第20話:魔物の子供たち
「ジンじゃないか!」
クロウは飛び出してきた動物たちの中に自らの召喚獣を見つけ驚きの声を上げる。
『ご主人!その人は殺しちゃダメッ!』
飛び出してきたジンは、同じように飛び出してきた動物たちと共に赤熊を守るかのように、赤熊を囲む。
赤熊の周りを囲む動物たちのは、どれらも強い警戒心を表していた。
それを見てクロウは、剣を左右に振ってクルッと回し鞘へしまう。
剣を鞘へしまうと、動物たちの警戒心が少し減ったのがわかった。
「はぁ…、別にいいけど理由くらい聞かせてよね。[フルヒール]!」
剣を[ストレージ]へ仕舞い、ため息をつきつつ赤熊の傷を癒す。
動物たちは赤熊の傷が癒えたのを見て、驚くような喜ぶような様子を見せていた。
傷が癒え体力か戻り始めたのか、赤熊はのっそりと立ち上がった。
『力を持つ少年よ、我の傷を癒してくれたこと、感謝する』
未だ体力は回復しきっていないだろうにも、赤熊はほの威厳に満ちた様子を見せている。
「別に楽しかったからいいけど………というか、何であんたらは喋れんの?」
『我は魔王種、それも自らの力で魔王となった者。言葉を魔力を込めるくらいのことなど容易いことなのだよ。………そのようなことよりも、我と交えて楽しいで済むとわな………少年よ、汝はさらなる力を隠しているだろう?』
少々不貞腐れたような様子をする赤熊。その瞳は、クロウの左手につけている漆黒のフィンガーレスを鋭く睨む。
「ありゃりゃ、バレてたか」
少し戯けるように肩をすくめるとクロウは、右手に付けているフィンガーレスをトントンッと軽く2回叩く。すると、フィンガーレスから魔法陣が浮かび上がり、そのまま空中で砕け散る。
すると、先ほどの戦いの中でも1ミリすらズレていなかったフィンガーレスがするりと外れ、クロウのきめ細やかな肌が顕となる。
睨みつけているような赤熊と違い、首を傾げているジンと動物たちにニヤッと、まるで悪戯をしている子供のような笑みを向け、まだフィンガーレスをつけている左手の親指を口元へ動す。そのまま、八重歯で少し噛み切り、浮かび上がった血を右手の甲へ落とす。
指から落ちる最中、空中で月の光を受けルビーのように光ったクロウの血は、右手の甲へ落ちた瞬間、色を変え、黒曜石のように黒く染まりながら広がる。
『ご、ご主人…それの魔法陣は?』
「これはね、封印魔法だよ」
『ほう、封印魔法とな………だが、我はそのような術式は知らんな。汝は何処でその術式を?』
それもそうだろう。
なぜなら、クロウの左手にある魔法陣には、幾重にも重った模様と、それらに重なる小さな円があり、その円の中に火・水・風・地を象った紋様が浮かんでいる。そして、それらを囲むように二重の円があり、その中央部には、“日本語”で【封】の文字が描かれていた。
「これを知ってたらビックリだよ。この術式、僕がお父様…あぁ、この森のある領土の領主って言っても小さな村だけどね。まぁ。その人の書斎にあった魔法書とこと村にいる元冒険者の女の人から借りた魔法書に書いてあった封印魔法を解析して僕なりに魔改造した者だからね」
『ほ、ほう既定の魔術式を改造するとわな。汝というものは………』
何か変な物を見るような目でクロウを見る赤熊と、
『さすがご主人です!!!』
と言ってキラキラとした瞳でクロウを見つめる区ジン。
「まぁ、ちょっとだけ難しい術式なだけだから、そんなに凄いことじゃないんだけどね」
ジンに褒められたことが嬉しいのか、ほんの少し顔を赤らめながら頭を書く
『ほう、ではその術式はどんなものなのだ?』
未だ呆れたようにクロウを見る赤熊だが、クロウの作った術式には興味があるようだ
「作ったって、そんなに大それたものじゃ無いと思うけど………まぁ、簡単に言うと火・水・風・地の【エレメント】をほとんど使えなくするってくらいかな」
『………お主は、なんだ…その……よく言う阿呆なのか?』
「阿呆とはなんだ、阿呆とは!言っておくけど、さっきの戦いも封印したままでやってたんだぞ?言っただろう、“ほとんど”だって。全て封印とほとんど封印では、全く意味が違うんだよ」
