46話 諦めは心の植物
また久しぶりです!!
宜しくです!!
「理解はした。だけどたかひろ、かなり難しい事言ってるよ。それは普通に倒すよりもずっと。たかひろ!サックくんとゆりかちゃんを!」
「うお!だからこそ君に頼んでるんだ!私はもう動けない、綾くん達も敗退寸前だ。だからお願いしているんだよ!」
「善処するよ」
あんころはサックをすくい上げ由里香を抱き抱えてたかひろに向けて投げた。
「吾輩はNo.3の異能力ペット、名はあんころ。君の名前を教えほしい」
「・・・・・・名は捨てた。しかしこれだけは確かである。我は汝達の味方ではない。敵。敵なのだ。今から我は汝を天へ。わかりやすく言うと、殺すという事だ。我は天からの代行者である」
「捨て犬か。なら吾輩は、それを全力で止めよう。君が、殺そうとしている命を使ってね。名無しの権兵衛くん」
あんころの周りには風が靡き、あんころの毛は逆立っている。周りの者たちはその雰囲気に息を飲んだ。
「・・・名無しの権兵衛・・だと?我のことか?我に名をつけたのか!それは我に対しての侮辱か!汝は!万死に値する!!」
「また怒ったか?権兵衛くん・・・」
「ギイャ!!!!!!!!!」
権兵衛が怒りがこもった声で叫ぶと周りで項垂れていた植物達が一気にあんころを見下した。
「汝には!あの雑魚蛇とクソ女の倍の何十倍の!何百倍の!!何千倍の!!!何万倍の!!!!それ以上の!!!!!植物を汝に!ぶつける!!」
「・・・・・・・」
権兵衛が片手をあげると同時にあんころに向け襲いかかってきた。それは先程サックを襲った植物の勢いではなく、植物がまるで生きているかのように、自分があんころを殺す。そのことしか考えていない。そんな勢いである。しかしあんころは顔色一つ変えず凛とした態度崩さなかった。
『植物の大反逆!!!!』
聞いたこともないような雑音があんころを滅多打ちにする。
「あんころ!!!」
その攻撃は本当にサックを叩きつけた時とは違い何倍も長く叩きつけていた。ただの人間ではひとたまりもない。
「・・・・・・・・何故、所有者は死んでいない。ルールでは同時に死ぬはずだ!」
「吾輩が死んでないからだよ」
「なっ!!!」
あんころに倒れたままのツタの植物達はモゾモゾと動くと一瞬で切り刻まれたようにバラバラになって四方八方に飛んでいった。その残骸が権兵衛や隆弘のところにまで飛んできている。植物があったその中心から無傷のあんころが顔を出した。
「何故!何故死んでいない!たかが猫一匹、天に向かうはずだ!何故向かっていない!それどころか!傷一つ・・ない・・!!」
「たかが猫・・だって?吾輩達は能力者だぞ。その常識は捨てることだ。それに真正面から向かってくる異能力ペットに吾輩は全く負ける気がしない!タネを明かした能力にはね」
「愚者が・・・黙れ・・・・天に・刃向かったものめ・・愚者め・・愚者め!愚者め!!!汝だけは汝だけは!!」
「・・・・・」
「いや!汝だけではない!ここにいる汝達全員を天に!地へ!!堕ちるところに!贈られるところに帰化せよ!!!」
「・・君、言っていることが無茶苦茶だよ」
「ダマァレ!!!!!」
権兵衛は右腕をツタに変えると鞭のようにあんころに向け何度も振り、叩きつけている。しかしあんころは手を器用に素早くツタに当てると逆にツタは弾き飛ばされている。自身の気で攻撃を無力化にしているのだ。
「我は強い!我の能力は強いのだ!何故!何故なのだ!」
(・・・・サシミくんと同じような能力。身体の一部しか植物に変えられないのか)
植物を払い除けると両掌を真後ろに向け、あんころは自身の身体を低くする。
『波動バースト!!!』
(ッ!!!スピードが違う!!!一瞬で我の目の前に!)
