第4話「初めての依頼」
12時超えると眠いですよね。
「ジョブに就くことも出来ましたし、早速クエストを受けてみますか?」
転職部屋を後にして受付まで戻ると、レナさんからそんな提案を受ける。
本当は宿を取って明日まで寝たいけど、何もしないで帰るのも変な気もするので受けてみる事にした。
「そうですね、どうすればクエストに受ける事が出来ますか?」
するとレナさんは紙が貼られてる掲示板を指さしながら
「あそこにある掲示板がクエストボードです。そこに貼られてる紙がクエストなのでそれを剥がして受付まで持って来て下さい、それでクエストの受注が完了です。自分の一つ上までのランクのクエストなら受ける事が出来ます。他に何かありますか?」
「大丈夫です、とりあえず何かクエストを受けてみようと思います」
そう言ってすぐにクエストボードの所まで来た。ここに来ると奥のテーブルが良く見え、冒険者達が地図を広げて作戦を考えていたり、飯を食べていたり、喧嘩をしてたりなかなか盛り上がっていた。
ボードの前でGランクのクエストを見てる人は少なく、逆にDランクのクエストを見てる人はとても多い、とりあえずGランククエストを見てみると。
[薬草採取の依頼]
[スライムコアの納品依頼]
[ゴブリンの討伐]
この三つしか残っていなかった、周りの会話を聞いてみるとこの三つは常時張り出されている依頼らしく、無くなる事はないらしい。仕方ないからこの三つを持って行った。
「レナさん、この依頼を同時に受ける事って出来ますか?」
「その依頼は期限が無いので問題ないですよ、薬草はルピカスの森近辺の、日当たりの良い場所にある木の根っこ部分に生えています、それを30枚集めて下さい。これがその薬草です」
レナさんは本に描かれている絵を見せてくれた、ギザギザした葉っぱみたいだった、雑草とは見間違わないだろうしこれなら分かる。
「次にスライムコアですがスライムの真ん中にある核です、スライムを倒す時にコアを傷つけない様に攻撃して倒すとドロップします。場所は街周辺の草原に出ますのですぐ分かりますよ。コアは10個です。」
そういえばカイトさんの馬車に乗っている時に遠くにそれっぽいのがいたな、あれがそうか。
「次にゴブリンの討伐ですが、ゴブリンの左耳が討伐した証拠になるので持って来て下さい、これは薬師ギルドが薬の調合に使うらしいです、それにゴブリンは間引かないと数がすぐに増えるのでFランクまでの冒険者はほぼ毎日受けています。魔物全般にいえることですが心臓の隣に魔石があるのでそれも回収することをおすすめします、我々ギルドが買い取りますので。耳は20個です」
昨日から朝まで狩ったゴブリンが勿体ないな、急げばまだ死体が残ってるかな?
「ありがとうございます、それでは早速行ってきます」
「はい、それでは気を付けて下さいね!」
レナさんの笑顔が眩しいが、周りからやけに見られてる気がする、さっさとカイトさんの店に行こっと。
ギルドから出て東区の商業エリアに向かう、大きな通りでは出店が出ていてとても活気に満ちていた。
「さあさあ!オーク肉の串焼きだよ!そこの坊ちゃんどうだい?内の串焼きは特製のタレを付けて焼いているからおいしいよ!!」
恰幅良いおばちゃんがこちらに話しかけてくる。ものすごい良い匂いがする、それに朝はパンと干し肉しか食べてないからお腹が空いた。
「それじゃあ三本貰うよ」
「まいど!三本で15ゴールドだよ」
「はい、銅貨二枚渡すのでお釣り下さい」
「お釣りの銭貨五枚よ、温かい内に食べるんだよ!」
タレがしっかり付いた串焼きを一本アイテムポーチの中に入れて、いただきます!
「!?、うまい!!あそこの出店はまた行こう・・・」
両手に串焼きを持ちつつカイトさんの店を探す、しばらく歩くと見つかった、店の前でリリアちゃんがキョロキョロしていて、目が合うと笑顔でこっちに走って来たからだ。
「ユウキさんこっちです!パパも待ってます!!」
そう言ってリリアちゃんは俺の手を握って店に引っ張って行く。
はて?こんな強引に引っ張ってく子だっけな?
