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のらりくらりと異世界遊覧(改定前)  作者: 霧ヶ峰
第1章:異世界転生
17/63

第16話:闘いの思い出[回想編]

今回は回想シーンがメインとなります!


「え………」

クロウは、自分へと突っ込んできた物達(・・)の姿を見て盛大にため息をつくと、振り上げていた手を下ろし、剣を[ストレージ]へとしまった。



それも仕方ないだろう…

なぜなら、そこに現れた物達は


クロウが訓練がてら魔獣狩りをしている時に、助けたり、怪我を治したり、処理に困る魔獣の肉をあげたりしているとなぜか懐いてきた動物の子供達だったのだ………


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺とこの動物達がであったのは、俺が5歳の時の夏だった。

アイザックとシャーロットが事務的な仕事を終え、剣と魔法を教えてくれるまでの暇な時間を準備運動として森の中を走り回っていた時、不意に前方の茂みから何が飛び出してきたのだ。

とっさに[エアクッション]という衝撃を吸収する魔法を発動させ、俺と飛び出してきた物の速度を落とし"それ"を優しくキャッチした。

俺はキャッチした"それ"をみて思わず驚きの声をあげてしまった。

なぜなら、俺のキャッチした物体はオオカミと思われる小さな動物だったからだ。

だが、それだけではなかった………

それだけだったのなら「なにこれかわいい」程度で済んだが、そのオオカミはここまでどうやって走ってきたのか不思議に思うほど傷つき、弱り切っていた。

その小さな身体にはいくつもの傷が付き、灰色の毛は所々赤黒く染まっていた。それだけではない、本来なら幼さの残る小さな顔の左眼のあるはずの所には縦に切りつけられたような跡があり、今も出血が続いている。

「大丈夫だ……死なせねぇよ………[フルヒール][ヒーリングビート]」

微かに胸が上下しているため生きてはいるようだか、明らかに死ぬ一歩手前の子供オオカミに傷を癒す[フルヒール](光魔法5階の中級魔法)と発動させている間体力を回復する[ヒーリングビート](光魔法6階の中級魔法)を掛ける。

「よし、これで傷がふさが…?」

いつもならば見る見るうちに傷がふさがって行くのだが、今回はなぜか傷の治りがとても遅いのだ。

しかも、少しずつ治っていく傷をよく見ると、傷口から黒い靄のようなものが水が蒸発するような音を立てながら上っているのだ。

「なんだこれ?毒か?…呪いはさすがにないよな?」

その煙がなにやら嫌な感じがするので追加で[キュアポイズン]という名前のまんまの魔法を掛ける。ちなみに光魔法5階の中級魔法だ。

するとどうだろう、傷口から立ち上っていた黒い靄が一瞬光ったと思ったら次の瞬間には跡形もなく消え去り、瞬く間に傷がふさがっていった。

その様子に安堵しながらも、どうして巣立ちするのもまだのような子供がこんなことになっているのかを考える。

『可能性としては、巣が襲われて親とはぐれたか…せめてはぐれただけならいいんだか………』

そんな不安を心に秘めて、クロウは子オオカミの来た方向へと足を踏み出す。




子オオカミの来た方向へとしばらく進んでいると、胸に抱いていた子オオカミがもぞもぞと動き出す。

「ん、もうちょいで起きるか」

突っ込んできた様子から考えると、起きた途端に噛まれたりしそうなため、クロウは[エリアクリエイト]で造った空間の中に子オオカミとともに入る。

造った空間に入り、[ストレージ]から取り出した毛布の上に子オオカミをそっと乗せ、3メートルほど離れた位置で椅子に座って見守る。

3分ほど見守っていると、子オオカミが一瞬ビクッとなった後、もぞもぞと動き顔を上げる。

周りの景色が違うのに驚いているのか周りをキョロキョロと見回している。

『かわいい』

10秒ほと見回しているとクロウを見つけたようで、頭に[❗️]を浮かべ、唸り声を上げて警戒し始める。


少しだけショボーンしながらもクロウは[ストレージ]から森で狩った動物の肉をこっそり干し肉にしていたものを取り出し、子オオカミを小さく千切って投げる。


投げられた干し肉を警戒してか、穴が開きそうなほどじっと見つめているが、キュゥ〜とこれまた可愛らしく音が響くと、空腹に負けたのか匂いを嗅いだり、ペロッと舐めたりした後に小さいかけらを咥え、ゆっくりと咀嚼し始める。


