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第?話:???

ちょっとした小話回。

小話回の小話回という少々頭痛が痛いような感じではありますが、いつも通りに書いてあったらこんなことに………

 夜の帳が落ちた街を黒き神父はゆっくりと歩いていた。

 まるで時間が止まっているかのように待ち行く人の歩みは彼と比べて遥かに遅い。彼にとってはこのモノクロの世界は慣れ親しんだ日常の風景であるそれは、他の生き物からすれば非現実的な物であるだろう。


「まったく………まさか彼がこの世界に生れ落ちていたとは思いもしませんでしたよ」

 ()()()()()で彼はそう嘯く。(クロウ)のような普通ではない者にしか認知されず、ほぼ自らだけの世界と言っても過言ではないその空間で、長らく探していた物が見つかった喜びに浸っていた彼に、不意に声が掛けられる。




「貴方のような邪なものに見つからないようにするためですよ」

「おっと、見つかってしまいましたか。こればしまったしまった」

 振り返るとそこには彼の胸元まで位の身長しかない少女が頬を振らませて()()()()()()


「邪とはひどい言われ様ですね。私はただの傍観者で暇を持て余した遊び人なだけだというのに」

「邪の神と呼ばれているくせに何がひどい言われ様ですか。貴方の暇つぶしでどれだけの者たちが運命を狂わせてきたとーーー」

「運命の女神である貴女には理解できないでしょうが、とある悪魔退治人も『人生は刺激がある方がたのしい』と言ってますし、私が遊んだ者たちの多くはその後の人生を有意義に過ごせているじゃないですか。結果的に良い影響が出ているんだから多少遊んでもいいと思うんですけどね」

「キィー!私の前でなんてことを!?」

 空中で地団太を踏んでいる彼女は、「結果論じゃないですか!」と体で叫んでいたのだが、不意にその表情を曇らせる。


「………ですが、少なくとも彼は不幸な人生を送っていましたよ?貴方が手塩に掛けて遊びぬいた彼は」

 絞り出すように、そしてどこか寂しそうに彼女はそう言葉を紡ぐ。


「貴方は………まったくもって愚かですね。彼の過去を知って同情心でも湧いたのですか?いくら神だからと言っても、そんな調子だといずれ堕ちますよ。貴女」

「すでに深淵より深いところまで堕ちている貴方にだけは言われたくない言葉です」

「これは痛いところを………っと?あぁ、やはり彼は愉快や星の元に生まれたようですね。まったくもって愉快愉快」

 クツクツと笑っていた神父の姿をしたモノは、ふと視線を先ほどまでいた屋敷へと向けてその笑みを深める。


「貴方………また良からぬことを考えているのではないでしょうね。もしや、この世界でも彼を弄ぶのですか?」

「いやいや、今回が彼に対する悪戯の最後ですよ。もとより彼が死んでしまわなくとも今回で最後にしようと思っていたのですが………今の彼は向こうよりも生き生きしていましたし、あちらに送り込んだ時だって予想外の行動をしてくれましたしね。今の彼は見ているだけでも十分楽しめそうです」

「どうも嘘くさいですね」

「心外ですね。では………私の千ある貌にでも誓いましょうか?私は彼から手を引き、貴女と同じ立場に移るとでも」

「それが、その言葉が、意味するものを分かって言っているのですか?それの意味する重さはーーー」

 言葉を失い、口をパクパクとさせている少女(アスタルテ)に背を向けつつ、神父は言葉を続ける。


「私もね、そろそろ役目を終える頃だと思っていたんですよ。かの者との契りもこれで果たせたでしょうし………あぁ独り言ですのでお気になさらず」

「………………」

「それと、彼のペット…召喚獣でしたか?彼らには面白いものが憑いているようなので貴女もあまり手出ししないでくださいね。私の楽しみが減ってしまいますので」

 胎動する陣の中で笑みを深めた男は、悍ましい気配を漂わせて息を吐き落す。


 重く淀んだ空気が男の方から漂い、陣が胎動と共に大きさを増していく。

 それと同時に男の体が蠢き、内側から変形を始める。



「貴方の力はこの世界でも変わりません。世界の理を崩すようなことは抱かぬように願っております」

 人としての形から大きく外れつつある男だった()にアスタルテは不承不承と言ったふうに裾を微かに持ち上げて淑女の礼をする。


「エエ、分カッテオリマストモ。デハ、私ハコレデ」

 静かな声色のはずなのにまるで咆哮しているかのように空気が震え、その中心にいるソレは貌のない顔を笑ったかのように小さく歪めた。

 幾つもの触手や鉤爪が蠢くその体で、見た目がまともだったなら見惚れてしてしまうほどの美しい(はずの)一礼をすると異形の神は赤黒い陣と共に消えていった。






 異形の神が姿を消すとともに世界に色が戻り、人の動きに生気が戻る。

 人に見られる前に世界への干渉を止めたアスタルテは、家々の屋根より少し高いところら辺をゆったりと漂いながら先ほどの言葉を思い出していた。


『かの者………それに彼の召喚獣に憑いているもの?なんでアイツは意味深な事ばっか言い残してくの!?気になるけど、運命を覗いたらなんか負けた気がするし………あーもー!!!やっぱりアイツ嫌い!』

 ジタバタと空中で手足をばたつかせて声を荒げるアスタルテは、そのまましばらくの間空中で膝を抱えて不貞腐れていたが、「あっ!そういえばまだ人界でした!危ない危ない」と呟いてその存在を霞のごとく掻き消すのだった。

お気付きの方がいらっしゃるように、この世界にもCoCが混じり込んでいます。

おそらく冒涜的な彼ら以外にも自然法則に反したモノたちも出てくるかも知れませんね

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