番外編 俺の飼い主 俺の完璧な異能力ペット
番外編 バクトヤモリです!
先に最新話を読んでから見ることをお勧めします!
俺の生活は完璧だ。親からは愛されて、裕福で何不自由ない生活を送っている。学校の成績はオール満点。スポーツも全般ができ、俺と友達になりたい奴は数え切れないほどいる。今もこうやって頼んでもないのに横を歩いているしな。
「尺詰、お前また一位だったんだろ?やっぱり天才は違うよなぁ」
「はは、そうかな?」
黙れ。俺は天才じゃねぇ。完璧なんだ。完璧じゃない人間はその汚い口を閉じやがれ。俺の完璧の質がお前で下がっちまう。
「ごめん、この後用事があってさ」
「お、おい!また告白かーー?」
手紙を貰ったから行くだけだ。まぁ、お前と離れたかったからな。
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「あの!ずっと前から見ていました!好きです!だからその!えっと!付き合ってください!!」
「・・・・・・・」
やっぱり告白だったか。この一週間にもう三回目だ。俺はモテる。完璧だからな。これまでに告白された回数は覚えてない。だが、告白に丸を出した事は一度としてない。そりゃそうだ。今までに告白してきた女は全員どこかしらの欠点があった。完璧じゃなかった。だが、
「あの・・・?」
「・・・・・・・・」
この女は違う。自信満々に告白してきた女達とは違う。こいつも俺と同じだ。大学で俺と同じく完璧な女だった。勉強もスポーツもトップレベル。そう考えると震えた声で俺を上目遣いで見つめてくる顔も愛おしく見えてきた。
「・・・わかった」
「へ・・!?」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
完璧な男は、完璧な女と付き合うもんだろ?
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「今日はありがとうございます」
「いや、こっちも楽しかったし。こちらこそありがとう」
ここ五ヶ月で嫌と言うほどわかった。彼女ができると見える景色が違って見える。どこかで聞いた言葉が現実になっている。つまり俺の完璧が倍になったという事。今日だってそうだ。朝から夜までデートをした。デート中の俺たちはそれはもう完璧な二人だった。優越感が尋常じゃねぇ。
「それで今日、バクトくんに言わないといけないことがあってね・・・」
「ん?何?」
これから先もこんな幸せな事が続くと思うと腹の底から笑いが込み上げてきそうになっちまう。だが抑えろ。爽やかな笑顔を向けるんだ。俺たちは完璧なカップルなんだから。
「私と・・・・別れてくれませんか・・?」
は?
「バクトくんと付き合ったこの五ヶ月間、本当に楽しかったし嬉しかった」
何言ってんだ・・コイツは・・
「でも、ごめんなさい。好きな人ができたの」
なんで頭を下げてんだ。お前が俺に告白した時と同じように頭をさげてんだ。
「だから、別れてください」
俺たちは完璧なカップルじゃなかったのかよ。
ああ、そっか・・・・・俺は完璧なんだ。それは間違いない。なのに完璧なカップルじゃない理由は・・・簡単だ。
コイツは完璧な女じゃなかったんだ。
「アッ・・・!」
「・・・・・・・・・」
じゃあ俺は、完璧じゃない女の告白を受けて、振られるのか。完璧な俺がか?完璧じゃない奴に。おかしいだろ・・?そんなの
「バク・・ト・・・くんっ・・・」
「・・・・・・俺の完璧を汚すな・・・・!」
気づいたら俺は、馬乗りになって彼女の首を絞めていた。当たり前だ。コイツが死ねば俺の完璧は保たれる。汚れが落ちる。
「・・・・・・・・・・」
「ハァ・・ハァ・・・ハァ」
さっきまで動いていた彼女は目を見開いて動かなくなっている。だけど汚れは落ちなかった。それどころか更に酷くなった気がした。
「俺が・・・・・殺した・・」
酷くなった理由が今になってわかった。死体が見つかる。警察が調べる。指紋どころの話じゃない。今日はずっとコイツといた。一瞬でバレちまう。そうなれば、
「俺の・・・完璧・・が・・」
俺は捕まる。死刑か?どのみち、俺は完璧じゃなくなってしまう。
「どうする・・どうする・・どうするっ!」
「なぁ!!今のもっかい見せてくれべや!」
「・・は?」
なんだ・・コイツ・・・トカゲが四つん這いで近づいてくる。しかも、喋ってんのか?まぁそんなの今はどうだっていい。どうでもいい。
「なんだトカゲ・・俺は忙しいんだ」
「トカゲじゃなくてヤモリべや!それよりもなぁ!さっきまで喋ってた女がピクリとも動かなくなったべや!!もっかい見せてくれべや!」
全部見てたのか。嬉しそうに両手を広げて、死んでいる彼女の身体を這いずり回っている。ゴキブリみたいで気持ち悪い。
「おい聞いてるべや!?」
「だからどうしろって言うんだよ・・」
「また殺してみてくれべや!俺も手伝うからさぁ!!」
手伝う?こんな小さいヤモリに何ができるってんだ。
「・・ならこの死体を隠してくれよ。そしたらまた考えてやる」
何を期待してんだ。馬鹿馬鹿しい。取り敢えずこの死体を、
「わかったべや!!」
「なんだと・・?」
「そいつを隠せばいいんだろ?了解したべや!うーん、あ!じゃあ公園のトイレにゴーべや!!そいつを持ってついてくるべや」
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「・・・・・・・・・・ウッ!」
「後は周りの血をここにあるホースで流せば終了べや!コレで完全隠蔽・・べや!隠したべや!」
信じらんねぇ・・掌から糸を出しただけでもびっくりなのに、その糸でなんだったのかわからない程細切れにしてトイレに流しやがった。気持ち・・悪ぃ・・!
