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とある神兵の珍道記  作者: ペロりん
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05話 ヨール村のヨゼフ爺さん

情報は大事です。

「俺は赤石…えと、アカシって呼んでくれ。」

「僕はロイだよ!」


 ミノタウロスの血が抜けるのを待ち、ロイに付いて歩く。

 ロイが美味しいんだよ!と言うから、ミノタウロスを最初は抱えて行こうとしたが、余りの獣臭に断念した。血抜きは慣れた手付きでロイがしてくれた。

 剣を腰に差し、今は片方の角と片脚を持って引き摺っている。首斬れなくて良かったと思ってしまったのは内緒である。

 ちなみに、ローブは非常に丈夫で、剣で擦れても傷一つ付かなかった。謎物質過ぎる。


「ロイ、ここは何処なのかな?」

「ヨール村近くの森だよ。」

「あの森は何て名前なのかな?」

「森は森だよ?変なの。」


 少しでも情報を引き出そうとロイと話をする。ロイの眼はキラキラと輝いていた。

 俺にもこんな時期が在ったんだよなぁ、と得意の現実逃避(トリップ)をしてしまいそうになる。


 ロイからの情報を纏めると、ここは神聖アースガルズ王国のヨール村。王都からは、馬車で半年は掛かるらしい。馬車が時速何キロか分からないが、とにかく途方もない距離にあるのは分かった。辺境の村ってやつだなと思うが、口には出さない。

 他の国についても聞いてみたが、あまり分からないらしい。怪物が跋扈しているような土地では、文明も発展しないだろうし、知識の向上なんか夢の又夢だろう。

 ミノタウロスは、この辺りではかなりの強者らしい。近くのグラシルの街から、騎士団千人規模での討伐隊が派遣されないとどうしようもない対象らしい。これまでも、いくつも村が壊滅したらしい。

 ちなみに、ドラゴンゾンビについて聞いてみたが、全く分からないらしい。


 体感30分くらい歩いただろうか。ヨール村が見えてきた。門らしき所に向かう。

 木の枝を繋ぎ合わせたような柵で囲まれている。門には、木の槍らしき物を持って門柱に寄り掛かる白い髭面の老人が居た。欠伸までしていて、長閑さを全身で表現してくれている。


「おーい、ヨゼフ爺さーん!」


 ロイが呼び掛ける。


「ロイ坊。薬草は採れたかの?そっちのボンズは誰だい?…あ、あんた、そ、その手に持っているのは…。」


 何故かへっぴり腰で槍を構えられる。震えているのが、槍先から見て取れる。

 俺もドラゴンゾンビと最初に遭遇した時には、あんな感じだったんだろうな、とついつい遠い目をしてしまう。


「もう!ヨゼフ爺さん、もう死んでるから!それより、じいちゃん呼んできてよ!!」


 ヨゼフ爺さんは、ロイの声で我に返ったようだ。


「んだッッ!!」


 槍を放り出し、弾かれたように村の中に走り出した。背中を見守りながら、爺さん、転ぶなよ?と願う。


「ギャッ!!」


 願いは通じつ、石に蹴躓いたのか、派手に転ぶヨゼフ爺さん。顔面からダイブしたように見えたが、何とかヨロヨロと立ち上がり、再び進み出した。


「何か、すんません…。」


 思わず、謝罪の言葉が口から漏れる。

 苦笑いのロイと、門前で暫く待つのであった。

人は急には走れません!

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