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のらりくらりと異世界遊覧(改定前)  作者: 霧ヶ峰
第1章:異世界転生
20/63

第19話:蟷螂との戦闘後[回想編]

今回は、早めの投稿です!

クロウは、蟷螂の首を一閃すると、その首が地面に落ちる前に[ストレージ]へと収納する。

そして、蟷螂との戦いを物語る周りの景色を眺めるが…

「イッタ!!!」

後ろからぶつかってきたものによって地面に転がされてしまう。

蟷螂との戦いで披露しきった体はうつ伏せに倒れたまま動こうとせず、後ろからぶつかってきたのが何か頭の横に来るまで、わからなかった。


それは

「クゥーン、クゥーン」

と、声を上げ、クロウの傷を一生懸命に舐め続ける。

いつ、異空間から出てきたのかは、知らないがその身体は傷1つなく、灰色に汚れていた体毛は、白く輝きを放っていた。


そう、それはクロウは森の中で助けた子オオカミだった。

一生懸命に傷を舐める子オオカミの頭をなんとか動く左手で撫でる。

一瞬ピクッと身体を縮ませるが、優しく撫でていくうちをだんだんと強張りが解けていくのがわかった。


「はぁ…魔王種かぁ………いい奴ぽかったんだけどなぁー。まあいっか、しんみりしても意味ないし!俺が忘れなければいいだけだしね。………よし![フルヒール][ヒーリングビート]!」

クロウは、子オオカミにかけてやった魔法と同じものを自分に発動する。

すると見る見るうちに、傷がふさがり、体力も徐々にだか回復し始める。

体力の回復を待ってそのまま10分ほど子オオカミを撫でる。


10分後、体力がある程度回復したので、ゆっくりと立ち上がりるが………

「ウッ!」

身体の至る所から筋肉痛が襲いかかってきた。

どうやら、[フルヒール]は傷は塞がるが、筋肉などの疲労までは治してくれないらしい。これは、[ヒーリングビート]に期待だ。


筋肉痛に襲われながらも、魔法によって地形を修復し、蟷螂の死体と喰われていた動物の死体も一緒に搔き集める。

その結果、羽だけでも約10キロほど。小さい方の鎌は80本近く。大鎌は20本ほど集まった。

そして、喰われていた動物は、やはり子オオカミに似ていた。きっと群の仲間か親だったのだろう。


「おかしいな、なんでこんなにあるんだ?あいつ再生し過ぎじゃね?………ん?つか心臓部に【魔石】があるとか言ってなかったっけ?」

クロウはそう言うと、頭と鎌が全て落ちたダルマのようになってしまっている、無残な蟷螂の死体に影を纏わせた、小型のナイフを突き立てる。そのまま、少しだけ切り開き、腕をまくってその傷に手を突っ込む。