チビチビと干し肉を食べては、チラチラとクロウの方を見る。それを、椅子の背にもたれかかりながらニコニコと見つめては、干し肉を千切って投げる。

しばらくそんなほっこりした時間が続くが、子オオカミが満腹になったのか毛布の上で丸まって眠ってしまった。


寝ている子オオカミを一際明るい絵がで見た後、その笑みはどんどんと黒く禍々しいものへと変わっていく。

「さてと………とっとと元凶を見つけて血祭りにあげよう」

異空間から踏み出すクロウからは、まるでどす黒い感情が滲み出すように黒い何かがゆらゆらと立ち上っていた。そしてそれは、クロウが歩を進めるごとにクロウの身体にまとわりつき、辺りの影と同化していく。

木々の影と同化しているクロウを見つけるのは例え、動物でも温度感知できる蛇くらいだろう。


だが、クロウは、自分を木の上からじっと見つめている…いや監視していると思われる"物体"に気がつかなかった。





森の影となりながら、子オオカミが来た方向へと向かう。ちなみに異空間に出入りしたのになぜわかるのかというと、とても簡単なことで、クロウの[サーチ]が森の奥で一個だけとてつもなく禍々しい反応をしていて、その方向が異空間に入る前の自分の足跡から割り出した方向と同じだった。というだけなのだ。


禍々しいオーラを放っている奴の方へ、歩を進めている。もう少しで奴の姿を見ることができるという時に、不意に木々が晴れ、光が差し込む。

かなりの広さで木々がなくなり、まるで森の広場のようなところに出たクロウは、その広場の真ん中に居座り、辺りにクチャクチャ、ガチガチ、ミシミシという音を響かせ、辺りの地面と自らを赤く染めながら横たわる灰色の獣を咀嚼している、巨大な"蟷螂"を見つけた。


いや、見つけてしまった。



『……………!………』

灰色の獣を咀嚼している"蟷螂"を見つけた時。

いや、蟷螂ではなく"灰色の獣"を見た時だろうか。

クロウは、胸の中でかすかに残っていた何かが崩れ去ったのがわかった。


その瞬間、クロウを包み込んでいる闇(影)がザワッと揺れる。

「テメェだな?」

クロウがそう呟くと、巨大な蟷螂はクロウの存在に気付いたようで、ギギギと言う音が聞こえそうなほどゆっくりとクロウの方へ振り向く。



蟷螂が振り向くことでクロウはその全貌を見る事が出来た。だが、その姿はクロウのよく知っている地球のカマキリとは違っていた。

片手サイズの小さなカマキリが、こっちの世界では3メートルを優に超え、緑色の鎌の先には紫色の毒々しい刃が付いている。さらに胴体からは、肋骨のように鋭い爪を持つ小さな腕が生え、ワシャワシャと本能的に嫌な動きを続ける。4本のはずの足は、その巨体を支えるためか倍の8本になっている。

さらに胴体のいたるところには、灰色の獣が命と引き換えに付けたと思われる傷がいくつもあり、そこから紫色の毒々しい血が流れ出ている。


「ギ…ギギギ?」

クロウの姿をはっきりと捉え、「新しい餌がやって来た」とでも思っているのか、牙をガチガチの噛み合わせながら顔を時計回りに90度ほど横に回す。


その姿からは、今までに遭遇して来たいくつもの動物達と全く違うものをクロウは感じる。

まるで、全てを破壊し尽くしそうなほどの脅威。


『こいつは殺さなきゃダメだ!』

そう思った瞬間、クロウは[ストレージ]から剣を取り出し魔力で覆い、[ブースト]を発動させ蟷螂を飛びかかる。




ギャィィィインンン!!!………

今出すことのできる最速で斬りかかるクロウの剣とそれに遅れることなく反応した蟷螂の紫の鎌が交差する。


それは、この森で起こる"魔物"とクロウとの初めての闘いの始まりを告げ、森に木霊する。




今のクロウはこの後、あんなことになるとは考えてすらいなかっただろう………

カマキリってでかくなったらかなりのSAN値持ってかれると思う


ちなみに、クロウが森の影と同化する。

というのは、[シャドウムーブ]という闇属性5階の中級魔法。


クロウの闇(影)がザワッと揺れる。

というのは、[シャドウムーブ]が[シャドウスケイル]に変更されたことを指しています。ちなみに闇属性4階の上級魔法。


クロウはこの魔法のことは、全く知りません。本能で使用しています。

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