有能は歓迎します
病院に侵入した真っ黒黒助ことオルフェウス。
「何でもするから命だけは! 命だけは!」
とキャラを忘れるほどに大粒の涙を流し出したのでさすがに可哀想になった。なので……。
「先生! 大変です!」
「どうした?」
「オルフェウスが私の仕事全部やってしまうんです!」
命を取らない変わりに佐々木と同じように雑用をする事を条件にしばらく病院で働かせている。
しかも……。
「先生、大和が食堂に置き忘れていた書類を濡らしたから新しく書き換えておいた」
「おう、ありがと」
とか
「先生、予備のシーツ類が薬品棚の隣の倉庫から出てきた。一応洗濯したぞ」
「あ、ありがと……」
あの中二病キャラを忘れているがすごくまともだ。ちゃんと仕事できている。佐々木だったら……。
『先生! 書類に水がかかったので火で乾かしたら燃えました!』
『火じゃなくてドライヤー使え! 後何の書類だ?!』
『分かりません!』
とか
『先生! 洗濯物が大変です!』
『どうした?!』
『書類ごと洗濯してました!』
『バカやろう!』
……うん。
「佐々木」
「何ですか?」
「お前はもう少し頑張れ」
「ん?」
オルフェウスは有能で良かった。
―――――――――――――――
事件が終息した夜の11時前、内科診察室とプレートが掛かっている自室にて
「名前はオルフェウス、名字は……無しでいいか」
今更オルフェウスのカルテを書いている。
「性別は男、年齢は……13歳ぐらい? 佐々木と一緒ぐらいだろ」
まあ、後で本人に年齢聞けば良いだけだしな。
「有能な雑用係……か」
適当に描いたオルフェウス似顔絵を見る。写真を撮る機械は無い為似顔絵を描くしかカルテ用の顔写真を貼ることができないが中々そっくりだと我ながら思う。
コンコン
戸を叩く音が不意にした。
「佐々木か?」
「俺だ先生」
オルフェウスだ。
「相談したい事がある」
「え?」