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とある神兵の珍道記  作者: ペロりん
13/24

12話 闇よりの使者

ペット枠が埋まります。

 夜営は、俺とロイが前半を受け持ち、後半をハンス村長が受け持つ事になった。早い時間は馬も周りの気配に敏感だ、というのがこの順番の決め手となった。


『パチッ、パチッ』焚き火が爆ぜる音が静寂に響く。ちなみに月は2つあり、少し青白い光を放っている。ファンタジーだな。


「ロイ、暗闇は怖くない?」

「そりゃ怖いよ。魔物がいつ襲ってくるか分からないんだよ?でも、今はアカシが居るから怖くないよ!」


 おおっ、必殺のキラキラお目々、暗がりなのに、凄まじい破壊力です。


「アカシは暗いの大丈夫?」

「暗いのは嫌いじゃないよ?暗闇を見ていると吸い込まれそうな気にならない?人によっては怖いと感じるのかもだけど、俺はそういった感覚が好きなんだよね。」

「アカシ…変わってるね。」


 ロイにディスられた気もするが、気にせずに闇を眺める。

 日本に残してきた子供達の顔が浮かぶような気がする。記憶が曖昧な事もあり、何だか遠い過去のように感じる。

 闇に浮かんでは消える子供達の笑顔。闇にはぼんやりと2つのライオンのような顔が浮かんでいる。気配を感じなかったが、魔物の接近を許してしまったようだ。

 立ち上がり、いつの間にか寝ているロイの前に立つ。焚き火を背にする形になり、魔物の表情はよく見えないが、ニヤニヤしてるように感じる。


『懐かしい匂いを辿って来たら、オヌシ、アカシでは無いのか?』


 人違いでは?魔物に知り合いは居りませぬ。


『ワシじゃよ、オルトロスじゃ。オヌシは…何か幼くなったのう。ガハハ。』


 フレンドリーだな?油断させる気か?

 オルトロスの只ならぬ気配を察したのか、馬が騒ぎ始める。流石にハンス村長も起きてきた。ロイは固まっている。


「アカシ、大丈夫かッ!?」


 ハンス村長、寝起きに興奮は健康に悪いですよ?


「ええ、やたら友好的な魔物です。魔物って喋るんですね。」

「…アカシ、人語を操る魔物は間違い無く上位種だ。ワシでは勝てん。アカシが便りだ。」


 あら、お前じゃなくてアカシって名前で呼ばれてるや。え、喋るだけでそんな判断になるの?この世界に来てから、危険察知能力が働かないようで、相手の強さが分からないんだよね。ハンス村長は未だしも、ロイは守らないとね!

 剣を構えて、オルトロスの正面に進む。


『正確には喋ってはおらん。直接脳内に話し掛けておる。ワシ、魔物じゃないよ。精霊じゃよ?アカシよ、忘れたのかの?』


 魔物じゃなくて、精霊らしい。ライオンのようにデカイ顔に太い首。髪は蛇のようだし、2つ頭ってのも頂けない。やっぱり殲滅だな。


『嫌々、待て待て。アカシ、オヌシ、ヤル気じゃないよな?自分の召喚獣を殺す気か?』

「召喚獣?やはり獣じゃ無いか!精霊は獣では無いんだよな!?」


 剣を持つ腕に、力を込めて近付く。


『イヤイヤ、マテと言うておる!ワシが嫌だと言うのに、お主が頑なに召喚獣という呼び方に拘ったのではないか!ワシは悪くなかろうが!!』

「記憶に無いよ。そもそも、姿が邪悪なんですよ。子供が怖がるような生き物は殲滅だ!」


 じりじりとにじり寄る。


『姿か!姿を変えれば良いのじゃな?これならどうじゃッ!!』


 焦りつつ、小型サイズに変わるオルトロス。只、…髪は蛇のままだし、尻尾も蛇です。斬りやすいサイズだなと思い眺め、剣を振り上げる。


『なんじゃ!なんで斬ろうとしておる!人間共、お主らも止めぬか!!』

「いやね、髪が蛇は無いでしょ?それに尻尾。蛇が好きな子供は居ません!」

「…アカシ、僕、蛇大丈夫だよ?斬らないであげて?」


『子供もこう言っておる。問題ないじゃろ?』

「ロイがそう言うんなら…。」

『そうじゃろ、そうじゃろ。アカシ、オヌシ少しアホになったのではないか?』


 カチンときた。記憶が曖昧とはいえ、知らない自分を知る他人。気持ち良いものじゃない。八つ当たりとは分かってるけど…オルトロスの首筋に剣を当てながら語りかける。


「髪と尻尾、それに2つ頭の犬は居ない。どうにかならないのか?」

『ヒッ!!』


 オルトロスの姿が少し筋肉質な感じの子犬になった。


『こ、これでどうじゃ?これなら問題なかろう。』

「ロイ君、どうです?良いですか?」

「にいちゃん、問題ないよ!可愛いよ!オルちゃん、宜しくね!!」

『オルちゃん?子供よ「ロイ君ですよ?」…ロイ殿、オヌシは命の恩人と言える。宜しく頼む。』


「ロイ、寝ますよ?ハンス村長、見張り交代お願いします。オルトロスさんでしたっけ?あなたも見張りですからね?」


 何か言いたげなオルトロスを無視して、ロイとその場を後にした。先にテントに向かう。ロイはオルトロスを気にしながらも、眠気が勝ち、直ぐにテントに入ってくる。






 その日、焚き火の回りには、『ワシ、闇の大精霊…』『アヤツ、何で忘れてしまいおった』『ワシ、来ない方が良かったのかの?』等とマッチョなスキンヘッドに愚痴っている子犬が居たという。

知ってます?オルトロスってケルベロスの弟なんですって。

ギリシア神話で最強の怪物とされるテュポーンとエキドナの子供で兄弟の魔犬なんですって。

只、

ケルベロス(兄)は地獄の番犬、

オルトロス(弟)は牧場の番犬…

え?

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