45話 荊棘の花一時
お久しのお久しぶりです!
よろしくお願いします!
「汝も・・・そうか。魂め・・汚れた魂め。汝も参加者というわけか・・・・」
「あたしは別にそこまで汚れてねぇよ。昨日風呂入ったし、服も洗濯したし、爪だって切ったっての。あたしを馬鹿にしてんだったら。あんたのその毛裏表逆にしてやろうか?あ?」
「流石ゆりかさん!かっこいいですね!」
「やめろよぉ〜サック。てれんじゃねぇ〜か〜!」
「・・辛気・・・」
犬の腕は上に掲げながら静止していた。その腕の植物は力を無くしたかのように垂れ下がっている。犬は自身の腕の植物化を解くと由里香を睨みつけているが、由里香本人は照れくさそうに身体をモジモジさせている。
「・・辛気・・・・茶番・・・・・汚れた汝の行いはまさに茶番・・意味などない。我の力の前では・・・天に帰化する時間が長引いただけである」
「あぁ?茶番だあ!?あたしのかっこよさが茶番だと?お前、覚悟はできてんだろうな!」
「綾くん!絶対に倒すんじゃないぞ!その犬くんの飼い主は全くの無関係だ!能力半径外で倒すんだよ!」
「あぁ?式を下げるような事言ってんじゃねぇぞ!・・・関係ねぇ・・・」
由里香は犬を睨み首を回すと、犬に向かって走っていった。右手に力を込めている。しかし、犬は全く動じていない。
「ただ!力を込めてぶん殴るだけだ・」
「ゆりかさん!!決めてください!!!」
由里香は動けない犬の目の前までくると腹めがけてアッパーをかまそうとした。その瞬間。
「・・・・・・・空虚!!」
「クハァ!!」「ゆりかさん!!!!」
「綾くん!」
犬の腹の内側からとても太いツタが飛び出してくると由里香を後ろに押し返しそのツタで由里香を擁壁に押し付け拘束した。ツタは擁壁にめり込んでおり、由里香は壁に背中が思いっきりあたった勢いでむせると、その後一切動かなくなってしまった。サックは由里香のことを心配しているが、犬からは一切目線を外さない。能力が解けてしまうからだ。
「『植物化 筋肉』最初は混迷したが慣れればどうということはない。動くことができなくともこうして汝を拘束することが可能である。腹からツタが出るとは思はないだろう」
「・・・・・・・・・」
「綾くん!綾くん!!!」
「大丈夫です、たかひろさん。わたくしの能力は続いています。焦らなくてもゆりかさんはこんな事で気絶なんてしません。ですよね。ゆりかさん」
サックはまるで由里香に語りかけるようにしっぽを大きく振った。すると、ツタから飛び出している由里香の開いている掌が力強く握り締められた。
「くふ・ふ・ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ!」
「・・・・・」
「綾くん!」
ツタのはびこった、その中から由里香の笑い声がこだました。
「ははははははっ!!!!!あぁ!!!おもしれぇ!!おもしれぇ!!強い!気持ちが伝わってきた!!!当たりだ!コイツは当たりだ!!この前の変態よりよっぽど強ぇ!!!!サック!絶対に目を離すんじゃねぇぞ!!!!!!わかったか!」
「はっ!」
「最の高だぜ!!!身体ん中の細胞という細胞が良い意味で悲鳴をあげてやがる!!今まで生きててよかった!!!」
由里香は自分の右足をぶらぶらと揺らすと、勢いよくツタを蹴り上げる。すると、めり込んでいたツタは由里香から離れ天空に物凄いスピードで投げ出された。ツタが空に舞い上がるとツタと繋がっている、犬も一緒に空高く飛び上がり、サックは目を離さないよう犬のことを必死で追いかけている。
「!!!!!何という馬鹿力。我のツタをこんな・・上空に・・我も一緒に!!」
「強い奴は叩き潰す。あたしの手でぶっ潰す!!避けれない程のスピードで!!!」
「!!!!!!」
空中でも未だに動く事が出来ない犬は能力を解くと、太いツタは腹の中に吸い込まれるかのように消えていく。犬は頭から落下していき、下を見るとバッキーを咥えた由里香が犬の真下でぴったりと止まっている。
「3・・・・2・・・・1・・・」
「綾くん!!ダメだ!」
(っ!!!間に合わっ!!!)
