なんであーしが・・逆に追い詰められてるんだし・・・あの猫は不可能を可能に変えた・・これじゃあ・・これじゃあ!!あーしだけが負ける・・!そんなの・・)

「ペェェェッ!!ペッ!ペッ!」

「ちょっ!シフォン!」

「グオッ!!」「・・・すごい・」

「・・・・・・呪?」


焦りながらシフォンは口に入れていたガムを吐き出すとサシミ達に近づいていたガムが先程とは比べものにならない勢いで破裂した。

地面に、壁に、木に、至る所に飛び散り、至る所が破裂し、火星ちゃんが吹っ飛ぶ前までいたところも地面が破裂して亀裂が走っていた。音も凄まじく、禎が耳を塞いでいてもしっかりと聞こえている。それと同時に火星ちゃんの能力も解除された。


「駄目なんだし!駄目なんだし!」

「シフォン?どうすんのよ!」

(ブドウ味じゃ、決定打にかける・・・仕方なし!)「ヒカリは離れてろし!!」

「グァァァァァ!!」


サシミはコンクリートの付いた足を伸ばし力を全てその足に預けた。その足を中心に素早く、くるくる回りながら、シフォンに向けて落下していく。それを確認したシフォンはポケットを弄り、橙色のガムを取り出し口に放り込んだ。


「クチャックチャ!クチャ!クチャッ!!!そんなの!!クチャクチャクチャッ駄目だしぃぃぃ!!!」

「ガムギャル猫ぉぉぉ!!!」

「キモ猫ぉぉぉぉ!!」


回転しながら落下してくるサシミを見上げながら額から綺麗な橙色のガムが飛び出てきた。するとそのガムは火星ちゃんが突っ込んで来た時と同じようにその場に留まりシフォンの防御壁となる。


『逆転必殺・・・・』

「グチャクチャッ!クチャックチャックチャッ!グチャクチャァァ!クチャァァグチャッ!!」


サシミがシフォンに近づく度、ガムがみるみる大きくなっていく。それでもサシミは勢いを緩めない。そしてついに、


『猫落としぃぃぃぃ!!!』

「ガァッ・・・・!!」


足の踵が、風船ガムに当たるとそのまま深く、シフォンの脳天まで減り込み、防御壁越しに頭へコンクリートが直撃した。サシミはそのままシフォンの頭を蹴り上げると風船ガムの弾力で、跳ね返って地面へ着地する。すると足にくっ付いていたコンクリートが着地した衝撃で粉々に砕け散り、口に入れていたガムは勢いで吐き出され、シフォンを守っていたガムの壁は割れた。


「シフォン!!シフォン!」

「ガァ・・!アァ・・・頭ガァ・・」

「割れてるぜ・・・ガムで威力を軽減させてくれたおかげで、コンクリがいい感じにお前を殺さずに済んだ・・・・」

「だから・・・アンタ・・コンクリ・・を・・・」


サシミは自分の足下にある、先程投げつけた枝を手で拾い上げた。すると血が出ている頭を押さえながらシフォンはフラフラとサシミに近づいてくる。


「病院で手当てしてもらえよ。じゃねぇとマジで死ぬぞ・・・」

「アッ・・・ニヒ♪・・・ガァッ・・ガッ!アンタは・・・」

「・・・・・」


頭から垂れてくる血を舐めながらシフォンはサシミを指差す。


「アンタは・・死ぬね・・・いずれ・ガッ!死ぬし・・・あーしが・・手を下さなくても・・アンタみたいな・・・甘っちょろい・・・・奴・『あの方』・・・が・・・・・・・・・・」

「シフォガァッ・・・!!あ・あ・・・・・・・・」


そのままシフォンは意識を失いうつ伏せで倒れた。それと同時にヒカリも頭から血を出し、白目を向けながら気絶した。


「・・・・・・」

「サシミッ!凄い出血じゃないか・止めないと!!」

「呪!!殺、呪呪殺呪殺〜!!!」

「うるせぇ・・ガンガンやかましいぞ・・・こっちもぶっ倒れそうなんだよ・・ベタベタで気持ち悪ぃし。早いとこ・・風呂に入れやがれ・・・」

「でも、この人達は・・・」


禎は半身がガムで固まったサシミを抱き上げると気絶して元の猫に戻ってるシフォンと白目をむいているヒカリを心配そうに見ていた。


「僕が救急車、呼んどくよ・・・あのマゼラブート星人もよーく見ておきたいし・・他の人に見つかって大ごとになる前にね。火星ちゃんも一緒にいてくれる?」

「呪!呪!呪!」

「あ、ありがとうございます!!」

「がぁ!揺らすんじゃねぇ!!」


火星ちゃんが首を大きく上下に振ると、それと同じくらい禎は頭を何度も下げる。それによって抱きしめられているサシミは気持ち悪さが更に倍増した。


「それじゃサシミ、行こう!」

「・・・・・・・」


今にも瞑りそうな目で、サシミは頭から出ている血が少し固まっているシフォンを見つめる。


「・・・・・・・・・」











《あーしはもうこっから動かなくても勝てるし!!というか動かないであげる。さぁ、来なよ》













(無意味が嫌いか・・・・そりゃあ動かねぇよな。無意味に終わるんだから。動いたら、避けたら、自分で無意味を作るんだから・・・だからこそ・・・・・・・)「スゲー奴だよ。お前は」

「ん?どうしたのサシミ?」

「何でもねぇ!今のお前は高級車だ!高級車は喋らねぇし、揺れやしねぇ!そんでもって速ぇ!遅ぇぞ!偽物かお前!」

「そもそも車じゃないし!?わかったよ・・出来るだけ頑張る・・・」


禎は慎重に我が家へと走って行った。







残り・422チーム







ありがとうございました!


またお願いします!

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