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のらりくらりと異世界遊覧(改定前)  作者: 霧ヶ峰
第1章:異世界転生
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第12話:強化が始まるのは二人だけじゃない

編集作業終了ー!


 母様のケリーの魔法談議はカルとククルが帰ってからも長ーーーく続いた。

 終いには、昔母様が通っていた学園のある街に住んでいる魔法に詳しい友人に卒業文集並みの分量の手紙を送っていた。

 



 ◇◆◇◆◇アイザック視点◇◆◇◆◇


「ふぅ…手紙出したら幾らかは落ちついたわ。ケリー、後は返事が返ってきたらしましょう。私たちよりもアリッサの方が詳しいでしょうし」

「そうですね。あちらにはトリスタン氏もアンドリュー氏もありますから情報の量も違うですしね」

「おいおい。あいつらまで巻き込んでいいのか?というか、あれだけの文量だ。返事もかなりかかるんじゃないか?」

「大丈夫よ。それにアリッサなら多分明日の夜には返してくれるわ。だって、私以上の魔法好きだもの」

 クロウが床にいつてからヒートアップした二人の会話を横で聞いてはいたが、ある程度の知識を持っている俺でさえどこまで話が広がって行くのかさっぱりわからない。


 二人会話聞いている横で俺はクロウが[召喚魔法]を持っているのではと思っていた。

 親から子へ【希少魔法】が受け継がれるというのは良く聞く話だし、実際にシャルから[光魔法]を、俺から[闇魔法]を受け継いでいるのがいい証拠だろう。それならば俺の持つもう一つの【希少魔法】、[召喚魔法]も受け継がれているはずだ。


 この家にある[魔色の水晶]は簡易的なものだから記録されている【希少魔法】の数は少ない。

 事実、俺の[召喚魔法]は透明な靄として現れていた。

 学園や大きな協会に置いてあるようなちゃんとした[魔色の水晶]だったら、過去に発現したあらゆる【希少魔法】が登録されているらしいが、まぁ無いものはしょうがない。


『魔力を流してから数秒反応がなかった……か』

 本来なら魔力を流した瞬間から色が現れるはずなのだ。遅れて反応するなんていくら旧式の水晶といえど普通はありえない。


『俺の【希少魔法】を両方継いでいるとしたら………裏の戦い方を教えてもいいかもしれんな』

 これからの訓練が楽しみだ。




 ◇◆◇◆◇クロウ視点◇◆◇◆◇


 翌日、カルとククルは昼頃にやってきた。

 母様とケリーが落ち着いているのを見て若干ホッとしているような感じだったが、適正の話になるとパッと顔を輝かせて母様についていった。


 カルとククルが適正の判別を終わるまでそれなりの時間がかかるであろうことから、僕はその待ち時間を父様との訓練をして待つことにした。



「クロウ。訓練をする前に一ついいか?」

「どうしたんですか?父様」

「いや、昨日の[魔色の水晶]のことで、お前が俺の[召喚魔法]を継いでいるんじゃ無いかと思ってな。持っているかどうかでこれからの訓練が少し変わるんだ」

「えっ!?父様って[召喚魔法]持ってたんですか!?じゃあ僕の[召喚魔法]は…」

「あぁ、やはり持っていたか。それは俺から受け継がれたものだ」

 父様が[召喚魔法]を持っていたというのは本当に驚いた。

 神様(アスタルテ)が配慮してくれたのはそれとも偶然なのかはわからないが、これで[空間魔法]がバレない限り僕が祝福(ギフト)持ちだということは気付かれなくなった。

 いつもこっそりとしか使ってなかった[召喚魔法]を自由に使えるのはかなり嬉しい。


「ふむ…クロウ。[召喚魔法]は一般の魔法師からは見劣りするものと考えられているんだが、それはなぜかわかるか?」

「えっと……[召喚魔法]自体での攻撃や補助ができないからですか?」

「正解だ。だが、俺のような魔法剣士や騎士にとって[召喚魔法]は最も恐ろしい魔法の一つになっている。なぜかわかるか?」

「……準備さえしていれば武器が尽きない…からですか?」

「間違いでは無い…が、本当の恐ろしさはこういうことが出来るところなんだ」

 一瞬父様から魔力を感じたと思ったら、その手には包丁くらいの大きさのナイフが握られていた。


「賢いお前ならわかるだろう?武器を持っていない相手がいつのまにか武器を手にしているんだ。それも一瞬のうちに。しかも、この召喚した武器は俺の好きな時に元の場所に戻せる。これほど暗殺や不意打ちに向いている魔法は他にないぞ」

「暗器…いや、隠すことさえしないでいい。なるほど、使いやすそうな魔法ですね」

「ああ、俺もこの魔法には何度も助けられている。武器を落としても、即座にその武器を手元に召喚したりできるし、違う武器を召喚してもいい。盾だって召喚できるからとっさの守りにも向いてる。

