病院の人々
その廃病院は遥彼方の街の外れというかまあとにかく果てにある。そんなところに俺は居る。というより俺達は住んで居る。
「先生! 先生!」
大声で俺を呼ぶ少女の声が聞こえる。
「先生! 先生! 朝ですよー! 私は先生が悪魔だろうが吸血鬼だろうがたたき起こしてやりますよ!」
反応するとめんどくさいタイプの人間はたくさん居るがこいつは特に……
「なんと?! 大和ちゃんのスペシャルなモーニングコールで起きないと言うのですか?! 起きてください! 起きてください!」
めんどくさい
後、寝てるヒトの体を激しく揺さぶるなよ変なとこに痣ができるだろ。
「これでも起きませんか……仕方ないですね。朝ごはんは1人で食べますか」
そうしろそうしろ
「せっかく影虫伝統の和食を作ったのに」
「それは食べる」
ベッドから体を起こすと目の前に曇り一つない白髪に鮮血色の赤い瞳、右目に黒眼帯、ピンクのウサギとオレンジ色の菱形の刺繍が入った個性を強調しすぎたナース服といったまあ……属性過剰すぎてどこからツッコミを入れたら良いか分からない助手の佐々木大和が現れた。
「おはようございます先生」
「嗚呼、おはよう佐々木」
ちなみに椎茸目で巨乳だ。
「ちなみに現在時刻は朝の6時前です!」
「おいまて、今日は日曜日だろ」
「はい! 早起きは三文の徳! あるいは馬の耳に念仏ですよ!」
「後半使い方間違っているからな」
「まあそれは置いといて……朝ごはん出来てますよ」
まあ、こいつに一々怒っていたら切りがない……もういいや。
「あ、そうそう先生」
「どうした?」
何だ? 嫌な気配がする。
「先生が食堂の机に置き忘れていたお気に入りのマグカップなんですが……」
佐々木……お前まさか
「うっかり壊しちゃいました。てへっ⭐️」
ぺちん
次の瞬間佐々木の眉間にデコピンしていた。
「てへっ⭐️ じゃないだろ! てへっ⭐️ じゃ!」
「痛い! 暴力反対です! セクハラです! パワハラです!」
「じゃあお前は器物破損罪だ!」
「良いじゃないですか! まだ25回目ですよ!」
「まだってなんだ! まだって!」
何故朝から元気に喧嘩できるのか不思議だがこれが日常だ。
そして
「お前はどうしていつもいつも面倒事を起こすんだ!」
これは
「それは私の台詞ですよ!」
医者と
「大体お前はもう少し」
患者の
「落ち着いて行動しろ!」
物語だ。