そのまま少しだけ体内を探ると、指先にコツンと何かに硬いものが当たった。


「お?これかな」

と言って、ガシッと鷲掴みし、「そぉい!」という掛け声とともに引っ張り出す。

ブチブチっという生々しい音にオオカミの死体を悲しそうな目で見ていた子オオカミがビクッと飛び上がる。


「あ!ごめんね。びっくりしたね」

身を縮めながら辺りをキョロキョロと見渡している子オオカミをそっと撫でてやる。

そのまま少しだけ撫でていると、落ち着いてきたのか縮めていた尻尾を振り始めた。


そんな様子を見て、クロウはふと

「なぁ、お前はこれからどうするんだ?」

と子オオカミに問いかけた。



子オオカミは、首を傾けて「クゥーン?」と鳴く。

どうやら、蟷螂のように会話はできないみたいだ。



「一体どうしたらお前の"声"が聞こえるんだろうね」

クロウは、子オオカミに向かってそう呟く。

それは、特に意味もなくただ呟いただけだった。



だが、その呟きは【世界】によって受理され、【言葉】となって子オオカミに届く。


子オオカミは、なぜか自らがクロウの言葉を理解しているのに戸惑が、その【言葉】に応えるために自らの意思を込めて「ワン!」と鳴いた。





『一緒に行く!』


「うおっ!?」

クロウはいきなり頭の中に直接話しかけられたような感じがして、驚きの声を上げる。

その声は、幼さが残るもののしっかりとした意思を持っていた。


「今の声….お前なのか?」

クロウはそう言って、自分の前に座り尻尾をブンブンと振り回している子オオカミに問いかける。


すると

「ワン!」

という鳴き声とともに、『そうだよ!』と言う声が頭の中に響く。


「一緒に来るって、どうして?」

『お母様とお父様が言ってた。自分が一緒に居たい人について行けって。そして、付いて行くのができなくても、自分の【召喚主(マスター)】になって貰えって』

クロウの問いかけに対し、蟷螂に喰われ無残なことになっているオオカミの死体を悲しそうな目で見つめながら、子オオカミはそう言う。


「あれがお前の親だったのか?」

『うん、お父様とお母様はね。ボクのために戦ってくれた。ボクを逃がすために時間を稼ぐって言ってた。

でね、ボクを逃がす時にそう言ってたんだ。なんのことかわからなかったけど、その時にはもうお母様に咥えられて、森の中に投げられたの。でもね、投げられる前にあの化け物がきて、ボクとお母様に見えない何かを飛ばしてきたんだ。お母様はそれのほとんどをボクに当たらないように守ってくれた。

お母様に投げられた後は、一生懸命走ったの。…すっごく、すっごく怖かった。色んなとこにぶつかったして身体中が、痛かった。

でもね、ご主人に会えて。傷を直してもらった時にね、すっごく暖かかったの。…だから……だからね、ボクはご主人に付いて行くの。………それがお父様とお母様のお願いでボクの気持ちだから………』

子オオカミは途中から目に涙を浮かべてそう語った。

全てを言い終えると、今まで溜め込んでいたものが溢れ出てきたのか、その瞳から止め処なく大粒の涙が次々と零れ落ちる。


「そっか………怖かったよね、辛かったよね。でもね、もう泣かないでいいんだよ。お前はもう1人じゃない。ボクが居るんだから」

クロウは、瞳から涙を流し高く高く遠吠えを響かせる子オオカミをそっと、そしてしっかりと抱きしめた。

そのまま子オオカミが泣き止むまでずっと優しく撫で続けた。










『グズッ…ごめんなさい。ボク、取り乱したりして」


「いいんだよ、いつでも泣いていいんだよ。涙は堪えちゃいけない。しっかり出して元気になろ?」


『うん…うん!、ボク元気になる!元気になってご主人と一緒に居る!』


「ボクと一緒に居るのはいいけど、【召喚主】ってなんなの?」


『えーっと、お父様か言ってたんだけど…

お父様は小さい頃に、1人の人間と一緒に旅をしてて、その人が【召喚主】だったみたい。その頃の話を聞いタコとがあったんだけど、【召喚主】っていうのは、ボクみたいな魔物?と契約してる使役する人たちのことを言うみたいで、契約した動物や魔物達を召喚陣を使って、遠くのところにいても自分のところに召喚できて、召喚も帰還もその人が自由にできるみたい。あ、でも召喚の方はされる方にも拒否権があるみたい。お父様は、一回も拒否したことがなかったって自慢してた』


「………なるほどね、召喚陣か…多分、召喚魔法関係だろうな。お前…名前ないと呼びづらいな。そういや、どんな名前だったんだ?」


『あ!そうだった、ご主人に名前言ってなかった!ボクの名前はね、“ジン”って言うんだ。お父様が言うには、ボクには雷属性の魔力があるみたいで、お父様のご主人様が言ってた雷を司る獣の名前から取って付けてくれたみたい』



『うわぁー、これは………絶対にその召喚主って地球人だよ、しかも絶対モン○ンプレイヤーだよ。つーかなんだよ雷を司る獣って“ジ○オ○ガ”のことだろうな…なんだよそのネーミングセンス、いけてるじゃねぇか。………うむ、その召喚主さんとはいい友人になれそうだな。まあ、生きてればだけど』



