50話 猫が猫を背負って来る
久しぶりです!
よろしくお願いします!
「あーしの能力はね。スイッチがいるの」
「・・・スイッチだ?」
「そう。能力を発動させるスイッチがいるんだし。それは・・・・」
シフォンは笑みを浮かべながら自分の長い舌をサシミに見せた。
「ほーら、これだし。あーしの舌にこびりついているこれが必要なんだし」
「・・・・・・ガム・・」
そのザラザラとした舌にはピンクのガムがビッシッリと張り付いている。サシミがそれを見たのを確認すると舌を戻す。
「めんどい事に、ガムを口に入れてないと風船ガムを生み出す事ができないし。そしてアンタはきっと疑問に思った筈だし。いちいちガムを吐くことを。色が変わることをね。そこ、あーしが優しく簡単に教えてあげるし」
「・・・・・・・・・」
「あーしら生物は無意味な事なんて絶対にしないし。喋る事も息する事も心臓を動かす事も、食べる事も眠る事も用を足す事も、悪口を言う事も殴るのも営みをする事も呪う事も、殺す事だって、そこには小さくても何かの理由があるの。アンタらにとっては無意味な行動も全てあーしにとっては意味があることだし」
「・・・・・・」
シフォンは次にポケットから三種類のガムを取り出すと口に含んでいる風船ガムを膨らませた。
「あーしの能力は(身体から風船ガムを生み出す能力)これだけだったら、ただの雑魚能力。だけどそれだけじゃなかったし。この生み出した風船ガムには食べたガムの味によって別々の力があった。あーしが確認しているだけで三種類。ブドウ味は破裂する風船ガムを、オレンジ味は割れないガムを、イチゴ味はベタベタのガム。そのガムを噛んでいるから生み出しすガムはその味の色になるんだし」
(コイツが口からガムを吐き出した時にガムが割れたのはこれが理由か・・・・)
「アンタがベタベタになったから、作戦はこれで終了。あとはアンタが死ねば、そこのキモ猫は尻尾を巻いて逃げるで筈だし!ペッ!!」
口に含んでいたイチゴ味のガムを吐くと、ポケットからガムを目で確認して乱暴に取り出し、口に入れ、鋭い牙で噛んだ。何度も何度も
「クチャァ!クチャァァ!クチャックチャッ!クチャ!クチャ!!クチャ!!クチャァ!クチャックチャァ!クチャッ!クチャァ!クチャァァァ!!」
(集中しろ・・今食べたガムの味は、手に隠れて見えなかったが、アイツが知っているは3種類だと言っていた。つまり出す風船ガムは今まで食らったガムのどれかだ。判断して行動するんだ!)
「クチャァ!クチャックチャックチャッ。な〜にが!出るかな〜♪クチャ!」
シフォンは大きく手を広げる。次の瞬間、両手首をくっつけてサシミに向け突き出すと、その両掌から一つの大きな風船ガムを生み出した。サシミが最も気にかけているその風船ガムの色は、
(ッ!!!薄紫!!ブドウ味!!破裂・・・・破裂するガム!!勝負をかけてきやがった。あの大きさがそれを物語っている!)
「ご覧の通りお待ちかねのあーしの最強のガムだし!!!あーしはもうこっから動かなくても勝てるし!!というか動かないであげる。さぁ、来なよ」
薄紫だった。やはりと言った感じではある。ゆっくりだったが、風船ガムは着実にサシミ達へと向かってきている。シフォンはガムの後ろから舌を出して挑発した。
(遅ぇぞ!こんくらいの速さなら避ければいい!挑発に乗るな・・・間合いを馬鹿みたいに取りながら時間を稼・・・・・げ・・)
「呪?呪?」
動き回ることで禎達がこちらに来るまでなんとか逃げ切ろうとサシミは走り出す為に足を動かそうとした。しかし、
「な・・・なんだ・・・・これ・・・・ッ!!!!」
「アレェ〜!!どうしたんですか〜!!」
違和感だった。前に出た筈だった。しかし一歩も前にも後ろにも踏み出すことが出来ない。左足は何事もないように動く。片足が前にでればもう片足も前に出る。そんな常識も今のサシミには出来なかったのだ。
(なんで・・・・気づかなかった・・・・このガム・・・
固まってやがる!!!)
