9話 立つ鳥焼け跡を残す
波動
オーラ
気
よろしくお願いします!
「お前らなん・・で」
サシミは、未だにキンキンしている耳に手を添えながら目の前に現れた隆弘とあんころにびっくりしている。
「サシミくんと君の飼い主が心配だったからね。でも少し遅かったな。もっと早く来ていたら」
隆弘は気絶している禎を見ながらそう言った。
「サシミくん君は下がって。後は私たちに任せてくれ」
「無理だ!あのムカつくニワトリの声はスゲェうるせぇんだぞ!下がっても無駄だ!」
そう、あのニワトリは自分の声を大きくする異能力ペット。聴力がある生物全員に聞く。しかし、隆弘もあんころも顔色一つ変えない。
「大丈夫だよ、サシミくん。安心して休んでいてくれ」
「コーケッケッー、別にいいコケ、あの茶色猫は、後でいいコケ。お前らを倒せば、一気に2チームも敗退コケ。運がいいコケ。ふーーーーーーーーーーーーーーコケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!」
ニワトリが禎を気絶に追いやった最大音量であんころ達を攻撃してきた。
「ぐ!」
サシミは急いで自分の耳を抑えこむ。
(あれ?なんで何も聞こえねぇんだ?もしかして耳が聞こえなくなったか?)
音が全くしなくなったと思った。しかしものすごい勢いで吹いている風の音は聞こえていたのだ。その風の中心にいたのは
「なんだ・・・・これ」
「コケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ(なんで聞かないコケ!)」
あんころだった。あんころのポンチョが、風でなびいており、前に出している右手から大きい魂のようなものが、ニワトリの声を吸い込んでいた。
「コケェェェェェェェェェェはーはーはーはーはーどうゆうことコケェ!なんで俺の能力が効かないコケェ!」
ニワトリは、物凄く驚いていた。
「吾輩の能力で吾輩の気を固まらせて、ブラックホールのような物を作った。お前の声は、吾輩達には、届かないよ」
(もうなんでもありじゃねぇか)
サシミは苦笑いしながらそう思った。
「うるせぇコケェ!ふーーーーーーーーーーコケェェェ!!!!」
ニワトリの攻撃は、全くあんころ達には通じていない。
「はーはーはーはーはーはー」
ニワトリは、疲れているのか肩で息をしている。
「すまないがそろそろ終わらせるよ」
そう言ってあんころは、前に出している気の塊をさらに大きくした。
「まだ俺は、負けないコケェェェェェエ・・・あれ・・・・なんか暑いコケ」
ニワトリがそんなことを言った瞬間
「コケェェェェェェェェェェ!!!!!!」
「はぁ!」
「何っ!」
「!」
ニワトリの入っている飼育小屋ごと炎が急に燃え始めた。ニワトリは、断末魔の声を出す。その声は、今までの出したどの声より大きかった。しかしその声もあんころの能力に吸い込まれている。
「コケェェェェェェェェェェ!!!」
「たかひろ!消化器を!早く!」
「わ・・わかった!」
隆弘は、急いで消化器を取りに行った。
「コケェェェェェェェェェェ!!!!!」
「サシミくん絶対に近づかないでくれ」
あんころはサシミを近づかせずにニワトリの声を能力で受け止めながらそう言った。しかし
「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・はぁ!!」
「サシミくん?」
サシミは目の前で燃え上がっている炎を見つめながら放心状態になっていた。
「はぁ・・・はぁ・・はぁ!!」
「サシミくん!」
「はぁ!な・・なんだ!」
「いや、大丈夫かなと思ってね」
「あ・・・ああ大丈夫だ」
サシミのおかしな反応に、驚いていると
「あんころ!持ってきたぞ」
隆弘はそう言いながら消化器を飼育小屋に向けて発射した。しかし
「この炎・・消えない!」
「やはり、異能力ペットか!」
その瞬間ニワトリの声が全く聞こえなくなったと思ったら。
「!」
炎が消えた。
「ニワトリくん!大丈夫か!」
隆弘は急いで、焼け崩れた飼育小屋に入ってニワトリを確認しにいく。
「!だめだ、死んでいる」
「ちっ!クソが!」
「・・・・」
計5羽のニワトリは真っ黒焦げになっていた。
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「う・・・うーん」
「お!起きたか、ただし」
ただしが目を覚ましたのは、もう日が沈んでいた頃だった。
「あのニワトリは?」
「・・・死んだよ、いきなり飼育小屋が炎上したんだよ。飼い主の方は、全身火傷で病院送りだってよ」
ニワトリが燃えて少し経った頃、救急車のサイレンが近くで聞こえたので、救急車のもとに、2匹と一人が言ってみると、全身火傷で倒れている男が、救急車で搬送されていた。
「そんな・・・」
禎は、下を俯きながら答えた。
「おそらくあの炎は、異能力ペットの能力だろうな」
「貴方達は・・?」
「俺が今日会った異能力ペットとその飼い主だ」
「驚かせてすまない。私は、武捨 隆弘こっちは、あんころだ」
「よろしくね」
「・・・こちらこそよろしくお願いします」
禎は、ドキドキしながら頭を下げる。
その後サシミに言った、この異能力ペットバトルや、あんころの能力について喋った。禎は、ずっと下を見ていた。
すると隆弘が、
「そうだ。私たちと、仲間にならないか」
「へ?」 「何っ?」
「さっきの戦いのように、誰かが巻き込まれたり、死んだりするなんて間違っている。だから私たちはこの能力バトルを終わらせようとしている。その為に力を貸してくれないか」
「(今はコイツを敵に回すのは厄介だな〕ああ、そっちの方が面白いかもな!良いぜ。手を貸し「すいません」は?」
禎が食い気味に断った。
「僕には、そんなの無理・・です。みんなを守るとか、そうゆうのは無理です」
「そうか、それならいいんだ。こちらこそすまない。急にそんなこと聞いて、疲れてるだろうに」
「いえ、気絶した自分が悪いので、僕1チームだけ知っているチームがあるのでそちらに行ってみるのはどうでしょうか」
「雨森さん・・だろ」
禎が言おうとした名前を隆弘に言われた。
「どうしてその子を!」
「雨森さんたちは、私たちの仲間だよ。さっき雨森さんから異能力ペットの飼い主を見つけたと
連絡が来てね。君の名前だったからね」
(雨森さんが、言っていたあの人ってこの人だったんだ)
「最後に君の通っている学校には、君たちと雨森さんたちを除いて少なくとも異能力ペットバトルに参加しているチームが3チームいる。あんころの能力で昨日確信した。気をつけてくれ。何かあればここに電話してくれ。すぐに駆けつける」
隆弘は、持っていたメモに、電話番号を書いて渡してくれた。
「はい、ありがとうございます」
禎は、隆弘に頭を下げて家に向かって歩く。
「!おい!ただし!」
「サシミくん」
あんころがサシミに声をかける。
「なんだ」
「君は、この戦いをゲームと言ったね」
「ああ、それがどうした」
するとあんころの目が鋭くなった。
「これは、ゲームじゃない。リセットもセーブもできない。一度きりなんだ人生は。人間が私欲の為に異能力ペットを使う。異能力ペットも願いを叶える為に人間を使う。今までの楽しい思い出が壊れてしまうかもしれない。こんな物、ゲームとは全く別物なんだよ。生命への冒涜だ」
「いーやこれはゲームだぜ。それに少なくとも俺は、今の方が楽しいと思ってる。じゃあな」
サシミは禎の後ろを追いながら手をひらひら降った。
残り・485チーム
ありがとうございます!
次もよろしくお願いします!