「まぁ、いっか。それで、契約と召喚陣ってどんな感じなのか知ってる?」


『えーっとね、召喚陣っていうのは召喚主が自分で決めるみたいなの。そしてね、その召喚陣を使役する動物や魔物よ体のどこかに書いて、召喚主とその動物や魔物の魔力を一緒に流せば契約できるみたい』

ジンは『えーっとね』『えーっとね』と何度も言いながら説明してくれた。その都度に首をチョコチョコと傾けるのが可愛い。


「ボクが自分で陣を決めるのか………うーん、これは悩むなぁ」

そう言いつつも、次々と地面に陣を書きまくり「これかな?」「こっちもいいな」などと言いながらも案を出している。





クロウが陣を考え始めて20分ほど経過した時

「出来た!!!これがボクの召喚陣だ!!!」

といって、高々にガッツポーズを決める。


クロウが書き上げた陣には、円の中に正方形が2つクロスしその中に、円を描くようにJINと“英語”で書かれていた


「うん、シンプルイズベストだね。これから先、使役する魔物の“名前”で真ん中の文字を変えればいいし。うむ、実に簡単だ」


『ふぁああ…ご主人ー出来たのー?』

クロウが20分も地面と向かい合ったままだったため、疲れが出てきたのかジンはいつの間にか眠りについていた。


「あ、ごめんごめん。起こしちゃったか?」


『ううん、いいの。それよりもね、早く契約したい!』


「わかった、早速始めようか!………といっても、どこに陣を書けばいい?」


『ボクのお父様は、舌に書いてもらったって言ってたの。だからね、ボクも舌に書いてほしいの!』


「ベロか…カッコいいな。わかった!ちょっと苦いかもだけど我慢してね」

クロウは目の前でおすわりしながら『あーん』と口を開け舌を出しいるジンをみてクスリと笑う。

そして、[ストレージ]から鋭く削り出した石を取り出し、それの尖った部分で指を少し切って血を滲ませ、そっとジンの舌に陣を書く。



「よし、出来たよ。準備はいい?………行くよー、せーっの!」『えいっ!』

クロウとジンの魔力が魔法陣へと流れ込み、陣が強く輝く。

その瞬間、クロウとジンはお互いの中にある繋がりがさらに強くなったことを感じた。


「成功したみたい………だね」


『うん…なんだろう、ご主人とすっごい近づいた感じがする?』


「言い表しにくいけど、そんな感じだな」

クロウはジンの頭をグリグリと撫で言葉を続ける。


「なぁジン、ボクについて来るって言うけど…学園に行くまではここに居るけどボクの家に来るの?」


『ううん、ボクはご主人を守れるくらい強くなるの。だからね、ご主人がその学園ってところに行くまで森の中で強くなるの』

えっへんと、胸を張りながら堂々というジン。その瞳には、強い意志が宿っていた。


「そっか、ジンがそう決めるならボクは何にも言わないよ。でもね、危ないと思ったらすぐに逃げるんだよ。ボクは大切な人が居なくなるのは好きじゃないからね………」

と、少しだけ悲しみを孕んだ目をどこか遠い所へ向ける。その後すぐにいつも通りの顔に戻しジンを見て言葉を続ける。


「ジン、お前はボクの召喚獣であると共にボクの大切な家族の一員だ。その事を忘れないでね。………さぁ、行け!ボクと学園に行くまでにどれだけ強いなっているか楽しみにしてるよ」


『わかった!ご主人をびっくりさせるくらい強くなるからね!!!』

そう言って1つ高らかに吠えると、ジンは森の中へと駆け出した。





ジンが森の中へと入って行くのを見届けた後、クロウはガックリと地面に膝をつき、乾いた笑い声を上げる。


「は、ははは。今何時だろ…」






大きく傾いている太陽を見るクロウよ姿は、より一層小さく見えるのであった。


ちなみに、この後家に帰ったクロウを待ち構えて居たのは、門の前で腕を組み仁王立ちで佇むアイザックであった。

その後、こってり絞られたのは言うまでもないだろう。

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