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第26話:学園までの道のり①

「ほえ〜、あのオオカミがジンてっ子なんすか。………それにしても、クロウっちの召喚獣は色々と凄いっすね。1匹1匹の強さもあるっすけど、あの連携にはそんじょそこらの冒険者じゃ、太刀打ちできないっすね」

馬車の御者台で手綱を持ちながら、そう呟くシリル。


「そうなんですよ!クロウにはもちろんだけど、ジン1匹にも俺たちじゃ勝てないんですよ」

その後ろ、馬車の中から身を乗り出しながら愚痴をこぼすカル。その横で、ククルも頷いていた。


「ほえ〜…あ、また1匹倒されましたね〜」

[ファイヤーボール]を待機状態で、いつでも撃てるように準備しながら、フィヤがのほほんと言う。


その言葉で、馬車に乗って雑談していたカル達が外を見る。







そこには、クロウを乗せながら草原を縦横無尽に駆け回り、偶然にも遭遇してしまった可哀想なゴブリンの群れを全て一撃で葬り去っているジンと、その周囲で偶然にも遭遇してしまった不幸なニワトリ型肉食モンスターのコケッコウの十数匹の群れを全ての首を飛ばして駆逐しているイザナミとツクモ。そして、その2ペアを援護(空中爆撃)しながら、先の探索をしているサクヤとフレイヤがいた。



グギャァァァアアア………………………

コケェェェエエエ…………………………


「あー、可哀想なゴブリンとコケッコウ………。今夜は鶏肉だな!ククル、剥ぎ取りでも手伝いに行くか?」

「そうね、見てるだけだと暇だし、行きましょ」

そう言うと、カルとククルは馬車から飛び降りる。



「ちょ!2人とも危ないっすよ!」

「!?危ないよ!!」

手綱を握っているシリルと、魔法を待機状態にしているフィヤは、突如として飛び出したカルとククルに驚き声を出したが、 その時すでにカルとククルは空中にいる。




しかし、シリルとフィヤが予想したことは起こらない。


「「風よ弾けろ![エアロバースト]!」」

地面に着く瞬間、カルとククルが同時に魔法を放つ。

風属性・第8階の攻撃魔法[エアロバースト]は、本来、圧縮した空気を解き放つことにより爆発的に突風を生じさせると言うものだが、込める魔力によって爆発の規模を変化させることができるというところに着目して、より画期的な使い方ができないかとクロウが考え編み出したのが、この空気のクッションとしての使い方だ。

詠唱を短く省略して、かつ最小限の魔力て[エアロバースト]を行う。すると、走っている馬車から飛び降りた時の勢い程度なら簡単に相殺できるのだ。


こうして、地面に手を着くことなく着地したカルとククルは、腰から小型のよく切れそうなナイフを取り出して、そこら中に転がっている首なしのコケッコウを剥ぎ取りにかかった。

首が飛んでいるため、すでに血抜きが終わっていたので、[ブースト]を使って超高速で解体を始める。


可哀想ななコケッコウは、無残にも一瞬にして羽根をすべて抜き取られ、内臓を撤去され、皮すらも毟り取られてしまう。そうして、出来上がった10個前後の鶏肉は、カルがバックから取り出した縄で括り、皮と肉で分けられる。括られた鶏肉は、馬車に戻ったカルとククルが、馬車の外に吊るし、剥がれた皮は、一枚一枚広げて乾燥させらていた。1番最初に引っこ抜かれた羽根は、麻袋に入れてある。

もちろん、撤去した内臓は、地面に掘った穴に入れて埋めてある。





「………ねぇ、シリル」

「………何でしょうか、フィヤっち」

素早過ぎる解体作業から戻ったカルとククルを横目で見ながら、フィヤがボソリと呟く。








「私たちって、いらなくない?」








「「「「……………………………………」」」」

短く簡潔に全ての意味が纏められたその言葉は、馬車の前で武器に手を翳しながら歩いているウォーレスとセント、御者台にいるシリル、そしてフィヤ自身にも悲しく突き刺さったのであった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ジン!ストップ、ストップ!」

『え?あ、分かった』

我を忘れたようにゴブリンを狩り尽くしたジンに、流石にクロウからストップが出る。


「よいしょっと。みんなー、集合ー!」

ジンから降りたクロウは、未だに獲物を探しているイザナミ達を呼び集めた。







瞬く間に集合した召喚獣達は、綺麗に整列していて、とても愛くるしいのだが………周囲の生ゴミ(首のないゴブリン・身体が2つに別れているゴブリン・四肢のうちいくつか無くなっているゴブリン………,etc)のせいで何とも言えない絵面になってしまっている。


