43話 いわぬが植物
よろしくお願いします!!
速い!逆に速い!!
「汝は死の味を知っているか?死の味はすなわち恐怖、孤独、絶望。今まで味わってきた味が、血が苦味を帯びて帰ってくる。それが死の味。その汚れた魂に味わって貰おうと思っていたが、なんだそれは、能力・・というものか。我のこの植物と同じものであるのか?」
「私がなんの準備もせずに一人になるとでも思うかい?そこまで私もバカじゃないよ。身体から植物を出す能力。厄介だな」
隆弘に突き刺さったと思われて伸びていた犬の背中である植物が隆弘の胸の前でピタリと止まっている。攻撃が通らない。隆弘と植物のツタの間に何かがあるようだった。薄いが青白い何かが。
(あんころの能力にこんな使い道があるなんて思いもしなかった。なんの痛みも感じない。『波動防』これで少しは安心だ。少しだけ)
『たかひろいいかい?吾輩の波動で作った『波動防』は君の波動のエネルギーをこのバリアに使っているだけなのだ。君の波動が無限でないようにこのバリアも無限ではない。いずれはそのバリアは消える。たかひろのバリアが薄いのは君の波動の量を表している。だからこれは保険だ』
「『植物化右手』汝、そんな小細工が通用すると思うのか。徐々にその防御壁が柔らかくなっていくのを感じる。そして天へ。汚れた魂を天へ!これが何の戦いかは知らないが天に贈ることは変わりはしない」
「さっきから聞いていれば、まるで何も知らないかのような言い方じゃないか。君はこの異能力ペットバトルの事は知らないのか、君の飼い主は、いったいどこだ」
犬は背中から出した植物をしまうと今度は右手を植物化して鞭のように何度も隆弘を叩いている。隆弘は能力半径にでないように必死に避けていたがどう襲ってくるかわからないツタを全て避ける事は出来なかった。しかしその攻撃も虚しく波動防によって防がれている。すると犬は攻撃をやめ、隆弘に近づいた。
「我に飼い主などもういない。我は捨てられた。名も捨てた。汚れた魂に捨てられたのだ。裏山、わかるであろう。子も大人ですら踏み入れない場所、そこに我を捨てたのだ。自身の勝手な理由で婚約者が犬アレルギーだからしょうがないと宣った。我の居場所は汚れた魂によって葬られ今まで生きてきた」
「・・・・・・・捨て犬が異能力ペット・」
犬は怒りをあらわにした。それは先程のクールな犬ではなかった。確実に気が動転している。
「そして現在、我はこの力を手に入れた。頭の中に力の使い方が入ってきた。しかし力は使えなかった。そして昨日、裏山に入ってきた二人の所有者と二匹の所有物のおかげで、だいたい理解することができた」
「何!異能力ペットとその飼い主が裏山に、一体何をしに」
「我の知ったことではない。そのもの達は教えてくれた。能力も能力半径も所有者がいる事も気絶してはいけない事もだ。だから我は裏山から出てきた。汝達のような汚れた魂を天に贈るため。するとどうだ。裏山から出た途端、能力が使えるようになっていた。つまり我の所有者が近くにいるということだ。前の家にはいなかった。だから我はそいつを探し出し、
この能力で天へ」
「!!!!!!」
犬は背中からまた長いツタを生やすとそのツタはまるで枝分かれするかのように、増えていく。その数は数えきれない程となった。
『植物化背骨』
「その能力を使って飼い主を殺す。そう言いたいのかい?」
「その通りだ。この能力が使えた時、まず考えたのは所有者の殺し方だった。顔を刺すか、心臓を引きちぎるか、脳を潰すか。それだけを考えていた。汝はその前の前座である」
犬は順番に顔、心臓、脳を順番に勢いよく付いてきた。隆弘はその勢いでバランスを崩しそうになっている。波動防がさらに薄くなってきているのが隆弘にもわかった。
「油断はそのものの全てを物語る。油断をした者には勝利も希望もない。今の汝のようにな。汝の油断はそばに所有物を置かなかった事だ!」
「くっ!(これ以上動くと能力半径外に!それにもう波動防が!少しすぎるぞ私の波動!)」
「今更だ。避けるのも何もかも。もうすぐで我が自身のこの手で汝を天に贈れる。人間に罰を悲しみに救済を。死して語られる全ての魂よ天に帰化せよ」
「!!!」
犬の右手は植物化するとそのツタはみるみるうちに太くなっていった。その太さは最初に出した植物とは比べものにならないくらい太かった。犬はそれを天高く掲げると物凄い勢いで振り下ろしてきた。
「ふんっ!!!!」
「グオっ!!!」
今にも消えそうな波動防に植物がぶち当たると植物は跳ね返される。しかし真空を切るような音が当たり一面に聞こえると先程まで隆弘を覆っていた波動防がゆらゆらと漂いながら消えていく。
「終わりは呆気ない。その魂に涙はない!」
(エネルギーを使いはたして・動く事が出来ない・・)
跳ね返されたツタはさらに勢いよく隆弘を叩き潰そうと襲ってきた。もう隆弘に波動防はない。更に波動のエネルギーを使っていた為、体力はもう残っていなかった。避ける気力もない。ツタは隆弘に当たる3秒前だ。
『植物の反逆』
「油断したのは君ではないのか?私が一人だったから油断したのだ」
「!!」
ドゴーーーーーーーーーーーーーーン!!!
