第7話「鬼の戦場①」
39.4℃の熱が出ると死なぬほど辛いですよね
迷宮の入り口は洞窟みたいだったので中は暗いのかと思っていたけど思ったよりも明るい、灯りがあるわけでもないのに明るいなんて訳のわからない説明しか出来ないそんな不思議な空間だった。
迷宮の近くにある露店で買った〈鬼の戦場〉の概要が書かれた紙を読みながら歩く。
〈鬼の戦場〉30階層まである迷宮で、比較的分かれ道も少ないがモンスターとのエンカウント率が高めである。人型のモンスターしか存在せず、上階層はゴブリン、中階層はオーガ、低階層は巨人種がいる、Cランクの理由は低階層に存在する巨人種が原因だ、牛の顔をしたミノタウロスや、単眼のサイクロプス、魔法を使う事が出来るタイタンなど凶悪な魔物が存在するため、低階層に行く場合最低でもCランク冒険者であることとパーティーで入ることが推奨だ。この迷宮に存在する宝箱は武器や防具が多く、装飾品や魔法道具は少ないとまで書かれていた。
ユウキの今回の目的は1に防具、2に普段使い用の武器、3に新しいスキルの取得とレベルアップ、ガンツから貰った響は常に装備していると厄介事を引き起こすかもしれないとガンツから言われたからだ、なんでも刀は武器というよりも芸術品として扱われているらしく、腰に下げて歩いていると奪おうとする者が現れるかもしれないと言っていた。なのである程度良い武器も探さないといけない。
「さすがに1階層だと人が多いな」
上階層にいるのはゴブリンとその上位種なのでまだ人は多かった、なのでスキルのレベルを上げるために常に【索敵】【忍び足】【魔力感知】を意識して使いながら進む。新しいスキルとして欲しいのは気配を消す事が出来る【隠密】、罠を発見出来る【罠発見】、命の危機をを感知する【危険感知】だ、これらのスキルはギルドに売られているジョブごとに覚えやすいスキルが書かれている本を買って覚えた。
しばらくは1人で行動する事になるだろうから盗賊系のスキルも欲しい、なので周りの冒険者にばれない様に進んで行く。
5階層までは通常のゴブリンしかいなかったので戦闘にならない様にこっそり進んで行く、6階層からはゴブリンソルジャーなどの上位種も出てくるので上位種とは戦っていく、ついでにソルジャーからは剣を回収していく。
迷宮は10階層ごとに階層主と呼ばれるボス的存在がいる、9階層から10階層に降りると大きめな広場になっていて100m程先には高さ3m横幅2mほど鉛色の重厚な扉が存在していて扉の前には何組かの冒険者達が並んでいたので自分もその列に並んでいく。
周りの冒険者達は雑談をしていたり、自分達の番になったらどういう戦略でいくかなどを話している。
「そこの君、1人で階層主に挑むつもりか?」
後ろから声をかけられたので振り替えるとそこには鉄の装備に固められた人の良さそうな剣士がいた。
「僕の名前はカインズ[鉄の翼]のリーダーをしている、確かにここの階層主はCランク迷宮にしては弱いけど子供が1人で挑む様な所ではない、出来る事ならパーティーを組んでから来たほうがいいよ」
彼の後ろにいるメンバーも頷いている、どうやら自分の事を心配してわざわざ忠告してくれているみたいだった。
(いい人達だな)
「忠告ありがと、ここまでこれるレベルではあるから問題ないよ」
「それならいいんだけど・・・、迷宮には何回か入ったことはあるのかい?」
「今日初めて入ったところ」
そう言うとカインズは驚きつつ
「今日初めて入っていきなり10階層までこれるなんてすごいね、それなら確かに僕の心配はいらないかな、だったら迷宮のルールやマナーは知ってるかい?」
「あー、それは教えてほしい」
そう言うとカインズは快く教えてくれた。