右足が動かない。さっきまでサシミの半身にひっついていたベトベトのガムがコンクリートを含めて固まっており、右半身は全く動かない。足上げようとしても完全にガムが、足とコンクリを接着しているようだった。
「あぁ!言い忘れてたし。そのイチゴ味のガムは割れて少し経つと空気に触れて超高速で固まるし!!本当の捨てられてだガムみたいにしつこくアンタの身体の半分を固まらせたし!!!」
(クソが!!呑気にアイツの説明を聞いてた自分に腹が立つ!!右腕はまだ少しばっか動くようだが、だからどうした!!動けない事には変わりない・・どうすりゃいい。このままここに囚われつづけていたら、いずれあのガムが俺を・・・・・・・・・
殺す・・・・)
サシミが言ったように風船ガムのスピードはとても遅く、動くことができれば避ける事は容易である。しかし今のサシミは動くことができず、固まった右足を殴ることしかできなかった。
(ダメだ・・!!!怪物化が使えたとしてもきっとコレはどうにもならねぇだろうな・・・・コレは飴じゃなくてガムだ。ベタベタな部分が少しだけ残って俺の毛に絡みついて固まっている。・・・固まったガムがひっついている足裏はどうにもならねぇ・・・・・)
何度も固まった足を殴ったり、引っ掻いて剥がせるか試したが、ガムは割れも剥がれもしない。
「アンタ馬鹿だし?猫の力じゃあ絶対に無理だし!!あーし言ったよね!ガムが固まった時からアンタの負けは決まっているって!」
「黙ってろ!!俺はまだ生きてるぞ!!勝手に勝ち確するんじゃねぇっ!!こんなクソガム!!今すぐぶっ潰っ・・・・・」
「あ?」
「殺?死殺?」
サシミはグーパンで殴っていた拳を凝視し、その手を開いた。
「・・へっ・へへっ・・・・破裂するんだろ?そこに浮いてる風船ガム・・・」
「・・・そうだけど?」
(さっきから固まったガムから抜け出して逃げ回ることを考えていたが、そこじゃねぇだろ。今最も大事なのはあの破裂ガムに当たって俺が破裂しないことだ)
何かを思いついたのかサシミは開いた左手を握りしめ、不適にニヤリと微笑んだ。全て夢中になって気付かずに握っていた物・・・
「おい!マーズ!!」
「呪・呪?」
「・・・使わせてもらうぞ。お前からの贈り物・・・・」
「殺!?殺死!!」
それは、膨らんだ蕾のついた先端が尖っている枝。火星ちゃんから貰ったその枝を強く握りしめて腕を振りかぶる。
「当たったら割れる。なら、こっちに来る前に割ればいい。その後のことはまた考える!!」
(・・・なるへそ。あの猫が持ってる枝をあーしの風船ガムにぶつけるつもりだね。そうしたらガムは割れ、アイツらは無傷。近くにいるあーしとヒカリが負傷する・・・)
半身が固まっている為大きく振りかぶる事は出来なかったが、風船ガムにぶつけれさえすればブドウ味の風船ガムは破裂する。枝を投げる勢いはそれほど重要ではない。
「オラァァァァァァァァア!!破裂するのはテメェらだぁ!!」
「殺ッ〜!?」
「・・・・・」
サシミは枝を風船ガムにぶん投げた。集中し、落ち着いて。せっかくプレゼントした枝が投げられ、火星ちゃんはその枝に手を伸ばす。勢いは全く無かったが、枝は無事にガムに当たった。
「割れやがれぇぇ!!!」
(考えはよかったし。行動も。でも、答えは目に映ってなかったみたいだしね。だからこそアンタらは
ゴミ以下なんだし・・・)
「あ・・あ・・・?あ!?なんで・・・・なんで・・・!!!
割れない・・・・!」
「さ・・つ・」
しかし風船ガムは割れなかった。枝は当たったと同時に少し減り込むと何事もなかったかのように地面に落ち、風船ガムは進行を続けていた。
「そんな馬鹿な!!割れねぇわけねぇ!ブドウ味のガムは破裂するはずだ!!」
「ひひっひっ!!ひっひひ!馬鹿は一度自分がたどり着いた答えを正解だと思い込んで、それが間違いだとも知らずに、疑いもせず、行動に移すし。その馬鹿な行動は目の前にある本当の答えにさえ気づかない」
「目の前にある・・・答え・・・・・・・・っ!!」
シフォンに言われた通りに着実に近づいてくる風船ガムを見つめる。薄い膜の風船ガムは紫色だったがその色は違和感があった。
「あーしは言ったはずだし。最強のガムだって。破裂するガムが最強だと勘違いした、アンタのミスだし!」
(注意を怠った・・勝てると思った・・全部関係なかった・・・・!)