 だから、今日からの訓練では[召喚魔法]を取り入れた実践式のものもしていくぞ。お前はシャルに似たからあまり身長が伸びないだろうし、とっさにできることを増やすのはいつかお前を助けることに繋がるはずだ」

「は、はい!頑張ります!」

「とは言っても召喚するものがなかったら意味がないな……よし、今から街に降りて手頃なものを探すとしよう」


 僕はこの時初めて父様と母様が似た者同士なのだと思った。“思い立ったら即実行”この言葉は二人にぴったりすぎる。











 父様に連れられて初めて訪れた街は、前世のゲームで見たファンタジーそのものだった。

 中世ヨーロッパ風の建物に、電気でも油でもない街灯。武器を陳列する店やよくわからない道具を陳列する店。果実や野菜を叩き売る店もたくさんあった。


「父様。今どこに向かってるんですか?武器を扱ってるお店ならさっきもありましたけど」

「ん?あぁ、これから行くのは武器屋じゃないぞ。鍛冶屋だ。それも俺の知り合いの中でもかなり腕のいい奴がやってる店だ」

 来る人来る人に挨拶を返しながら歩いている父様について行くと、教会らしき建物が見えてきた。



 父様は「ここだここだ」と言って教会の横にある煉瓦造りの建物に入っていく。

 それに続いて僕も中に入ったが、入った途端に金属同士を打ち付け合うような音が耳に飛び込んできて驚いた。


「おーい!エヴァン!俺だ!」

 父様はガンガンと響く音に負けないほどの大声で叫ぶ。

 風魔法でも使っているのだろうか、父様の声は驚くほどよく通った。


 すると、ガンガンと響いていた音が止み、奥から煤で黒くなった男の人が出てきた。

 ゴーグルを外し、タオルで顔を拭きながら出てきた男の人は父様を見ると「アイザックさんじゃないですか。どうしたんです?こんなスス汚れた場所に来るなんて」と顔を綻ばせる。


 その後、男の人に連れられて工房のようなところに入り、色々と話をした。

 男の人は、エヴァン・ウィリアムズという名前で、数年前までは隣の教会でシスターをしている女性と共に冒険者をしていたらしい。

 しかもエヴァンさんとシスターさんは父様と母様の後輩らしく、学生時代から面識があったそうだ。



「へぇ〜…三種類の【希少魔法】持ちで、その一つが先輩と同じ[召喚魔法]。保有してある魔力量はすでに一級品、魔力操作もぎこちなくではあるが可能…」

 エヴァンさんは父様から僕の情報を聴くと、ブツブツと何かを呟きながら工房に置いてある様々な道具を使って瞬く間にナイフを二つ作り上げてしまった。


「これは[闇魔法]を使う魔獣の素材を使ってる。[闇魔法]を使うときに媒介として使えるだろう。そしてこっちはただただ頑丈に作った短刀だ。鞘でも刃でもいいから自分の中に思い浮かぶ陣をこのペンで書いてみろ。その通りに彫ってやるから、その後に魔力を流してお前用に登録しちまえ」

「えっ…あ、はい。わかりました」

「クロウ、[召喚魔法]の陣はどんなものでも良い。だが、エヴァンに彫ってもらうのは今だけだ。将来的には自分で刻めるようにならないといけないから出来るだけ分かりやすいものにしておくと良いぞ」

 エヴァンさんと父様に言われるまま、パッと思い浮かんだ陣を剣身に書き記す。


「……ふむ。これで良いんだな?」

「はい!」

 二重の円のなかで正五角形が逆位置に重なった陣。これが僕の頭に思い浮かんだ[召喚魔法]の陣だった。


「へぇ〜…アイザックさん、やっぱり貴方の息子だぜ、この子。二重円に六等星。シンプルで伸び代の多い陣だ。これから先が楽しみだな」

「お前もそう思うか!この歳で俺が教えれることの半分を身につけたんだ。後数年したらお前も追い越されるぞ、きっと」

「それはそれは…」

「うかうかしてられないぞ?」

 クククと笑い合う二人。物語の悪役みたいな笑い方だったが、特に父様は結構様になっていて腹筋に悪かった。




 その後、エヴァンさんに陣を彫ってもらい、父様に教わった通りに陣と自分を繋ぐ。

 陣の繋がりを作ったとたんに何となくではあるが短剣がどのような状態でどこにあるのかがわかった。


「おお〜…凄い。目を瞑ってても短剣の場所がわかる」

  「ほう、やはりお前は筋がいいな。普通ならその感覚がわかるまでそれなりの鍛錬がいるというのに」

「これで僕ももっと強く!」

 いやー頑張って鍛えないと!

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