「パパー!ユウキさんが来たよー!」
店の扉を開けながらリリアちゃんが言うと奥のカウンターにカイトさんがいた。
「よく来たなユウキ!待ってたぜ」
「初めてのギルドだったから色々あってね」
「初めてならそんなもんか、ユウキが冒険者になったのならこの先ここにはよく来るかもな」
「どういうこと?」
「そりゃあお前この店は冒険者向けの雑貨屋だからだよ、それなりに昔からあるからこの街に住んでる冒険者はここによく来るし、冒険者ギルド推奨の店なんだぜ?」
「そんなに凄いとこだったんだ・・・」
「まあー俺は戦闘の才能はからっきしでな、その代わり商人の才能はそれなりだから安心しろよ!」
「それじゃあ期待しているよ、さっそくなんだけど何が必要かな?それすら分からなくてさ」
するとカイトさんは棚に置かれている商品をカウンターに置いていく。その間リリアちゃんは俺の手を握ったままぴったりくっついていた、元の世界にいた妹よりも100倍は可愛い、こんな妹が欲しかった・・・
「だいたいこんなもんか」
カイトさんの前には小さくなったテントや点火道具、毛布やタオルなど街から出て使う物から街中で使う物が積み重なっていた。
「これ全部で銀貨五枚だがユウキは命の恩人だからな、サービスで銀貨一枚でいいぞ!」
「え?そんなに安くして大丈夫なのか?」
「気にすんな、その程度安い安い!今後ともこの店を贔屓にしてくれたら問題ないからな、それに俺もリリアもユウキを気に入ってんだよ!」
俺の背中をバンバン叩きながらカイトさんがそう言ってくれる、なかなか照れ臭いなこれ。その間もリリアちゃんは俺に引っ付いている。
カイトさんに銀貨一枚を渡して全部アイテムポーチに入れてるとカイトさんが驚いた顔をしていた。
「お前アイテムポーチ持ちか~よくそんな高いもん持ってるな、一番安いのでも金貨何枚するか・・・」
「じいさんから選別に貰ったんだよ」
一応嘘じゃないぞ
「なるほどなー、普通その歳で持ってるわけないか」
「そうだ忘れてた、はいこれリリアちゃん」
ポーチの中に入れたままの串焼きをリリアちゃんに渡す。
「わぁい!ユウキさんありがとう!おいしー!!」
「なら良かったよ。それじゃあ装備も買いに行かなきゃいけないから、そろそろ行くよ」
そう言ってリリアちゃんの手を放して出口に向かう。
「また来いよー!」
「またねー!」
手を振り外に出て商業区を歩いていく。
鍛冶屋の中にいる人を片っ端から【鑑定】していく、どうせなら【鍛冶】のレベルが高い人のとこで武器を買いたいからだ。鍛冶屋の前には冒険者らしき人達が多く、獣耳を生やした獣人や、耳の長いエルフ、樽型で筋肉質なドワーフをよく見る、改めて異世界だと感じながら歩いていく。
一つ路地に入った所にも鍛冶屋があったのでチラッと見てみる、奥にはドワーフが一人酒を飲みながら店番をしていた、これは無いかなーと思いながら【鑑定】してみると。
「(見つけた!!)」
表通りの鍛冶屋は鍛冶LV3,4辺りが最高だったがこのドワーフは鍛冶LV6と高かった、すぐに店中に入っていく。
「すみませーん、武器と防具が欲しいんですけどー」
「あん?こんなボロ店に客だ?坊主、冒険者か?」
「そうです、ここで装備を買いたいんですけどいいですか?」
「ふ~ん・・・」
そう言ってドワーフは俺の体を上から下までじっくり見てから口を開いた。
「まあ客ならいい、俺の名前はガンツだ。お前は?」
「ユウキです、よろしくお願いしますガンツさん」
「あー敬語はいらん好きに話せ。坊主は何の武器を使ってどんな戦い方をするんだ?」
「一応片手剣で身軽に戦う感じかな?俺一人だから」
「だったらまずはこれだな」
ガンツさんは奥から剣と鎧を持って来た。
武器:片手剣・ロングソード(6級)無し
防具:体・レザーアーマー(6級)無し
足・レザーシューズ(6級)無し
(あれ?無しってなんだ?)
「始めの内はこの装備で十分だ、サイズもこれでいいだろう。全部で大銀貨三枚だ」
試しに防具を着てみるとサイズはピッタリだった、もしかしてさっき見てた時にサイズが分かったのか!?
