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とある神兵の珍道記  作者: ペロりん
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17話 南亭での一幕と教会での洗礼

脳筋って胸板で挨拶するのです。

一般人にも同じノリでくるのは止めて頂きたい(切実)。

 ヨール村の東に位置するグラシルの街。

 人口10000人くらい。

 アウグスト・ネルケ辺境伯が治めている。

 ネルケ辺境伯は更に南の人口200000とも言われる、ナーストレンドの都を拠点としている。


 グラシルの街は、北側が貴族の居住区、その他は正確に大凡ではあるが、西側は商人達が、東側は農民達が、南側は冒険者達が多く住んでいる。

 そんなグラシルの街の門に程近い、宿屋【南亭】に向かう。ハンス村長御用達の宿だ。…名前が安易だな?嫌な予感しかしない。


「おーい!2泊頼む!!馬車は何処に置けば良い!?」


 大声で叫ぶハンス村長。…これがこの世界の流儀なら、俺には生き辛い。


「いらっしゃいませ!ってハンスじゃないか!久しぶりだね!あんた、ハンスが来たよ!!」


 熊人族のミレーユ。女将さんらしい。


「ハンスだって!久しぶりじゃないか!元気だったか!?」


 これまた熊人族のハッサン…予想に違わず、筋骨粒々だ。…獣耳でも、おっさんのモノには触手は動かないようだ。本当に良かった。


 ハンス村長とド突きあうハッサン。見た目はハッサンの方が強そうなのだが、時折ハッサンからうめき声が聞こえるのは気のせいでは無いはず。ハンス村長…力が2倍になったの忘れてないよね?


 そんな2人を尻目に、ミレーユに案内で三人部屋へロイと向かう。ハッサンとミレーユは元冒険者で、ハンス村長とパーティーを組んでいたそうな。ミレーユには悪いが、中々暑苦しいパーティーだと思った。後の1人は現ギルド長らしい。うん、嘸かし強いパーティーだったに違いない。

 ちなみに、オルトロスはロイの影の中に居る。俺には必要ないので、ロイの護衛を命じている。本当の命令は、ロイが人を殺傷しないようにする事だ。相手側を守る、ある意味では護衛だな。




 ロイと指相撲をして暇を潰す。時折、指近くの空間に影が浮かび、犬の前肢がロイの加勢をする。力の加減に自信が持てないこともあり、連戦連敗だ。犬の前肢、肉球が気持ちよいから許す。

 それにしても、何も無い場所に影を作り出せるなんて…何でもありだな、闇の大精霊。






 スッキリしたのだろうか。ツヤツヤした顔で、頭をピカピカさせながら、ハンス村長は部屋に入ってくる。


「待たせたな!まだ夜までは時間があるし、冒険者ギルドに向かうぞ?アカシ、お前はどうする?」

「私は教会に行こうと思います。ステータスを見てみたいですし。」

「そうだったな。洗礼だな。ほら、洗礼代だ。後で返せよ?」


 ハンス村長に金貨1枚投げ渡された。お世話になりっぱなしだ。貧乏は辛い。


 ハンス村長とロイ&オルトロスは冒険者ギルドへ、俺は教会へと向かう。冒険者ギルドは門近くの南側に、教会は丁度中央の辺りに位置する。南亭の前で別れたが、俺も冒険者登録したいので、冒険者ギルドで合流することになっている。


 教会までは、露店や屋台で溢れていた。串焼きやフランクフルトのようなものが焼ける匂い、鍋料理の良い香りが漂っている。食べたくなったが、所持金は洗礼代の金貨1枚しかない。お金が無いと何も出来ないと痛感した。だが、この窮地をミノタウロスの素材が救ってくれるはずだ。信じてるよ?ミノさん!




 やれることもないので、足早に教会に向かう。程無く教会に到着する。

 ロマネスク調?の薄茶色を中心とした色合いの落ち着いた建物だ。周りの建物に比べ、少し装飾が華美なような気がするが。


 階段を登り、教会の入り口から中に入る。礼拝堂だろうか、ステンドグラスらしきものがキラキラしている。ただ、進行方向にあるデカイ賽銭箱のような木の箱が非常に邪魔である。

 困惑していると、白の神官服を着たふくよかな男性が話し掛けてきた。


「迷える子羊よ、今日はどのようなご用件でしょうか?」

「洗礼を受けたいのですが、勝手が分からなくて。ここで大丈夫ですか?」


 誰が子羊だよ?と思いながら、手の平に金貨1枚を乗せて見せつつ、神官に答えた。


「それで問題ないですよ。寄付金はこちらに。」

「ここに入れれば良いのですか?」


 金貨を入れようとしながら答える。


「ええ、寄付金はそちらですよ?洗礼代は私が預かりましょう。」

「寄付金は、持ち合わせがありません。無いと洗礼は受けられませんか?」

「チッ!…いえいえ大丈夫ですよ。ではこちらへ。」


 金貨を引ったくるように奪い取ると、デブ神官はクルリと向きを変え、左右にやたらと体を揺さぶりながら、早歩きで壁沿いに祭壇に向かう。何だかモヤモヤしてしまうが、デブ神官に付いていく。




 錫杖を持ったデブ神官、まるで猪八戒のようだ。


「悔い改めなさい。全能神の御名に於いて祝福を与えん!」


 猪八戒が錫杖を掲げ叫ぶと、錫杖の先から、キラキラとした光を放つ丸い白い球体が降りてきた。

 何だあれは?スゲーな。当たっても、大丈夫なのか?

 避けるかな?…あれ?か、体が動かない!!いや、何もかも止まっている!?


 光以外は動いては居ない。体は動かないのに認識だけは出来る。得たいの知れないものが向かってきているのだ。凄まじい恐怖だ。

 静寂の中、容赦なく光は俺に向かってくる。飛び込んでくるかの様に、速度を速め、顔に…当たった!…と思ったら、目の前で『パリンッ』とガラスが割れるかのような軽い音を出して弾けとんだ。弾けとびバラバラになった光は、俺の体に吸収されるかのように消えてなくなる。


「へ?」

「?…罪は赦されました。聖霊の賜物があらんことを。」


 いつの間にか時は動き出していた。俺の間抜けな声に訝しげな表情をしたデブ神官だったが、決まった文言なのだろう、そのまま儀式を続けている。光の球の意味が分からなかったが、砕けてしまったし、与えられたというよりも、吸い取ったという表現の方が正しい気がする。


 儀式が終わり、追い出されるようにして教会を出てきた。

 別に教会に居たかったわけではないが、やはりモヤモヤする。神の名前を聞いていないが、まぁ良いだろう。




 これでステータスとやらが見れるわ。喜び勇んで大声で叫んでしまう。


「ステータスオープン!」




 …叫んだ俺は、目の前に広がる光景に言葉を失うのだった。


宗教関係者、特に上層部がデブだと、途端に御利益を感じられなくなる私が居ます。

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