来訪者
「で」
「はい」
「佐々木」
「はい」
「こいつは誰だ?」
―――――――――――――――――――
数分前
食堂に隣接する厨房から白い娘がそれを持って出てきた。
「今日はスペシャルディナーですよ! 先生!」
少し錆びれたテーブルに置かれたのは白くて丸い苺が沢山のったケーキ。
「佐々木」
「はい」
属性過剰娘は満面の笑みで手にケーキ用ナイフを持っている。
「俺の目が疲れているのか今の目の前にワンホールのケーキが置いて在るんだが気のせいか?」
「いいえ、気のせいじゃないです。本当です」
こいつ「え、何言ってるのこの人」みたいな表情しやがって
「夕飯なら一昨日の和食のようなものは出せないのか?」
「冷蔵庫の中にあるのは腐った魚だけでしたよ。先生が夜に食べる食べるって先週くらいから言ってたやつです。後ケーキの材料だけです」
あ、忘れてた。
「厨房の残りの缶詰めも乾パンだけだったのでケーキにしました」
そう言って佐々木はケーキを切り分け始める。
「買い物しようとは思わなかったのか?」
「ここ数日雨だったので出掛けるのがゆーうつだったんです」
「それはなんとなく分かるけどさ……せめて乾パンにしな……」
次の瞬間
ガラガッシャン!
食堂の真下から物音がした。
「下から……入り口の方か?」
野盗、殺人鬼といった犯罪者は困る。何故なら俺の物理面での戦闘力が死んでいるからな。てか何で佐々木は以外と冷静なんだ。興奮して見に行こうとしだそうだが……
「バリゲードは役に立ちませんね」
ん?
「おい、お前いつバリゲードを設置した」
「昨日です。朝からしてました」
なるほど
「買い物行かなかったのは実は憂鬱のせいじゃねーな」
ガッシャーン!
「バレちゃしかたねぇ! 買い物行くのめんどくさくて変わりにバリゲード作ってました!」
キラーンと効果音がつきそうなポーズを決めるアルビノ娘。
「何でそうなる」
深く考えるのはよそう……とりあえず。
「佐々木」
「はい」
「手に持っているケーキ用ナイフは置け」
「武器がないと戦えませんよ」
「相手が悪党だったら危ないだろ、野性動物なら無意味だしな」
「いざというときはどうするんですか?」
少し怖いのか? まあ、大丈夫だろ。
「なんとかなる」
人間相手で物理以外なら負けるはずないからな。
――――――――――――――――
物音がする方へなるべく静かに向かう
「相変わらずボロボロですねこの病院、雨漏りとカビがすごいです」
「廃墟になって50年だからな」
戦後に廃病院になった割に2階以上は綺麗なんだよな。食堂と厨房は清掃したからまだ綺麗だけど。
「先生」
佐々木の足が止まる。
「どうした」
なんとなく言いそうなことは分かっている。
「「武器を持っている敵だったらどうしますか?」だろ?」
驚いた表情で音無の拍手をする佐々木。
「何で分かったんですか?」
「何年の付き合いだと」
「まだ5年ですよ」
「人間的には長いほうだろ」
ガッシャーン
音が近い。
「あそこか」
壊れかけた薬棚の裏側に人の気配がする。
「飛び蹴りで倒しますか?」
「死ぬだろ」
パリッ
と振り向いた瞬間足元のガラスを踏んでしまった。ヤバイ……。
「そこに居るのは誰だ?!」
気づかれた。子供? ……正確には少年の声か?
「殺られる前に殺れ精神!」
「あ、おい、待て佐々木!」
気づかれた瞬間に佐々木は勢いよく棚を蹴るが棚は倒れなかった。
「我が名はオッグア?!」
ガラガッシャン
その代わりに棚の上にあった箱が落ちてきた。
「やりましたか?」
「どうだろうな」
とりあえず相手を見ないと分からない。
「運が無い奴だな……」
棚の裏へ行くとそこに
黒髪に赤いメッシュがワンライン、黒いロングコートに底上げブーツそして黒手袋に十字架のついた鎖を手に持っていた。
「で」
「はい」
「佐々木」
「はい」
「こいつは誰だ?」
「私が知るわけないじゃないですか」
第二の属性過剰な少年が倒れていた。