あんころは掌、そして足から気を放ち一気に権兵衛の目の前まで距離を縮めると今度は脇腹に掌を添える。
「ッ!!」
「遅い!!」
権兵衛はあんころの手を叩き落とそうと右拳を荊棘に変えるが脇腹から青い光が漏れ青い光と共に吹き飛んでいく。
「汚れた!魂めぇ!!」
「・・・・・」
吹き飛んでいる最中権兵衛は体制を元に戻す。しかし波動の勢いは止まらない。未だに吹き飛んでいた。しかし権兵衛はあんころに身体を向けると背中から枝分かれしたたくさんの植物で襲ってくる。
『波動バースト!』
(何!?向かってくる・・だと・・・・愚者め・・・退く・・我ならあそこは退く。それなのに・汝は向かってくるというのか!!!汝が有利だから押し通そうとしているのか!?)
植物を颯爽と避け、破壊してあんころは権兵衛に向かって行く。避けられた植物達は足を狙っているが掌そして足から波動を出している為近づくことができなかった。その『波動バースト』の速さは未だに吹き飛んでいる権兵衛に追いつくほどだ。
「追いついたよ・・」
「ガフゥッ!!!」
あんころは権兵衛の懐に入ると周りの植物を払いのけ、掌で地面へと叩きつける。
(勝てない・・勝てる気がしない・・・・この者は圧倒的勝利を確信している・・・次元が違う・・・・強さの次元が違う・・今我がやっていることはただの自殺行為・高速道路の車線に入ったり、見たことのない薬品を説明も無く飲むようなものだ・・・我は強い・・・そうだ、この者は強いのではない。強すぎるのだ)
あんころは一瞬で倒れ込んでいる権兵衛の目の前に立つと、
「終わりだ」
「・・・・・・・・・・」
「すごい・・・あんな短時間で・・・あの犬を」
見せびらかすかのように権兵衛に向け左の掌を見せる。しかし権兵衛は表情一つ変えず、離れているところで座っている、隆弘達を凝視していた。すると
「何!!!!」
(犬の!ツタ!?)
「まだ、残っている・・・残っていた。残党が残っていた!!!汝を天に贈らずとも先にあの者たちを天へ!!」
「・・・・」
隆弘達のすぐ真横の地面から権兵衛が生み出したツタが飛び出してくると隆弘達に襲いかかった。しかし次の瞬間
『波動ガン』
「ッ!!!!」
「・・・」
「・・・ツタが・・動かなく・」
あんころは右手の指先からまるで鉄砲の弾のように波動をツタに向け放つと小さな穴が空き、その動きを止めた。
「訂正しよう・・・これで終わりだ」
「・・・確かに汝の勝ちは決まった。だが余裕では無いみたいだな。先程のツタ、何故我を攻撃した時のように掌全体で壊さなかった。どうして肩で息をしている。汝の能力はかなりの体力を消費するのか?周りに張っていた膜もどんどんと薄くなっていった。汝の所有者のように・・」
「・・・それがなんだというんだ。吾輩の体力なんて関係ない。現在進行形で吾輩は悠長に喋っているんだ。権兵衛くん、今すぐ吾輩と一緒に能力半径外へ出るんだ。君のような能力者は危ない」
「・・・・・・・・」
「こんな事は言いたくないししたくないけど、能力半径外から出てくれれば痛い事はしない。楽に気絶させてあげるよ。もし出てくれなければ!」
あんころは掌を更に近づける。すると権兵衛はあんころの手首を強く握り自身の額に掌を密着させた。
「!!?」
「やってくれ。汝の力で、あまり残っていないその体力で、あの指鉄砲一発で仕留められるのか?それが疑問であり大事なのだ」
「君は能力半径外に出る気がないのか・・・」
「我の目的は我を捨て去った、所有者を天に贈ること。だからこそその指鉄砲を我の脳に撃ち込めば天に、我の所有者も共に天へ!目標とは違うが所有者が天に贈られればそれでいい!撃て。さぁ!!」
「・・・・吾輩の目的は殺すことじゃない。能力半径外で君を気絶させることだ。だが今の君の一言でそれは不可能になった。たかひろと君の元飼い主には申し訳ないが、出来るだけ痛みが残らないようにここで気絶させる。そしたら一緒に暮らそう。捨て犬なんだろう?たかひろもきっと歓迎してくれるよ」
「・・・・・・・・・・」
あんころは権兵衛の手を払い除けると、優しくそれは優しく権兵衛の心臓に手を置いた。すると権兵衛は、段々と息を荒くすると
「虚無!笑止!!ふざけるな!!!汝達と暮らしたところでぇ!!!!我の憎しみは!恨みは!消えないだろう!!消えないどころかその闇はどんどんどんどん!!!!加速していくだろう!!気絶しても汝達を天に贈る!!殺す!殺せ!殺す!!殺せ!殺す!殺せ!!殺す!殺せ!!!殺す!!殺せ!!殺す!殺せ!殺す!!殺せ!殺す!!殺せ!!!殺す!!殺せ!殺す!!殺せ!!殺す!殺せ!殺す!!殺せ!!!殺す!殺せ!殺す!!殺せ!!殺す!殺せ!殺す!!殺せ!殺す!!殺せ!殺す!殺せ!!殺す!殺せ!!!」
「・・・・なんなんだ。あの犬は・・」
「あんころさん!!素速くその者を倒すんです!何も考えてはいけません!」
「・・・・わかった!!」
『殺す!!殺せ!』を連呼している権兵衛は全くの別人のようにあんころに向け唾を飛ばしている。駄々っ子のように両手を地面に叩きつけ足をバタつかせている。あんころは力を手に込めて、気を出し衝撃を与え気絶させようとした次の瞬間、
『良いやん!良いやん!生きがいい!レア物や!コイツは光る原石やで!!
