22話 オルトロスとガドゥン
それにしても女っ気が無いストーリーですわ。
ロイにこれまでの経緯を教えてもらう。ハンス村長は腕試しをしたかったのだろうか?ギルドマスターとやらも脳筋みたいだから、拳で語り合ったという選択肢も外せないが。
MMOの可能性が高いって話は避けて、記憶が少し戻った話をした。オルトロスにユグドラシルの事を尋ねると、確かにあるらしいが、かなり南方らしい。記憶違いはあり得ないので、MMOと似て非なる世界なのか、地形が変化してしまったのか…兎に角情報が必要だ。
そんな話をしていたら、ハンス村長が虎耳マッチョ…じゃなくて、ギルドマスターを連れて戻ってきた。
「アカシ、こいつは俺の相棒だったガドゥンで、ここのギルドマスターだ。…んでよ、ワシが強くなった理由を話せってしつこいんだが、どうしたら良いと思う?」
おいおい、それって俺に判断を託してる?嫌な予感しかしないから、丸投げしよう。
「それはオルトロスに確認しないと何とも…」
「オルトロス?闇の大精霊のオルトロス様のことか!?」
何かいきなりヒートアップするギルドマスター。あかん、ハンス村長より暑苦しいタイプかもしらん。
『お主、解っておるではないか!見処があるのう!!聞いたか、アカシ。ワシは、このように敬われる存在なんじゃぞ?』
うわー、思いっきり思考を垂れ流しやがったよ、この犬。聞こえてしまったのだろう、ギルドマスターはキョロキョロしている。
『ガドゥンと言ったか?此処じゃ、此処じゃ。』
完全に語り掛けやがった。ガドゥンは、皆の視線がロイの頭の上に注がれていることに漸く気付く。
「あんたがオルトロス様ですかい?私はガドゥン。グラシルの街のギルドマスターにして、白虎人族の戦士だ!…でございます。」
あ、跪いちゃたよ。大の大人が子供に傅き、その頭の上で頷く子犬…シュールだな、おい。
『うむ。ワシが闇の大精霊たるオルトロスじゃ。苦しゅうない、面を上げい。』
それ、何てお奉行様なのだろうか?
『ワシがハンス殿に加護を与えたのじゃ。ワシは凄いんじゃぞ?』
言ったよ、あっさり言っちゃったよ?つか、何で最後は疑問形?
「オルトロス様、加護はどうやれば戴けるんですかい?」
『うむ。それは、ワシに認められるように精進するしかないのう。ワシは凄いんじゃぞ?』
「ハンスはどのようにして、加護を戴いたんですかい?」
『ハンス殿は、言うなればワシの盟友じゃ。苦楽を共にしておればこそ、加護の1つも与えるというものじゃ。ワシは凄いんじゃぞ?』
何か疑問形の自画自賛がしつこいんだが。つか、これって非常に不味い流れじゃないか?
「では、私ガドゥンもお供しやしょう!認めて頂けるように精進しやすぜッ!!」
あー!やっぱり駄目な流れだった。しかも1人で完結してないか?オルトロス、今更こっち見んな。
『うむ、いやそれは主のアカシに聞かねばのう。のう、アカシ?』
出来ればのう、NO!と言いたい。だが、NO!と言えない日本人な俺は、皆に助けを求めることにした。
ハンス村長…目を游がせる。
ロイ…目を伏せる。
オルトロス…真正面からじっと此方を見ている。
まわりの人々…あからさまに顔を背ける。
…神は居なかった!
「…ギルドマスターという、大事なお仕事があるでしょう?まわりの人に迷惑を掛けるなうな人の同行は認めません。」
もう、これしかない!と、俺は一縷の望みを掛けて答えた。
「ギルドマスターか、兼任しながらやれば問題ないだろう?うちには優秀なメンバーが揃ってるからな!なぁ、お前達?」
この人達、ギルドの職員だったんか。ああ、皆渋々だけど、頷いている。
負けか?負けなのか?…いや、まだだ!
「同行は、オルトロスが加護を与えるまでとします。異論は認めない!」
こうして、また脳筋の道連れが加わるのだった。
…脳筋が溢れる…。