「確かにあーしの食べたガムはブドウ味だし。だけど、それだけじゃないし!」
浮遊している風船ガムは薄紫色だったがそのガムには更に薄い橙色が混ざっていた。しっかり見ないと気づかない程に薄く、匂いもブドウの匂いしかしない。
「オレンジ味のガム。両方食べれば両方の能力が混ざり合うんだし!!決して割れない、破裂する風船ガムの完成だし!」
「・・・・矛盾してんじゃねぇか・・・」
シフォンが口の中を見せるとそこには紫色のブドウ味のガムも橙色のオレンジ味のガムもなく、混ざり合って薄茶色になったガムがあった。
「矛盾?ひっひひ!!矛盾なんてしてないし。このままじゃ、アンタに当たっても減り込むだけで破裂しな〜い。だけどね!!どんなガムだろうとあーしが口から吐き出せば、割れるんだし!やっぱりガムはあーしのスイッチだし!」
(つまり現状・・まだ俺は絶対絶命って訳か・・・クソっ!!!)
サシミはまた、固まったガムを殴り始めた。焦りの表情を浮かべながら。
「クソっ!クソっ!!」
「ひっひっひっ!!!それ!その顔だし!絶望の先に少しの希望が見えたと思ったら更に深い絶望に逆戻り!!その顔が見たかったんだし!!ねぇ!ヒカリ?」
「ええ、最高だね。シフォン?」
(クソが!飼い主も異能力ペットも狂ってやがる!ぜったいに、ぜったいに!!ただしが来るまで時間を稼いで、俺の能力で!!俺の気が済むまで!ぶん殴ってやる!)
「呪!!呪!!!」
「ッ!!」
怒っているのか歯ぎしりを鳴らしていると火星ちゃんが近づいて来きて同じく固まったガムを叩いたりサシミを引っ張ったりしていた。
「クチャ?」
「マーズ・・お前・・・ッ!何してやがる!!さっき言ったよな!俺に近づくなって!離れてやがれ!!」
「呪!死!殺!殺死死、呪死殺。死死殺死殺!!」
「あ!?何言ってかわかんねぇつってんだろ!!」
火星ちゃん首をブンブン振り、引っ張るのを全くやめない。サシミは固まっていない左手を使って無理やり引き剥がそうとすると、
「呪・・・・・・・・・・・・・・・」
「あ?どうした・お前・・っ!!能力半径内なのか!お前!」
「クチャックチャックチャックチャックチャッ・・・・・?」
火星ちゃんの目の光が無くなった。迫って来る風船ガムはどんどん大きくなっていく。
『チャッチャッチャッチャッチャッ・・・・・・』
(ッ!誰になりやがった・・)
サシミを掴んでいた手の力がなくなり、両手をだらりと下げて火星ちゃんは能力を発動していた。口はマスクに隠れて見えないが確実に動かして微かに音がしている。
「クチャックチャックチャックチャックチャッ?(何してんだし・・あのキモ猫・・・・)」
『チャッチャッチャッチャッチャ・」
(ッ!!間違いねぇ!マーズは口にガムを入れてないから音が違うんだ!!同じタイミングで口を動かしてる奴が目の前にいやがる!!くらえっ!!)
サシミは左手の甲で火星ちゃんの腹を倒れないように軽く殴った。すると、
「ゴホオッ!!」
『ゴホオッ・・』
「・・・・・ビンゴ・・」
シフォンが声を出し、腹を抑えた。それを確認したサシミは繰り返し火星ちゃんの腹を殴る。
「ゴホッ!なん・だし・・それ!!そこのキモ猫の能力か!!ゴホッ!そんなわるあがきしたところで!ゴホッ!アンタらは死ぬんだし!!グハッ!真似した奴と身体を共有させてゴホッ!」
『ゴホッ・なん・だし・・それ・・そこのキモ猫の能力か・・ゴホッ・そんなわるあがきしたところで・ゴホッ・アンタらは死ぬんだし・・グハッ・真似した奴と身体を共有させてゴホッ・』
「ちょっと違うなっ!!」
「ボフッ!!」
『ボフッ・・』
こちらに向かってきている風船ガムのスピードがさらに遅くなり、軌道がブレ始めていた。
(スピードが格段に落ちて、風船ガムが酔っ払ったおっさんみたいになってやがる・・・・風船ガムを操ってはいるが集中できていないんだ。腹を何回も殴って吐き出させるしかねぇ!)