「ック!!」
「!!?」
「なんだ!!どこだ!」
何処からか物凄い大きな声がするのと同時に権兵衛の心臓に触れているあんころの手が何かの衝撃で弾き飛ばされた。
(なんだ・・今の一瞬見えた黄色い線は・・黄色い線が吾輩の腕を攻撃した?見えない何かが!この声の主が?)
『世界中の偉い人は何でもかんでも諦めんなっていうやろ?だから偉人になれたし、偉人って呼ばれんねん。いずれ偉人になるワイも言わせてもらうで!諦めんな!!情緒不安定犬さーん!』
「・・・・・・・」
あんころは腕から流れている血を頬で拭き取ると目を凝らして辺りを見渡す。その黄色い線は空中を飛び回っている。そしてあんころは気がついた。この者の正体に
(・・・わかったぞ。黄色い線なんかじゃない。物凄いスピードで辺り一面を飛んでいるんだ。異能力・・ペットだ。腕のこの小さな傷はくちばしがあたったみたいな形。かなり小さい鳥。高速で移動する異能力ペット・・)
『そこで地団駄踏んでた犬さん、レア物やねん。ここはひとつ見逃してやってくれや!アイツ、ここで負けたらもったいないからなぁ!!!」
「ッ!!」
そのスピードは『波動バースト』など比にならない速さだった。その素早い異能力ペットは壁に当たったかのように跳ね返りを繰り返すと権兵衛に一直線で向かってきた。あんころはそれを止めようとその黄色い線を目印に手を伸ばすが
「逃すか!」
『おっそ〜スローモーションやん!そんなんでワイらを止めれるわけないやろ?あとは宜しく頼むでーもう一匹のレア物さん』
気付いた時にはあんころの後ろから声がした。それに焦り権兵衛のいる方向つまり声がした方向に振り向くと
「!!!!いない・・権兵衛くんが・・いない・・」
権兵衛は消えていた。ついさっきまで座っていたのに。更にさっきまでそこら中で閃光していた黄色い線も消えていた。逃げられた。逃げられてしまった。すると
「異能力ペットが連れていった・・・もう一匹のレア物・・・・なんだ・・そ・れ・・」
「あんころ!!」
「どうしたんですか!?」
あんころはフラフラと目を瞑りながら倒れた。たかひろは少し体力が回復したのか、こちらもフラフラしながらサックと共にあんころに近づく。
「あんころさん!気絶したんですか?」
「いや、眠ってるだけだよ。能力を使いすぎたんだ。あんなに気を使ったのは初めてだったからね。そんなことより、速くここから逃げるんだ。作戦会議も話し合いもそのあとだ。さっきの声が言ってただろ。もう一匹のレア物さん宜しくって。なんだか嫌な予感が」
「その嫌な予感、あーしの事?あーしだよね。めんど・・・」
「!!!」「!!」
その声のする方に首を向けると風船ガムを膨らませている女の子と風船ガムを噛んでいる二足歩行の猫がこちらに向かってあるいて来ている。異能力ペットだ。
「レア物の・・・」
「異能力ペット・・・・」
「クチャックチャッ」
残り・427チーム
ありがとうございます!
次回も宜しくお願いします!