犬が地面まで残り数メートルというところで由里香の頭の場所で重なった。由里香は右拳を強く握ると
『ブン・・・・ナグリィィィ!!!!!』
「!!!!!!!!!!!」
由里香はそのまま犬の顔面がなくなるかのように殴りつけ、奥にあった壁に叩きつけた。
「綾くん!!さっき倒すなって言っただろう!飼い主の人の顔面も今どこかで変形してるんだぞ!!」
「うるせぇ!こっちだってなぁ!力抜いたんだよ!」
「それでこんな威力がでるのはおかしいだろ!」
「さすがはゆりかさん!世界最強!いや!宇宙最強!」
「へへっ!まぁ・・倒したって感触がねぇ。柔らかかった。サック!まだアイツを睨んどけ!」
「はっ!」
壁に寄りかかって倒れている犬はピクピクと痙攣していたが息を荒くしていた。身体中の毛がクローバーに変わっている。
「・・・・・ゴホッ!汚れた魂達め・・・我にはやるべき事が!やるべき事が!」
「・・・・クローバー」
「うるせぇぞお花畑野郎が。気絶してないんだったら好都合だ。強い証拠!さぁ!やろうぜ!能力半径外で倒せって言われたが、それはそれであたしは嬉しいからよ!」
「綾くん!」
「第一、そんな難しいことできねぇよ。この戦いはそう甘くねぇ。選ばれた以上それが運命なんだよ」
「・・・・・・・・・・・決めたぞ・・・・」
「は?」「!!!!」「ッ!」
犬は目を動かし由里香達を順番に睨む。由里香はバッキーを咥えた。
「最初は所有者だけを天に贈ろうとしていたが・・・邪魔をするのだな・・・・・決めたぞ。その所有者の味方をする所有物も同罪である。罪とは平等なもの。裏切り者め!汝達、全員を天へ!悩みなどない。誰もが導かれる場所へ贈ってやる!!」
「ヒステリックになりやがって。さっきのクールキャラはどうした?」
犬の目は血走っており歯をむき出しにしている。更には唸り声までも聞こえていた。すると突然、
「・・汝達はその対象である!我の邪魔をし、我の道を防ぐもの達!それは天への冒涜である!生きる価値などもはや無し。その為にはまず・・・・・
蛇が邪魔だ!」
「何っ!?」「ッ!!」「サック!!!」
サックの真後ろの地面からツタが飛び出してきた。それだけではない。辺り一面、無作為にそのツタが飛び出してきている。
「どういう事だ・・・自分は動けないのに・・どうやってこのツタを・・腕でも足でもない。一体どこを植物に」
「自身の身体の一部を植物に変える能力。手、足、毛、背骨、腹筋それだけだと思っているのか。我の尻尾を植物化するとどうなると思う」
「どうなる・・・かって・・・ッ!!」
隆弘は倒れ込んでいる犬の真下を見るとその周りは根が張り巡らせられていた。
「・・・・尻尾を植物に変えて地面で増やした!?」
「あっているが間違っている。そこに揺らいでいるツタは我の身体の一部ではない。我の身体の一部である尻尾を使って繁殖させた。根を張り巡らせた。地とは全ての命を生むものだ。我の植物化はそれを活性化させる。さらにその植物は我の意思で操る事ができ、我が動けなくてもそれは汝達に襲いかかる!」
「サックくん!危ない!!」
「クソッ!サック!!!」
(ダメです!わたくしでは!この数は避けれない!)