「汝は・・・いったい!!体が!」
犬のツタは隆弘に当たったと思われた。しかしそのツタはまた天空へ投げ出された。犬の腕が引きちぎられるほど勢いよく。犬は体を震わせて冷や汗を垂らしている。すると
「めんどくさいのは仲間探しだろ?」
「ああ、それにこの時間はいい。学校が終わってサボってでも何もいわれねぇ。めんどくさいポリの野郎どもももういねぇ。誰もいねぇこの時間帯。人っ子一人こんなチンケな道だれも遠らねぇ。つまり」
隆弘の前には右足を全力で上にあげ、ツタを跳ね飛ばした長いスカートを履いた髪の長い女性が立っていた。その女性の肩には小さなヘビが乗っかっておりその口元には長細いお菓子を加えている。
「強い奴と戦えるって事だよなあ!!!」
「その通りです。ゆりかさん」
ヘビ睨みの綾、由里香であった。あの音の正体は由里香だったのだ。
──────────────────────
「ドルアアアア!!!!」
「でちゅちゅちゅちゅちゅちゅ!!」
「殺殺殺死呪死殺!!!」
その頃サシミ達は未だに能力半径内に入れていなかった。完全に命がけの鬼ごっこだ。ハリちゃんはサシミに地面へとおろ下ろされると全速力で両手を振って、智晴の元へ向かっている。同じく火星ちゃんも表情一つ変えずに走っていた。
「クソがぁ、マジで能力半径なんて作んなよ!なんでこんな走らねぇといけないんだよ!!」
「同感でちゅ!サシミン!やっぱ、抱っこしてでちゅ!!」
「やかましい!俺だけが疲れるなんてやだね!同じ苦しみを体感しやがれ!」
「流石の性格の悪さでちゅ!!」
サシミ達が向かっているのは禎達が向かったであろう方向。あんころが教えたのは能力で見た場所であって、細かい距離まではわからない。だからこそ能力半径に入る為全速力でその方向に走っているのだ。
「呪殺呪殺ッ!!!」
「あの野郎・・まずその仮面外せ!!君悪くて怖さ倍増だ!おい!聞いてんのか!」
「まずコミュニケーションが取れてないでちゅ・・恥ずかしがりなんでちゅねー」
「そんな可愛いもんじゃねぇだろうが!どうすりゃいい、いずれ追いつかれる。それになんだあの動き・・壁を走ってるみてぇだ」
火星ちゃんは学校の壁を蹴り、木の上を登り、まるで空から襲ってくる野鳥の動きであった。少しでも油断をすると食い殺されそうな、そんな勢いだ。
「でっちゅっちゅっちゅ〜。こういう時に役に立つハリでっちゅ。サシミン、きっと見直すでっちゅ。ハリちゃんって呼んでもいいでちゅよ!」
「やかましい!!早くやれハ・リ・ヤ・マ!
「呪殺!!!」
「ハリヤマ!早くしろ!」
するとハリちゃんはサシミの頭に背中から登ると火星ちゃんの方へ向き直った。火星ちゃんは木のてっぺんに登るとサシミの方へ思いっきりジャンプする。ハリちゃんの鼻が火星ちゃんのマスクが当たりそうなくらい近かった。ハリちゃんは息を吸い込むと
「でちゅーーーー!!!あそこにUFOでちゅううう!!!!」
「はぁ!?「何言ってんだ!コイツ!!)」
ハリちゃんは指を火星ちゃんの後ろを指差した。すると火星ちゃんは
「呪!?」
「成功!逃げるでちゅ!!!」
「マジか!よっしゃ!」
火星ちゃんは首が折れてるんじゃないかというくらいハリちゃんが指差した方向に首を反らすと空中にいた為、勢いで一回転して尻餅をついた。
「よくやった!!!今のうちに逃げるぞ!!」
「しかも!能力半径内に入ったでちゅ!!今最もノリに乗っているハリネズミはハリでちゅ!!」
「たまには役に立つな!ぶっ放せ!ハリヤマァ!!!」
「でっちゅう!!」
サシミは火星ちゃんに向き直り、ハリちゃんはサシミから降りると、身体を前屈みにして固定した。針を撃つ体制になっていた。火星ちゃんはゾンビが起き上がるかのように起き上がり目の輝きがなくなると動きを止めた。
それはただただ異様だった。
(なんだ・何かおかしい。確かにコイツはおかしいが違う意味でおかしい。さっきまで感じてなかったのに・コイツが動きを止めた時から感じるこの感じは・・)
「放つでちゅ!!!三針!!!!」
「・・・・・・・・」
「!!!やめろハリヤマ!なんかヤベェ!」
『・・・やめろハリヤマ・なんかヤベェ・」
「は?」
『は・』
(喋っ・・た!?それに俺の言ったことを同タイミングで・・)」
火星ちゃんはサシミと同じタイミングで同じ言葉を口ずさんだ。火星ちゃんにはなんの気迫もない。まるで火星ちゃんじゃないみたいである。サシミは嫌な予感がしハリちゃんを止めようとしたがもう遅かった。
「でちゅちゅちゅ!!!!」
「・・・・・・・」
ハリちゃんは針を火星ちゃんに向かって3つ撃つとその針は2つは仮面に弾かれ1つは右手の甲にあたった。その瞬間
「っ!!!痛って!!」
『っ・・・痛って・・』
「どうしたでちゅか?サシミン!?ハリ、サシミンに撃ってないでちゅよ!」
少しの痛みがサシミの身体全身に伝わる。サシミは右手の甲を抑えている。火星ちゃんはというと針が刺さった甲を抑えることもなく、ずっと直立不動を続けている。まるで痛みを感じていないかのように
(なんなんだ!!クソっ!この痛みは確かにハリヤマの撃った針だ。それはあのキャップ犬の時にわかっている!それが何で!今あたった!ハリヤマはあの仮面野郎だけを狙ってた。それに俺には針が刺さってない!よくわかんねぇが、まさか・・・・これが
仮面野郎の能力!!)
残り・427チーム
ありがとうございました!!
感想・意見よろしくお願いします!




