出会いと別れ
17歳の男子高校生ユウヤは、取り柄のなさや将来性のなさ等が理由、とある人体実験の対象者に選ばれてしまう。そして数か月の実験生活の末、成功し「半人半妖」の存在に。そんなある日、ユウヤの部屋に一人の男が訪ねてくる。
ユウヤ(主人公)→18歳・半人半妖
グラン→23歳・実験成功者最強
ある日の就寝時間あたり、急に部屋に、身長180センチくらいで長い髪をうしろで結んだ男の人が訪ねてきた。
ちなみに部屋には俺の他に実験成功者の奴が三人いる。
訪ねてきた男はいきなりこう宣言した。
「俺は明日の朝この研究所をつぶす」
え?と全員戸惑っていると
「理由は言わない。とにかく俺は明日の朝7時にこの研究所をつぶし始める。巻き込まれたくない者は自分の部屋から出ないか外に逃げてくれ。邪魔をする者は容赦しない。以上だ。」
と言い出ていった。
「どうする?」
「え、うーんどうしよう」
そんなこと聞かれてもな。急すぎるというかなんていうか。てかあの人誰だ。
「ん?お前グランさん知らないの?」
「グランさん?」
「そ、この研究所で一番の成功者」
よく知ってるな。いや俺が他人に興味なさすぎるのかな。
まあ確かにうまく言えないがなんか強そうだなって感じがした!
まあ明日決めるか。
そして当日の朝、外からの悲鳴やら爆発音やらで目が覚める。
周りを見てみるとルームメイトは誰もいない。逃げたのか?それともグランさんとやらを止めに行ったのか?それか手伝いに行ったのか?
もうなんかめんどいのでもうひと眠りしようとしたが、あまりにやかましいので外に出てみた。
とにかく音が大きいところに走って向かってみよう。
そして数分後、大広間で通行上にいる人間たちを走りながら日本刀と銃で無双しているグランさんを発見。走ってるグランさんの周りでは、実験体と思われる人達が、向かってくる人達を止めたり殺したりしている。
「そこの君!彼を止めろ!」
急にキサラギが大声で俺に声をかけてきた。いや無理でしょ。
「何をしてるんだ!早くしろ!命令が聞こえないのか!」
あ、無理だわ。
俺は右手をチョップの形にしてその白衣のおっさんの左胸をついた。見事に体を貫いてそのおっさんは絶命した。
初めて人を殺した。
でも罪悪感みたいなものも特に感じなかった。こんなものかという感想。
これが半魔族化の影響なのか元から冷めていたのかは分からない。人間に対してのリハビリもしていたはずなのに。
とにかくこれでもう後戻りできなくなった。俺はグランさんのもとへ向かい手助けをすることに決めた。
その後、その研究所はなくなった。研究員もほぼいなくなり施設自体の機能もほぼ失われた。
俺はグランさんについていくことにした。その場でグランさんの手助けをした者達も同様だ。
もちろんまわりから追われる身になった。
そしてグランさんをリーダーとした組織『エデン』は、各地の同じような研究所をどんどんつぶしていくことになる。
「どうしてグランさんは研究所をつぶそうとしたんですか?」
研究所をいくつかつぶし、隠れ家で椅子に座り二人になる時がおとずれたので聞いてみた。
「なんだ、ユウヤはそういうこと気にしない奴だと思ってたんだがな」
「そんな無関心キャラにみえますかね」
「あー悪い悪い。ユウヤ以外の奴はすぐに聞いてきたからな」
「あ、そうだったんですか。なんか聞いたらいけないような気がていたので」
「まあ確かに、あの宣言の時理由は言わないって言ったからな。じゃあ簡単に話すぞ?俺があの研究所で
一番の成功者て扱われてたのは知ってるな?」
「はい」
「それで研究員はこう考えた。じゃあこいつの家族にも試してみる価値はあるんじゃないかと」
「あっ」