周りの全てのツタがサックを叩き潰そうと襲いかかってくる。由里香はサックの元へ走った。
『植物の反乱』
「サック!!!!!!」
凄まじい音でツタが次から次へと押しつぶすかのようにサックに向けて攻撃をしてきていた。しかし
「・・・・・ゆりか・・・さん・・」
「はぁ・はぁ・心配かけさせん・・なよ・逃げろ!・・・サッ・・ク」
全てのツタの攻撃をうけたのはサックではなく由里香だった。
(兄貴・・・・やっぱりあたしは・・まだ・・弱いよ・・・)
由里香は背中でツタを受け止めるとサックの上に倒れこむ。
「ゆりかさん!!ゆりかさん!」
「綾くん!」
「・・・気絶している。背中の骨が砕けている。不思議な所有者だ。何故死んでいない。身体まで頑丈ということか。汚れた魂め。汚れた魂め。まぁ良い。これで自由に動く事ができるのだから。今からその魂を天に。安心しろ。すぐに汝の所有者も後を追うだろう」
「サックくん!!逃げるんだ!」
「雑魚」
「ぐっ!!!」
由里香に強く語りかけていたが全く反応がない。犬は周りのツタの動きを止めるとゆっくりと立ち上がりサックに近づき、逃げようとしたサックの尻尾を踏んづけた。
「汝のその悪魔のような目は我の道に必要無し。首を突っ込むからこうなるのだ。小さな行いは大きな危険を招く。こうなりたくなければ地を這いずり回り余計な気を回す事なく静かに暮らせばよい。動物も人間もそれは変わりない。我の目的はそのような空虚な者達を天へ贈る!」
「・・説教ですか?初めて会ったものに説教とは、残念ですがあなたのつまらない人生論はわたくしにとってどうでもいいことなのです。わたくしの頭には全くといって響いてこない!わたくしを胸を躍らせるのは、この世に二人だけです!」
「・・・・・・・・ならばもういい。また天で再開することを願っている・・・・」
「サックくん!!(ダメだ、まだ動くのが辛い!動け!動けぇぇぇ!!!)」
『植物化 右拳 荊棘』
犬は右手を握り空に掲げるとその拳は徐々に植物に姿を変えていった。鋭い針がたくさんついている荊棘へと
「汝を滅するにはこれで十分である。この荊棘で汝のザラザラとした肌を切り裂き、血を流し、天へ。どこからどこまでが首かはわからないが、今やただの蛇となった汝を贈るのは簡単。一発で仕留めなくてもいいのだ。是が非でも、どんなに時間がかかろうとも結果だけが勝利への道となる!!!」
「・・やってみてください。わたくし達は負けるためにあの方を助けたのではありません。ゆりかさんが強くなるために、そしてゆりかさんが信じたから助けたのです。だったら、あの方々もわたくし達を信じて助けてくれるはずなのです。たった一匹でわたくし達に挑んだ事が貴方の負けを意味するのです!信頼も仲間も何も持っていない貴方にはわからない事でしょうけどね!」
「ごちゃごちゃごちゃごちゃ!気に触る!空虚!空虚!!空虚!!!!無意味なのだ!何人、何匹でかかろうとも!決して!そうだ、我の邪魔をするものは!徹底的に天へ!!いや、いやぁぁぁ!!!地へ!!!深い深い暗闇へ!!!!葬ってみせようぞ!!」
『荊棘の!!!逆襲!!!!!!』
犬は荊棘の拳をサックの顔めがけて振り下ろすとその衝撃でなのか、砂埃が辺り一面に舞った。少ししてその砂埃が薄くなっていく。すると犬は拳をぶつけたまま動きを止めている。しかし明らかにその位置はサックの高さでは無かった。サックまで残り10㎝というところで動きが止まっていたのだ。よく見ると何者かが犬の腕を力強く握りしめて、その動きを止めている。砂埃が完全になくなるとその者は姿を現した。
「信じてくれていたんだね。吾輩も信じているよ。だから助ける。だから守る。よくここまでたかひろを守ってくれた。ありがとう。あとは吾輩達にバトンタッチしてくれたまえ」
「・・頼みますよ」
「・・・・・・・・あの所有者の所有物か・・いつのまに・・・」
「・・よく来てくれた
あんころ!!」
あんころは一向に掴んだ手を離そうとしなかった。守ると決めたものは最後まで守る。そのような目で犬を睨んでいた。
「いつのまにここまで来た。あの一瞬でこんな対応ができるとは、汝は相当の経験を、戦闘をしているな」
「いや、違うね。君は実にわかりやすい性格をしている。怒ると周りが見えなくなる。目の前のことだけに集中するタイプだ。だからこそ、ここまで簡単に君の懐に入る事ができたんだよ。狙い通り、君の視野はサックくんで埋まっていた。ギャンブルだったんだ。君の性格がそうなのか、一か八かのギャンブルだった。たかひろ!この犬くんをどうすればいいか!簡潔に教えてくれ!」
「!!!」
あんころは後ろで倒れたままの隆弘に話しかけると隆弘は目を見開いてこれまでにない大きな声で
「・・・倒すんだ!!!!!だけど倒しちゃダメなんだ!!!!!飼い主は!!!無関係なんだ!!!!」
「・・・・・・・・」
叫んだ。全く意味がわからない。他人が聞けばただの矛盾の叫びだった。しかしあんころは自分の耳を動かすと空いている左手を犬の腹に向けた。すると次の瞬間
「波ッ!!!!!!!」
「ブファッ!!!!」
犬は思いっきり後ろに吹き飛ばされた。そのあんころの掌は光っていた。
「理解したよ、たかひろ。能力半径外で倒せばいいんだね。たかひろのいいたいこと全部!
理解した!!」
残り・427チーム
ありがとうございました!!
次回もよろしくお願いします!




