霊能力者編③
護衛対象はサヤカ(17歳)という見目麗しい巫女の少女でした。
「…という感じですね」
一日目の夜、電話で所長に今日の報告を行う。
まあ一日目は儀式の説明ぐらいしか目ぼしい情報はなかったな。
あとは家の中案内されたり弟子の修行をみたりはしたが特に報告しなくてもいいしな。
「ふ~ん。とりあえずお疲れ様。明日のご予定は?」
「まあサヤカさんにずっとくっついて行動するくらいですかね~。なんでも町に行って除霊とかやるみたいですよ。大丈夫なんですかね?そこを狙われたり住人を人質にとられたりしたら」
「そこは平気だと思うわよ?色々しらべてみたけど、『乱獲祭』は今までそんな卑怯なことをした記録はないからね。どっちかというと正面からその標的だけに向かうタイプ」
「なんだか武士みたいですね。名前からは想像できません」
「そうね。案外適当につけたのかもよ?まあそれは本人たちに聞いてみないとわからないけど。じゃあもう私はもう一仕事あるからきるわね。お疲れ~」
「あ、待ってください!コトネいます?」
「ギリギリいるわよ。ちょっと待って」
「…どうしたの?」
「悪い、すぐすむから。えっと…弁当おいしかったよ。ごちそうさま」
「…お粗末様でした。じゃあおやすみなさい」
「うん、おやすみ」
ふ~…よし寝るか!
いやいやサヤカさんの見張りの交代まで寝れん!
もうちょいなんだけどな。
てかこの障子の向こうであのスタイル抜群の女の子が寝てるってなると変なドキドキ感が。
手をだしたら色々終わるけど。
もし夜這いにきたら無理な気がする。
まあないけど。
「ユウヤさんお疲れ様です。交代の時間になりました。あとは任せてください」
「はい」
おやすみ~。
朝ごはんは鮭と卵焼きとみそ汁と納豆ご飯。
旅館の朝食みたいだな。
まあめっちゃおいしくて空気読まずおかわりしちゃったけど。
「ではユウヤさん、今日はサヤカの町での護衛をよろしくおねがいします」
「はい、任せてください」
お義父さん、娘さんには指一本触れさせませんよ。
「よ、よろしくお願いします!ユウヤさん!」
「あ、うん」
「サヤカお姉ちゃんだ~!」
「今日もじょれい~?」
「遊んで~!」
「おっぱい触らせて~」
誰だ最後の奴。
子供に大人気だなサヤカさん。
「は~いあとでね~」
え、おっぱいも?
「後ろの兄ちゃん誰~?」
「わかった!かれしだ~!」
「え~!いつからいつから~?」
「殺す」
一人おかしいの混じってるな。
「ち、違うよ~!この人は護衛の人で…えっと…私を守ってくれる人っていうか…えっとその…」
可愛いな。
「じゃ、じゃあ私たちは急いでるるから…またね~」
「「「「は~い」」」」
「あの…ユウヤさんすいません…色々迷惑かけてしまって」
「いえいえ全く迷惑じゃないですよ。随分子供達になつかれてますね。羨ましいです」
「う~ん…なんとなく私にっていうよりかは霊能力にって感じですけどね」
いや一人ガチな奴いたと思うけど。
「あ!着きました!ここです!」
「ここは…空き家ですか?」
「はい。いわゆる地縛霊が憑いているそうなんです。取り壊そうとすると妨害したり、新しい人が住んでも同じような感じだそうです」
「なるほと。あんまりこういうの詳しくないんですけど、この家に思い入れみたいなもんがあったり未練があって…て感じなんでしたっけ?」
「はい。その認識で合ってます。でも霊能力がない者には姿が見える人はいても、対話したり触れたりすることはできないんですよ。だから私たちに依頼が来たんです。何を言っているのかが理解できれば穏便に解決できますので」
「でも正直人間に害を与えているならもう悪霊ってことで処分しちゃっていいんじゃないですか?」
「…そういう考え方の人達もいます。悪霊は問答無用で払うと。でも中には悪霊になりたくなくてなった霊達もいるんです。そこで可能な限り対話を試みてダメだったら払うというのがうちなんです」
「なるほど…」
なんとなくこの家周りの事情が分かってきたな。
穏健派と強硬派みたいなもんか。
「なんかすいません。そちらの家の考えを否定するようなことを言ってしまって」
「え!あ、大丈夫です!気にしないでください!で、では行きましょう」
除霊はあっさり終わった。
サヤカさんが誰もいない所に話しかけたりして、なんか約束して懐から御札をだして何か唱えて終わった。
なんとなくだがサヤカさんが話しかけていた場所から、うまくいえないけど存在感というか気配が消えた気がした。
「こっちから見ると何か地味ですね」
「こんなものですよ?むしろ術をたくさん唱えて除霊する方が珍しいですし、平和な証拠です!」
「悪霊退散!みたいなものを期待してたんですが」
「もう…そんなことは滅多にないから安心してください。では次行きますよ。あと五件ほどありますから」
「へ~い」
少しずつだけどサヤカさんと距離が近づいてる気がした。