「ありがとうガンツさん、そういえばここって素材を持ち込んだら装備とか作ってくれる?」
「こんなボロ店の鍛冶師に作って欲しいとかお前、変わったやつだな」
ガンツはそう言いながらニヤニヤ笑っていた。
「良いだろう!素材を持ってきたら作ってやるから、さっさとランクを上げて竜の素材でも持って来いよ!ガッハッハッ!!」
笑いながらまた酒を飲みはじめたので一言別れを言って店を出る。
「・・・久しぶりに見どころがありそうな奴を見たな、もしかしたら本当に竜の素材を持って来たりしてな」
ガンツはコップの中の酒を飲み干すと、また酒を入れる。
南門まで行くとさっき会ったスキンヘッドがいた。
「おっ!坊主、ギルドカードは作ったか?」
ギルドカードを渡すと言ってた通りの額が返ってきた、少し話すとこのおじさんはカルムと言ってこの南門を任されてる隊長らしい。一人息子がいるらしく、それで俺に優しかったっぽい。
南門を出て来た道を少し歩いてから一気に走る、昨日のゴブリンがまだあることを祈って。
「まだあった~ラッキー。」
ゴブリンの討伐は20匹でOKらしいけど超えてもその分追加で報酬が貰えるらしいから、とりあえず取れるだけ取っておく、早く帰って寝たいし。
一時間で取れる分は取り終わった、何匹かは食われてたりしてて無理だった。
ゴブリンの耳×64
魔石×8(6級)
魔石は丸い石だった、ビー玉位の大きさで思ったよりもキレイだ。
「次は薬草とスライムのコアだな」
森を出てから森近辺を捜索するとスライムはそこら辺にいたのでコアを傷つけない様に10個集めた、薬草も木の足元に生えてるのから必要分だけ取って街に戻る。早く寝たい・・・
ギルドに戻ると昼過ぎ位だった、朝ほど人はいなかったのでカウンターにいるレナさんのとこに行く。
「あっ!ユウキさんどうしましたか?」
「依頼が終わったので来ました」
「えっ?まだ5時間程しかたっていないはずですが?」
「これでいいですよね」
そう言ってカウンターの前にゴブリンの耳が入ったちょっと大きめの袋とスライムのコアと薬草を置く。
「・・・すみません疑って!すぐに報酬を取ってきますね」
いそいそと後ろのドアに薬草らを持っていって、帰ってきた。
「今回は薬草採取が銅貨3枚と、スライムコアが銅貨6枚、ゴブリンの討伐が大銅貨1枚と追加報酬が大銅貨3枚です」
(冒険者って思ったより稼げないんだな、最初だけかな?)
「はい、ありがとうございます。どこか良い宿とかってありませんか?」
「それでしたら、ギルドを出て真っ直ぐ行って、左手にある〈カボチャの宿〉がお勧めですよ、カボチャマークの看板が出てて分かりやすいですから、迷わないと思いますし。」
「ありがとうございました、早速行ってみます。また明日」
「はい!それではまた明日!」
出口の扉に手をかけてギルドを出ようとすると声を掛けられた。
「よう~、ルーキー君!今日冒険者になったばっかなんでしょ?お兄さん達が訓練所で訓練してあげるよ」
「グスは優しいな~俺も手伝ってやるよ~」
「おれも手伝ってやるよ~ルーキー君の為だからね~」
変な三人組に声を掛けられた。グスと言われた男は背中にクレイモアを背負っていて、二人目は片手剣で、三人目は盗賊って風貌だった、たぶん『シーフ』なんだろう。
「おい、またグスの奴ルーキーに絡んでんぞ・・」
「Dランクに上がってから酷くなったな~」
なんて声が聞こえてきてどうやって素早く断って宿に行くか考えていると。
「細かいことは気にしないで訓練所に行こうか」
グスが肩を組んできて訓練所に連れて行かれる。
(こいつ臭っ!さっさっと離れろ!)
ギルド奥の扉を開けると外になっていて、50m四方の区間が6個程あり二つは訓練で使用中だった。
「あのー明日にしません?今日はもう眠くて」
「ああ?先輩が指導してやるって言ってんだろ?さっさとこいよ!」
(なんだこいつら【鑑定】で見ても大したスキルも無いし、ステータスも全部俺より低い、これでDランクなのか?)
訓練場の真ん中まで来ると、話し出す。
「ルーキーの分際で受付嬢とペチャクチャ喋ってんじゃねえよこのクソガキが」
(ああ、そういう事か。しょうもない理由で俺の睡眠を妨げやがってこの冴えないおっさんどもが・・・)
「さっさと始めるぞガキィ!」
いきなり殴ってきた二番君をカウンターで格闘技LV1【剛拳】を腹に叩き込む、これは拳撃の速さと威力を上げる技で、二番君は吐きながら気絶していった。
「さっさとこいよ先輩」
「なめやがって!」
「ふざけんなよ!」
二人同時に殴りにきた、頭はゴブリンと変わらんなこいつら・・・。
三号君の方が近いのでそっちに格闘技LV1【剛脚】をまた腹に決める、これはさっきの蹴り版でこっちも吐きながら気絶した。グスはよく見るとナイフを右手に持っているので、その手を払いつつ近づいて技は使わずただの拳の連打で顔面を袋叩きにする。途中で意識が無くなってもすぐに、腹を殴って起こしてボコボコにした。
「こんなもんかな?もう絡むなよー」
そこに倒れていたのは顔をパンパンに腫らした三人組だった。
「ふぁ~あ、宿探しに行こーと」
三人を放って置いて。
読んでいただきありがとうございました。