「そうゆうことだ。そんな会話を聞いてしまってな。しかも俺がその話を聞いた時にはもう三日後くらいに研究所にいれる予定だったらしい。だから俺はその日のうちに覚悟を決めてみんなに宣言したんだ」
「なんでまたあんな宣言を?」
「急にあんな破壊活動をしたら混乱してしまうからな。それに俺は研究員は嫌いだがお前らは好きなんだ。お前らには本当に感謝している」
「え、そんな!僕達もグランさんには感謝しています!」
「はは。まあこれからどうなるかわからないけどよろしくな」
「はい!」
『エデン』が研究所をいくつかつぶした後、政府の人間がグランと交渉をしに訪ねる。
グランはとりあえず話を聞きその交渉を受け入れた。
その内容は大雑把にまとめると『今までの行いを罪にとわない代わりに組織を解散してほしい』というもの。
グラン達の行動により『人体実験』の概要が世間に明らかになった。
今まで『人体実験』の存在は、ただの噂や一部の人間だけが知る事実であったのだが、成功率がかなり低い事や研究所のことを『戦闘訓練所』などの名前の学校として偽っていたことが発覚した為、世間からバッシングされることになったのだ。
政府は隠し切れなくなり事実を認め謝罪。そしてグラン達がこのまま罪にとわれるのはおかしいという意見が多数よせられ、今回の交渉に踏み切ったのだった。
グランも周りを巻き込んでしまったという罪悪感もあり、もう研究所をつぶす意味もなくなってきたので組織を解散することに決めた。
グランさんから解散を告げられた。
俺も周りもずっとグランさんについていくことを望んだが却下された。そして
「これが最後の命令だ。頼む!」
と頭を深く下げられてしまった。
泣いている奴もいた。
そして団は解散した。
その後俺は家に帰ってみた。
しかし家には誰もいなかった。隣の人にどういうことか聞いてみたがすごく嫌そうな顔をされただけで答えてくれなかった。どうやら俺がグランさんの組織に所属していたことは割とこの地域では知られているとみていいだろう。家に来る時の通行人の不快な視線とこの反応から判断するに。
くそ、めんどくさいな。
まあとりあえず近くの公園とかで寝ようかな。これからのことは明日考えよう、色々ありすぎて疲れた。
おやすみ~。
次の日、街を歩いているとある張り紙を見て目を疑った。
それは見覚えのある似顔絵にこう書かれていた。
死神グラン 懸賞金1000万
どういうことだ?
今までの行いは罪にとわれないんじゃなかったのか?
まさか、グランさんは俺達をかばって?
とにかく情報だ!
警察に聞くのは正直嫌だが周りは答えてくれないだろうししょうがない!
警察に話を聞いたところ、グランさんは『エデン』を解散後、約十人の人間を殺したらしい。
その被害者達は研究員の家族やグランさんの親戚だそうだ。
実はグランさんの家族は団を解散する直前くらいに殺されていたらしい。
そしてなんでもそいつらはそのグランさんの家族を逆恨みで殺したらしい。
つまりあの解散の時、グランさんはすでに家族が殺されていたことを知っていた?
だから組織を解散してみんなの罪が帳消しになった後一人で行動を起こしたのか?
組織が存続している状態で殺してしまったら俺達に迷惑がかかるから。
その後、かつて組織に所属していた一部の奴らは憤慨しテロ集団を結成したらしい。
俺はどうする?家族もどこにいるかわからない。まあ少し頑張れば見つかりそうだが。
でも厄介払いされるだろうなー。
妹のユイは特に俺のこと嫌いだったからなー。
ユリコ姉は受け入れてくれそうだ。
父さんと母さんはどうだろう。
雨が降る中、昨日寝た公園に戻りベンチでだらける。
なんか全てがどうでもよくなったな。このまま衰弱死するのも悪くないかな。はは。
「ユウヤって君のことかしら?」
ユウヤ→19歳