10話 ハンス村長とヨゼフ爺さんの関係
馬車移動、何日も乗ってると確実にお尻が割れます。
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拙い文章ですが、読んで貰えるだけで幸せになれます( ´∀`)
「グラシルの街か。ワシも用事があるから、明日にでも出発するか。よし、アカシ帰るぞ!」
まだ広場で飲んでいたハンス村長だったが、明日早くから出発すると即決した。脳筋は即決しないと死んでしまうのだろうか?
馬車や夜営道具は、ハンス村長が持っているらしい。いつの間にか、滞在先はハンス村長の家に決まっていた。ロイの恩人を饗したいという建前だったが、本音が少し違うところにあるのは、間違いない。黒のローブを着た旅人…俺が村長なら、放置は出来ない。気持ちは分かるが、おっさんと二人で過ごすことを考えると…滞在期間は短めになるかもしれない。
「じ、じいちゃん!僕もグラシルに行きたい!!」
遠くを眺めていたら、ロイがハンス村長に熱く訴えかけていた。
「ロイをか…。よし、一緒に行くか!アンナのことは任せておけ!なぁに、ワシに掛かれば大丈夫だ。」
「じいちゃん、ありがとう!!」
思いの外、あっさりと許可された。助け船の必要もなかった。
ロイには、何をするにしても、少しづつ慣らしていくのが大事と教えている。千里の道も1歩1歩が大事なのだ。安請け合いしたハンス村長に向かってスリッパを振り上げたアンナ が脳裏に浮かんだが、関わらないようにと、意識の外に追いやった。
「あと、ミノタウロスの素材だが、ワシの魔法袋に入れてあるからな。」
魔法袋、保存が出来ない四次元ポケッ○な感じらしい。意志のない生物、例えば昆虫や植物を入れることも出来る。人は不可。但し、死んでいたり、魔導具などで意志を奪った人等は入れることは可能。やれば、犯罪者として捕まるが。
魔導具は魔石を核にして、魔力が切れるまで使える。魔石に魔力は補充できる。充電式電池をイメージした。
魔石は魔獣が持つ。獣との違いはその一点だけらしい。
広場の中央に噴水があるが、これも魔導具になっていて、夜には土台から光を放つらしい。街灯の役割も兼ねているのだろう。この街灯、結構な魔力が必要らしく、魔力充填出来るのは、ハンス村長、リック、アンナに…ヨゼフ爺さんの四人だけらしい。ヨゼフ爺さん、間抜けな所しか見ていないから、正直嘗めてた。ドMなだけではなく、立派な大人物なのかもしれない。接し方を改めよう。
ハンスに連れられて、村の門から一番離れた小高い丘に建つ屋敷に来た。平屋だが、かなり立派だ。入ると広めな空間、扉近くには弓矢や斧、槍やツルハシ等が置いてある。リビングも兼ねているのだろう、木製のデカイ机に8脚の椅子が並んでいる。村長だから、人が訪ねてくるのだろう。立派な暖炉を見て、冬は寒そうだなとげんなりした。
ちなみに、ロイは隣の小さな一軒家に入っていった。リック、アンナ、ロイの3人が住んでいるそうだ。
客間らしきベッドが2つある部屋に案内された。風呂について尋ねたが、予想はしていたがやはり…無い。布をお湯に浸け濡らしてから体を拭くのだ。日本人には辛すぎるが、致し方ない。グラシルの街には公共の湯船があるらしいが、汚そうなので行くかは保留だ。
布とお湯をお願いしたら、持って行かせるとハンス村長は足早に消える。この時は、隣に住むアンナにでもお願いするのかな?と思っていた。実際に来たのは…『コンコン』
「お湯、ここに置いときますだ。」
ヨゼフ爺さんかーい!
「食事ももう直ぐ出来ますだ。」
食事もあんたが作るんかい!!駄目だ。疑問は早く解決しなきゃ!鉄は熱いうちに打て、だ。
「ヨゼフさんがお手伝いしてるんですか?」
「んだ。住み込みで働いてるだ。」
まさかの一つ屋根の下だった。ハンスとヨゼフ…うん、想像したら駄目だ。完全に負けるやつだ。
ヨゼフ爺さんは食事の準備で戻る。
体を拭いてから、リビングに行くとハンス村長が既に座っていた。ロイも来ていた。
アンナの許可は無事取れた、とハンス村長は言う。ロイは気不味そうにしている。スキンヘッドのスリッパ跡が痛々しいのが…ね。
食事は穀物に豆類、野菜を煮たごった煮だった。程よい塩加減で胃に優しい感じだ。昼がミノタウロスの肉ばかりだったから、素直に嬉しい。ヨゼフ爺さん、やるな。
ヨゼフ爺さんとハンス村長の関係は、元々は宮廷魔術師と冒険者で、オーガの集団討伐の時に命を救われてからの関係らしい。命を救われた方がハンス村長らしい。…え?
ヨゼフ爺さん、実はかなりな手練れらしい。そう言えば、魔力も高いんだっけ。ハンス村長が引退して、跡を次ぐために村に戻る際、宮廷内の権力争いに嫌気がさしていたヨゼフ爺さんを誘ったらしい。ヨゼフ爺さん…油断を誘う仮の姿、パネエっす。
ヨゼフ爺さんはハンスの代わりに村長代理もやれる。門番をしているのも、不審者の第一対応を兼ねていて、魔術で拘束したりするのだそうだ。俺の場合、明らかに不審者に見えたが、ミノタウロスを楽々引き摺って来ているし、ロイが傍らで楽しそうにしているから判断を先送りしたのだそうだ。ドラゴンゾンビのブレスも効かないこの体…魔術が効くのか、近い内に検証しよう。
ロイは爺さん達の思出話の途中で眠ってしまった。明日も早いし、アンナの御機嫌が斜めだから、泊まっていくらしい。アンナの説得、どう考えても大丈夫だった気がしない。
ハンス村長の奥さんは、アンナが幼い頃に流行病で亡くなったそうだ。しんみりしてしまうので、直ぐに話題を変えたので、それ以上は聞いていない。
ロイを抱えて客間に戻る。ロイを一方のベッドに寝かせ、自分もベッドで横になる。
自分は何者でどこへ向かうのか、目を閉じ考える。久し振りにベッドで寝たお陰か、あっさりと夢路を辿るのであった。
ヨゼフ爺さん、万能説。