1.迷宮内では冒険者がモンスターと戦っている場合助けを求められない限り手を出してはいけない。
2.迷宮主への挑戦は順番に並んで挑む事。
3.迷宮内での拾った物は基本拾った者の物になる。
4.魔物を連れて他の冒険者を巻き込んではいけない、これをモンスタートレインと言う。
5.階層主の部屋に入るまでは中の様子を見ることが出来ない、誰かが入ってから10秒程で自動的に閉まり、部屋の中に入った者が死ぬか階層主の部屋から出ると再び扉が開く。
6.階層主の部屋に入ってから10秒はモンスターは攻撃をしてこないが挑戦者も攻撃することが出来ない。
7.フロアマスターを倒すと宝箱とその近くに浮いている水晶が出てくる、水晶に触れると地上に行くか次の階層に行くかを選ぶ事が出来る、そして1度でも水晶に触れば次からはその次の階層から挑戦する事が可能になる。
「こんなものかな?さあ次は君の番だから気をつけてね」
「色々ありがと俺のことはユウキでいいよ、それじゃあまたね」
そう言って扉の奥を見ようとするが黒いもやが掛かって中は見えない、意を決して中まで入ると50m四方程の円形の部屋になっており、奥にはゴブリンソルジャー、アーチャー、メイジ、シャーマンそしてゴブリンジェネラルという少し大きめなゴブリンがいた。内約としてはソルジャー20、アーチャー5、シャーマン3、メイジ2、ジェネラル1。確かにこれはパーティーで入る事を推奨するだろうな、なんて考えていると後ろの扉が閉まりその瞬間ゴブリン達がこちらに向かって走ってきた。
ギャギャオ!!
ゴブリン達が雄叫びをあげながら向かってくるが前回のゴブリンキング戦と比べるとあまりにも少ないので緊張などは特に無かった、なのでスキル取得の為にゴブリンを使わせてもらう。アイテムポーチからここに来るまでに手に入れたゴブリンソルジャーの剣を地面に差してそれを1本ずつゴブリンに向かって投げる。腕に刺さる者がいれば足、腹、頭と刺さる。本来なら貫通する程の力で投げることも出来るが数が欲しいので刺さる程度の力で投げ続けた。投げる剣がなくなる頃にはソルジャーは全滅していた、ジェネラルがアーチャーとシャーマンにに何か指示を出すと矢と火魔法のファイヤボールを射ってきた、これも使わせてもらう。意識して矢とファイヤボールを回避しながらゆっくり進んで行く、段々回避するのが楽になっていく感覚を感じ、ついつい笑ってしまう。
5m程まで近づいてから一気に近づき拳と足だけで倒していく、残ったジェネラルは鉈のような剣を振りかぶって切りかかってくるがそれも全部ギリギリで回避する、何の苦もなく回避出来るようになったのでもう倒してもいいと考えて格闘技LV2【振撃】をジェネラルの体の真ん中の溝辺りに放つ、この技は相手の体に気を送って体の内側からダメージを与える。攻撃を受けた瞬間ジェネラルは口や目から血を出しながらゆっくりと後ろに倒れていった。
最後のゴブリンも倒すと部屋の真ん中に宝箱と水晶が現れた、宝箱に【鑑定眼】を使ってみても特に何も無かったので開けてみると、中には1本の剣が入っていた、さらに【鑑定眼】を使ってみると。
[名前]:鋼鉄のロングソード(等級5)
[スキル]:損傷減少
(なかなかいいんじゃないかな?スキルの付いた武器だし)
手に入った鋼鉄のロングソードを装備してゴブリン達の魔石と耳を回収して水晶に触ると確かに頭の中に選択肢が出てくる、地上に戻る事を選択すると一瞬だけ目の前が真っ暗になるが自分の今いる場所が迷宮の入口のすぐ横だと気づいて驚いた。
(本当にすぐに戻れるんだな、さすがファンタジー)
なんて考えつつギルドに向かって帰る。