ガックリと項垂れ、溜息をつく赤熊にクロウは、頬を膨らませながら怒る。
だが、その言葉にジンと動物たちは目を見開く。中には見開いているのかわかりにくいやつもいたが………
『そ、そうだな。汝はその状態で我を圧倒したと………。少し自信を無くしてしまうな、これは。………ま、まぁ良い。我の目的は果たせたのでな』
「目的?」
『ああ、我の目的はこの者の主人である汝の実力を試すというものだったのだ。………返り討ちになっては世話無いがな』
未だに目を見開いているジンを暖かい目で見つめながら落ち込んでいくというなんとも言えない芸当をしながら赤熊はそう語った。
「ふぅん、力試しかぁ…。まぁそれはどうでもいいんだけど。ジンの横にいる子たちってなんなの?」
妙に“力試し”のところにアクセントを付けつつ、クロウはジンの横に並んでいる動物たちに興味を向ける。
『うっ………そ、その者たちは、この森に住む種の子供だ。群れから追放されてしまった者や、親を亡くした者だな』
赤熊は、少し悲しそうにしながら語ってくれた。
なんでも、ジンの横に並んでいる子たちは本来持っていないはずの属性を有していたり、ジンのように親を亡くし、森の中を彷徨っているところを赤熊が保護し、ジンとともに力を付けさせているようだ。
『力を付けさせいると言っても、魔力の使い方や戦い・狩りの基本を教えているだけだがな。まぁそれはそれとして………ここからが本題なのだ。我は、ジンの主人である汝があ、ある程度のち、力を有しているならばこの者たちを任せようと思っていたのだ。当然のことだが汝が拒否するのであればこのまま我の庇護下へ着くのだが………』
「………そんなこと、決まっているね。この子たちは僕が引き取らせてもらうよ。この子たち全員、僕の好きな種類の子たちだからね〜。猫とカラスと鷹と狐か〜。うんうん、可愛いなぁ。どんな名前にしよっかな」
うんうんと頷きながら未だに固まっている動物たちを見てキラキラとした笑みを浮かべる
『………はっ!ご主人!封印なんてして大丈夫なの?!』
「そこで固まってたのか………大丈夫だよ、いざとなれば解除できるんだから」
やっと衝撃から立ち上がりズレた質問をするジンを少し呆れ気味になって答える。
そして、クロウはジンに固まったままの動物たちの説明を頼む。
『分かった!えっとね、まずはボクの横にいるこのこね。この子は【ナイトメアキャッツ】っていう種族の子供だよ。赤熊さんが言うには、闇属性ともう1つ属性を持っていてその属性の種類や強さによって瞳の色が変わるみたい。でね、この子はすっごい綺麗な青色なの!きっと凄い強いと思う!
次の子は、【シャドウウォーカー】っていう種族みたい。なんでも、滅多に見つからない希少な種族みたいで、【死神】って呼ばれることもあるみたいだって。本当に夜になったらどこにいるかわかんない時あるもん。
3番めの子は、【キラーホーク】。この子は羽がちょっと赤くなってるけど、普通ならそこら辺にいる鷹とほとんど同じ毛並みだってさ。それでね!この子はすっごい速く飛べるの!しかも、それだけじゃなくて風の爪みたいなのを使えるの。
でね最後の子が、【九尾狐】とか【妖狐】ってい呼ばれてるみたい。赤熊さんが密猟者に襲われてるところを助けた子だよ。魔法を使う時に尻尾が何本にも見えて、その尻尾が9本に見える種は、赤熊さんやあの蟷螂よりも強いかもしれないんだって!でね、この子はもう4本に見えるだよ!赤熊さんは今まで見てきた種類の中で1番才能があるんだって!
えーっと、これくらいかな?みんな強いんだよー』
まるで自分のことのように嬉しそうに語ってくれるジン。話の途中で次々と復活していた動物たちはどこか恥ずかしそうにモジモジしている。
………まぁ、目の前でべた褒めされたら恥ずかしいよね。
今回出てきた魔物の、たちの名前は次回発表します!
私にネーミングセンスというものがあるか心配ですが、脳みそを搾り尽くして決めたいと思います!!!
ちなみに、これから先もっと増やそうと考えていますので、召喚獣の名前は募集中です!
現段階でも、友人と相談したりして決めてたりしてますので……-