「皆んなちょっとはしゃぎ過ぎじゃない?いや、初めての旅だからワクワクするのは分かる。でも、コレはちょっとやり過ぎだと思うんだけど」

クロウはため息を吐きつつ、自分達の周囲に転がっているゴブリンだった物を見てそう言う。


「まぁ、今日は良いけど明日もこんな感じになるんだったら、皆んな帰還させてボクだけでするからね」

クロウがそう言うと、見る見るうちに召喚獣達の様子が変化していき、あわあわし始めた、


「それが嫌なら、明日からちゃんとする!いいね?」

『『『『『はい!ご主人様!』』』』』

こんな時にだけ“様”をつけるのはどうかと思うが………まぁ、反省したと考えよう。


「よし!じゃあ、このゴブリン擬きの胴体だけでいいから、全部集めて。バラして魔石とるから。あ、あとツクモは、ちょっと深めの穴掘ってね」

クロウがそう指示を出すと、瞬く間にゴブリンの胴体部が一箇所に集められて、小さな山を作って行く。それ以外はツクモの掘った穴に入れられて行く。


「んじゃ、始めますか………こいつでいいか…[ブースト]!」

一瞬足首に装備しているシンゲツを使おうかと迷ったが、初めてがゴブリンというのもなんだか申し訳ない気がしたので、投げナイフ用に作り置きしておいたナイフを胸元から取り出して、剥ぎ取りにかかる。


右手にナイフを持って、ゴブリンの胸元を10センチほど的確に切り開いていく。そして切り開いたゴブリンは、ジンの方へ投げ捨てる。

『ちょっと、ご主人。もうちょっと優しく投げてくださいよ』

とジンの方から聞こえた気がするが、聞こえないふりをしてどんどん投げる。


『も〜!』

ジンはそう不満そうに言うと、ゴブリンの切り開らかれた胸に手をつっこんで爪を使って器用に魔石を取り出す。

ゴブリンの魔石は、魔物の中でも最下層の代物だが、簡単な魔道具に使われるため、安いが買い取ってもらえるだろうから、クロウは森で狩った魔物の物を含めて色々と集めていたため、今では魔石専用の[ストレージ]の空間を作っている始末だ。まぁ、5歳くらいから魔物の蔓延る森に入り浸りだったからそれも仕方ないのだろうが………と言うか、魔石集めが趣味の領域に入っていってしまっている気が?









「ふぃ〜」『終わった〜』

それから少し経ち、途中から魔石取りに参加したクロウとジンが全てのゴブリンから魔石を抜き取り終わったが、その手(クロウはフィンガーレス付き)はゴブリンの緑色の血縁で汚れている。


「うえ〜」『うえ〜』

クロウとジンは、自らの手を突き出して目を背けているが、


『ニャ![ウォーターボール]』

そこにイザナミが、バスケットボール大の大きさの水を出してくれる。


「『ありがとー」』

クロウとジンがその水玉に手を突っ込むと、イザナミが[アクアコントロール]で水玉を回転させて洗ってくれた。


クロウとジンの手が綺麗になると、イザナミが水玉を消してくれ、その次にビチョビチョの手にフレイヤが[エアロコントロール]で風を送ってくれる。

しばらくすると、フィンガーレスまで綺麗に乾ききる。


「さてと…綺麗になったし、馬車追いかけよっか?」

そう言ってあたりを見渡して見るも………そこには、馬車の影どころか人っ子一人いなかった。


「あちゃ………案外動くの速いね。仕方ないか…みんな[帰還(リターン)]だ」


==========================

召喚魔法 [帰還(リターン)

召喚の一種であるこの魔法は、自らの召喚陣を記した 有機物・無機物をある特定した陣の場所に召喚する。つまり、帰還させるという魔法である。


この魔法の凄い、と言うよりも便利なところは、たとえこの世界で無くとも陣のある所ならどこにでも帰還させることができると言うこと。それ即ち、クロウの「空間創造(エリアクリエイト)]で創り出した異空間にも“陣”さえあれば、帰還できると言う所だ。


==========================


『『『『『はーい』』』』』

それぞれの召喚獣達が足元に展開された陣に吸い込まれるように、帰還されていく。その時、ジンが『後で呼んでね!』と言い残していった。




「わかってるってばよっと………さてと、何処かな?」

馬車とはぐれてしまったクロウ!

心配するべきはクロウなのか、それとも馬車の方なのか…



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