「ゴフッ!!ガムを吐き出させようとしてるわゴハッ!笑わせんなし!そんな甘っちょろい猫の裏拳でゴフッ!吐き出す訳ないし!いざとなればゴフッ!!ガムを広げて口のどっかにくっつければいいんだし!」
『ゴフッ!!ガムを吐き出させようとしてるわゴハッ・笑わせんなし・そんな甘っちょろい猫の裏拳でゴフッ・吐き出す訳ないし・いざとなればゴフッ・・ガムを広げて口のどっかにくっつければいいんだし・』
何度も殴り殴られ、三匹共息が上がっていたがサシミは殴るのをやめず、シフォンは苦しみながらも口からガムを吐き出さず、風船ガムの進行をやめない。
「ハァ・ハァ・ゴフッ!ハァ・ハァ・ハァ・コボッ!」
『ハァ・ハァ・ゴフッ・ハァ・ハァ・ハァ・コボッ・』
「ハァ・ハァ・早く吐き出すか、倒れるかしやがれ!!見るからに我慢してんだろ!腹パンしまくってんだぞ。立ってるのもキツいはず!それにもうわかってる筈だ!!側にいるコイツが破裂したら!お前も!」
「ゴホッ!!ハァ・ハァ・きっとアンタには・わからないし。願いを叶えるとか、そんな安っぽい理由であーしはアンタらを殺そうとしてないし。この力は、今立ってるのは、『あの方』のおかげだし」
「ゴホッ・・ハァ・ハァ・きっとアンタには・わからないし。願いを叶えるとか、そんな安っぽい理由であーしはアンタらを殺そうとしてないし。この力は、今立ってるのは、『あの方』のおかげだし』
「あの方だ?お前の後ろに他の異能力ペットバトルの参加者がいんのか!答えろっ!」
「ゴホッ!道を示してくれた。あーしは『あの方』の兵士で十分だし!このどうしようもない腐った世の中を変えるチカラを『あの方』は持ってる!だから、あーしがここで死んだとしても意志は受け継がれるゴホッ!!」
『ゴホッ・道を示してくれた。あーしは『あの方』の兵士で十分だし・このどうしようもない腐った世の中を変えるチカラを『あの方』は持ってる・だから、あーしがここで死んだとしても意志は受け継がれるゴホッ・・』
シフォンからはヨダレが垂れており、目は血走っていた。頑なにその場からも動かず、腹を抑えながら笑っている。異様な光景であった。
「死んでもいい。アンタらを道連れにして死んでもいいんだし!ぶっ倒れてもいいんだし!つまりわかる?アンタは、あーしらは死ぬんだよ!このガムでアンタの全身はグチョグチョになるんだし!そうすれば、ゴブッ!!この痛みも!『あの方』の為の痛みになるし!!」
『死んでもいい。アンタらを道連れにして死んでもいいんだし・ぶっ倒れてもいいんだし・つまりわかる・アンタは、あーしらは死ぬんだよ・このガムでアンタの全身はグチョグチョになるんだし・そうすれば、ゴブッ・・この痛みも・『あの方』の為の痛みになるし・・』
「ッ!」
風船ガムのスピードが速くなり、一直線にサシミへと向かっていく。口の中のガムを苦しみながらも何回も噛みしめる。するとガムはみるみる大きく膨れ上がった。
「クチャッ・・・クチャッ・・噛めば噛むほど味は広がるんだし・・・・クチャッ・・クチャッ・・大きくなるんだし!!」
『チャッ・・・チャッ・・噛めば噛むほど味は広がるんだし・・・・チャッ・・チャッ・・大きくなるんだし・・』
「ハァ・ハァ・ハァ」
大きくなった風船ガムはサシミの目の前まで迫っていた。ガムが割れれば当たる。その範囲に入ってしまっているのだ。サシミは火星ちゃんの肩を掴んで引き寄せた。
「クチャ・クチャ・さぁ、二匹揃って身体と脳みそに別れの挨拶は言ったし?あーしはもう言ったし・・」
「チャ・チャ・さぁ、二匹揃って身体と脳みそに別れの挨拶は言ったし・あーしはもう言ったし・・』
「死なねぇ・・・」
「あ?」『あ・』
サシミは火星ちゃをさらに強く抱きしめる。
「死なねぇぞ・・俺たちは・・・」
「いや、死ぬよ。あーしらはここで死ぬんだし・・ヒカリも、キモ猫の飼い主も」
「いや、死ぬよ。あーしらはここで死ぬんだし・・ヒカリも、キモ猫の飼い主も』
シフォンは口をモゴモゴさせて口の中のガムを綺麗に丁寧に一つにまとめる。そして、
「ペッ!」『ペッ・』
吐き出した。
残り424チーム
ありがとうございました!!
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