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とある神兵の珍道記  作者: ペロりん
12/24

11話 ハンス村長は脳筋の極み

太陽拳、別にスキンヘッドにしか使えない技では無いのです。

「アカシ、起きて。出発するよ。」


 ロイの声で起きる。既に出発準備は出来ているそうな。朝食は?と聞いたら、朝食?と返事がきた。昨日は分からなかったが、昼と夜の2食が一般的らしい。残念そうな顔をしていたらしく、顔を洗うと固そうなパンを渡された。…せめて飲み物も頂けませんか?

 食文化の違いにショックを受けつつ、外に出る。ハンス村長は既に御者席でスタンバイしていた。朝日で照らされるスキンヘッド…まるで、クリ○ンか天津○のようだ。ナチュラル太陽拳に軽くダメージを受けた。


「お前が乗れば出発だ。忘れ物は無いか?つっても、お前の所持品は剣だけだよな?よくこれまで生きてこられたもんだ。ガハハ。」


 感心されたのか、呆れられたのかは分からないが、一人で笑っているマッチョスキン。脳筋の笑いのポイントは理解できないかも。

 視界の端で愛想笑いを浮かべているヨゼフ爺さんに、ついついイラッとしてしまう。感情を逆撫でするような顔をしてるんだから、俺に落ち度はないはず。






 荷台に乗り込むと馬車は直ぐに出発する。ヨゼフ爺さんは村の門を開けてくれて、見えなくなるまで手を振り、見送ってくれる。木の槍を持ってるから、そのまま門番をするのかもしれない。早朝から元気だな。

 ハンス村長には御者が出来ない事を伝えると、かなり呆れられた。ずっと御者かよ…とブツブツ言っていたが、ロイが御者をすると伝えると、暫く悩んだ顔をしていたが、俺が横に座ることを条件に最終的には許可する。脳筋も孫のためなら、考える機能を使えるようだ。御者が出来ないことには、何か情けない気持ちになったので、馬に慣れようと心に誓う。




 荷台で、ロイとジャンケンやあっち向いてホイをして遊んだ。ハンス村長にも凄く感心されたが、この世界には娯楽が少ないらしい。ジャンケンのように、簡単な物事を決めるための方法は無いか聞いたら、男なら拳だろ?と真顔で答えられた。ヨール村には脳筋が溢れているようだ。確かにマッチョ擬きばかりではあったが、どこの世紀末覇者なのだろうか。

 オセロとか将棋、チェスを異世界ものの小説でよく流行らせるが、複雑じゃない玩具は確かにありだ。村に戻ったら試作しよう。パソコンがあれば、自作ゲームも作る自信はあるが、パソコンが無いと何にも出来ない。悲しい限りだ。


 大体2時間くらいのペースだろうか、馬に水や飼い葉を与えるために休憩する。予め想像はしていたが、想像以上に尻が痛い。サスペンション何てないし、馬も荷車を牽くのにかなりな力が要るに違いない。今後頻繁に馬車に乗る機会があるのなら、是が非でも改善すると誓う。玩具とは違い切実だ。

 時間は日の傾き具合で判断するらしい。時計が無くて不便ではあるが、時間に終われる事がないから、これはこれで幸せなのかもしれない。


 3回目の休憩で昼食を取る。パンに干し肉だ。顔は濡れてないが、力が出る気がしない。この世界でも朝昼晩の3回、御飯を食べるのだ。朝晩の2回とかじゃなくて良かったよ。

 昼食中、狼の魔物が3匹寄ってきたが、ハンス村長の矢で瞬殺だった。物凄い勢いで、矢を放っていたが、弓と矢に魔力を流して強化していたらしい。感嘆の声を上げたら、胡散臭い目で見られた。魔法や魔術が一般的な世界、早く慣れなければ。

 ロイは馬を落ち着かせようとしていたが、馬は騒ぎすらしなかった。脳筋の馬も脳筋なのかもしれない。揺るぎない信頼関係を見た気がする。

 狼の魔物、ウルフって名称で、何処にでも居るらしい。食事後にハンス村長が剥ぎ取りをしていたが、血塗れの姿は殺人鬼を彷彿とさせた。心臓近くの魔石を取ろうとするとどうやっても血塗れは避けられないそうだ。剥ぎ取り…やれる気がしない。やる、やらないは保留だ。ちなみに、ロイはハンス村長より上手に1体の剥ぎ取りを終えていた。ほとんど返り血も浴びてはいない。手先が器用なだけでは無いのだろう。将来が楽しみだ。心の中で、師匠と呼んだのは内緒だ。マッチョスキンよ、師匠を見倣いたまえ。




 昼食後、ロイと御者席に座る。ロイが手綱を牽きつつ、やり方を教えてくれる。休憩に入るまでに、御者をマスターした。ロイの教え方も上手ではあったが、馬の気持ちが手に取るように分かるようになった。手足のように馬を走らせることまで出来るようになった。ロイは素直に褒めてくれたが、荷台のマッチョスキンからは嘘つき呼ばわりされた。本当に馬には慣れていなかったから、心外である。

 道中現れたウルフは、やはりハンス村長により瞬殺された。物理法則を無視するような軌道を描く矢。全頭眉間に刺さっている。ホーミング機能付きとしか思えない。

 休憩中にハンス村長に弓の射方のコツを聞いた。『ギュッ』と握って、『グッ』と引いて、『バッ』っと射れば当たる。と得意気に喋る。魔力の込め方が分からなかったから再度聞いた。『ギュッ』って握るときに、『ンンッ』と魔力を込める。『バッ』と離すときに『当たれ!』と追加の魔力を込める。これで大体当たる。…当たる気がしない。天才肌の脳筋は教師に向かないと確信した瞬間であった。


 ハンス村長、冒険者時代は斥候役が得意で、パーティーを先行して進行方向の確認をするなど、単独行動が多かったそうな。弱い魔物を先に駆逐するために練習していたら、今は一番弓が得意になったそうだ。接近戦も得意で、得物は選ばないが、最近は両手に短剣を持つのが好きらしい。気配察知も早いし、戦闘に関しては万能感が半端ない。脳筋の極み、脳筋の最終形態がハンスなのかもしれない。




 夕食(パンに干し肉、温めたスープ)を食べてから、夜営準備に掛かる。皆で楽しくグラシルの街を話題に会話をした。この時、眠る前にあんな大イベントが待っているとは、夢にも思っては居なかった。



リアル脳筋、友人に居ますが、プロテインを水筒3つは持ち歩いています。後、大量のカロリーメイトも持ち歩いています。

エネルギーの消耗が激しいのでしょうね。

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