ギルドに着いた頃にはもう夕方で中は冒険者達で一杯だった、レナさんはいなかったので知らない受付嬢の人にゴブリンの耳と魔石を渡して換金して貰って〈カボチャの宿〉に戻った。
ファンさんからお湯を買って部屋の中でタオルを使って体を拭く、これには馴れたがやっぱり風呂に入りたいなと思い、いつか風呂付きの家を買ってやると決心する。
ダンさんの美味しいオーク肉を使った野菜炒めを食べ終わり、部屋に戻ってから新しいスキルを確認していくと希望通り新しくスキルを取れてた。
[名前]ユウキ
[年齢]13
[種族]人族
[職業]冒険者
[ジョブ]侍 (1、戦士)
[称号]ゴブリンキラー
[レベル]39
[ステータス]
HP1450/1450 MP906/906
STR610 VIT593 DEX675 AGI662 INT326 LUC99
[パッシブスキル]
剣術LV6
体術LV7UP
刀術LV1
身体能力強化 LV7
状態異常耐性 LV7
言語理解
索敵LV7 UP
忍び足LV6 UP
夜目LV5
魔力感知LV7
罠発見LV2 NEW
[アクティブスキル]
剣技LV5
格闘技LV5
刀技LV1
鑑定眼
魔物契約LV2
気力LV5
隠密LV2 NEW
投擲LV3 NEW
[ユニークスキル]
幸運
成長期
健康体
[加護]
創造神ダークの加護
レベルも3上がり、新しいスキルも3つ手に入った、これで1人でもある程度の迷宮に潜れるだろう!・・・1人で。
迷宮を1人で潜っている冒険者はほとんどいなかった、いても1~3階層にしかいなかったのでやっぱりパーティーで入りたい気持ちはある、でもそうなると問題は自分の異常なスキルレベルの上がり方だ、常人よりも明らかに早すぎるスキルの取得にレベルアップ、せめてこの迷宮を攻略してからパーティーはなんとかしようと考えて眠りについた。
「久しぶりじゃのうユウキ君」
「へっ?」
気づくと目の前にはダーク回りは和室、確かここは。
「何で俺神界に?確か宿で寝てた筈なのに」
「君の夢に介入して会っているだけで実際に神界に来ておる訳ではないから安心せい」
そう言って笑うダークを見て少し安心して座る。
「神殿に行って祈るの忘れてたごめん」
「構わんよ、君がこの世界を楽しんで暮らしていたのは知っておったから気にしなかったしのう。所でユウキ君は仲間を欲しがっておったじゃろ?」
「うっ、まあ確かに1人でも戦力的には問題無いけど寂しいったらありゃしないんだよ」
「ところでなぜ魔物契約を使って仲間を作らないんじゃ?別に人じゃないと駄目な訳ではないじゃろうに?」
「・・・それだ」
完全に頭からその選択肢を忘れていた、そういえばその為にこのスキルも貰ったんだった。
「忘れてるのではないかと思ったがやっぱりのう、それに気づいてないと思うから説明するがユウキ君に与えた鑑定は通常の鑑定とは違うからな、通常の鑑定は発動すると目の辺りに魔力が集まる、じゃから魔力感知や魔力に敏感な者にはすぐにばれる。じゃが君の鑑定はそれがないうえに、鑑定結果をさらに詳しく鑑定することが出来る。さらに称号の変更も出来る君だけの鑑定なんじゃよ」
「それは・・・またすごいスキルなんだな。というか称号って普通は変更出来ないのか?」
「神殿におる神官ならば可能じゃよ、ただし犯罪行為によって付いた称号は意図的に変える事はできんがの」
「なるほど、また後で確認でもしておくよ」
「うむ、それを使えば魔物との契約もスムーズに進むじゃろう・・・と、もう君が目覚める時間じゃな」
「えっ、まだ数分しか話してないと思うけど?」
「ここと向こうでは時間の流れが多少ずれるんじゃよ、だからまた会おう。今度は君から会いに来るんじゃよ」
とニヤニヤして言うダークを見ると少し安心して
「あいよ、またなダーク。」