「ほら!手伝ったべや!コレでまた見せてくれべや!!」
「・・・・・・」
あぁそうだ・・・コイツを使えば、もしかして
「なぁ・・・ヤモリ・・」
「べや?」
「お前がやってみろよ・・・」
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「本当べや!!見ると殺るとじゃ!全然違う!最高に楽しいべや!」
「そいつはよかったな」
アイツを行方不明にしても俺達がデートするのを知っている奴らがいる。俺たちの両親だ。まずはアイツの両親をヤモリに殺してもらった。俺は何も関与していない。まず家に糸で小さな穴を開けてもらい、侵入してもらった。後は簡単だ。あの糸で殺して貰えばいい。三人の首を切断してきたと嬉しそうにヤモリは話してきた。アイツの家族は両親と弟。それは俺がよく知っている。だから全員を殺してきたことに安堵する。
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「キョキョキョッ!最高べや!最高べや!!!」
我が家の中からヤモリの叫び声が聞こえる。同じ方法で俺の両親も殺してもらった。またまた嬉しそうに首を切断したと話してきたが、悲しさは微塵も感じなかった。きっと俺は前々から父さんも母さんも見下していたんだ。無意識に口角が上がる。もう俺はこの家には戻らない。コレで俺もアイツも行方不明扱いだ。事件に巻き込まれた被害者と思われる。
「・・・・・・あと・・アイツだ」
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「どうだった。ヤモリ」
「言われた通りの男は殺したべや!それで、すまねぇべや。勢い余って男の家族も殺しちまったべや!」
「構わねぇ・・」
最後に仕上げだ。アイツが好きになった男を殺してもらった。ついでに男の家族も。アイツの携帯を見れば一発でわかったんだ。前までは俺とのツーショットだったのに、変わってたからな。
「まさかだよな・・・」
『尺詰、お前また一位だったんだろ?やっぱり天才は違うよなぁ』
「テメーとのツーショットに、変わってるなんてな」
だから殺してもらった。当たり前だろ?完璧な俺が、完璧じゃない男に負けた。そんなのありえない。完璧な俺を維持するために死んでもらった。家の場所も聞いてないのに教えてきたから知っていた。運がいい。
「彼氏ができると見える景色が違って見えるってか。やっぱりアイツは完璧じゃなかった。目まで腐ってたみたいだな」
「なぁ!次はどいつを殺せるべや!どいつを殺していいべや!」
糸を掌から出しながら喜んでいやがる。このヤモリやっぱり使える。後は適当にそこら辺の奴らを殺しまくってくれればいい。俺とアイツが行方不明になったという事件がコイツの惨殺事件に埋もれてくれればそれでいい。コレで全て丸く収まる。
「ククッ!あはははっ!あはははっ!」
「べや?どうしたべや?急に笑って」
何故か笑いが止まらねぇ。そうだ、そうだよな。やっぱり俺は完璧なんだ。偽彼女に振られて殺したが完璧だ。偽彼女の家族と俺の両親をヤモリが殺したが完璧だ。友達モドキもヤモリが殺したが完璧だ。やっぱりどんな事が起こっても変わらない。
「あはははははっ!!はははっ!ははははははっ!!」
「キョキョキョッ!よくわかんないけど愉快べや!キョキョキョッ!キョキョッ!」
俺の生活は完璧だ。
ありがとうございました!
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