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半人半妖の事務所労働  作者: 貴志
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魔法使い編⑦

とうとう村に魔物が攻めてきた。慰霊碑の隠し通路からは『魔獣使い』が。正面からは研究員らしき男『マッド』が。ユウヤはリュウと協力してマッドを殺す。そして慰霊碑では…

「あの巫女服の女が厄介ね。それと指揮をとってる優男のエルフもどうにかしなきゃちょっとまずいかも。仕方ないわね」


魔獣使いの女はそう言い、先ほど鳴らした鈴とは違う鈴をとりだし、今度はゆっくりと鳴らす。

すると魔獣たちの目つきが変わり、瞳の色は赤く染まり始める。

『暴走モード』…防御をすべて捨て、肉体の(かせ)を解き放ち、普段の1.5倍以上の力をだす。

魔獣使いの能力の一つである。


「さて少し避難してきましょうか」


そして魔獣使いの女は後退する。



「これはまずいな」


リンクスは焦っていた。

魔獣たちの変貌に味方のエルフ達も混乱し徐々に劣勢になっていったからだ。

今まで防げていた攻撃が防げなくなり死者が増えていく。

魔獣たちも自分の攻撃に耐えきれず転倒したり、横からの攻撃をあっさりくらったりとしていて、一方的な展開にはなっていないが、自我がはっきりしている分エルフ達は精神的に追い詰められていた。


「村の入り口も気になる…ユウヤ君は病み上がりだ。早くこの戦いを終わらせないと…」


「うおおおおおおおお!」


「!?」


サヤカが雄たけびをおげながら魔獣使いに向かい疾走。

それを止めようとする魔獣たち。


「!よし、お前たち!サヤカさんに向かってる魔獣たちに攻撃を加えろ!」


「「「は、はい!」」」


リンクスはサヤカの近くにいるエルフ達にそう命じる。

防御のことを考えなくなり、半分自我を失っている魔獣たちは隙だらけである。


「…サヤカさんは狙ってやってるのか?」


「うおおおおおお!この魔獣たちを操ってる奴だ!きっと強いに違いないぜ!あの女は私がとる!」


「違うようだな。でもこの好機を逃さない!」


「あらあら。もうめんどくさいわね~」


そしてサヤカは魔獣使いの女の前に立つ。


「私はヤスナ!武人だ!お前の名はなんだ!」


「なんかさっきから思ってたけど見た目と大分印象違うわね。まあいいわ。私はベラーダ。よろしく」


「おう!じゃあ始めようぜ!」


「ふふ、お手柔らかにね」


ヤスナは刀『月影』でベラーダに切りかかる。

ベラーダは後ろに飛び腰から鞭を取り出しヤスナにむけて振る。

ヤスナは刀で防御するが、間をすり抜け左腕に鞭が絡みつく。

そこでベラーダは鞭の握り部分にあるスイッチのようなものを押す。

するとヤスナに電流が走る。


「!?ガ~~~~~~!ん!くそが~~!」


「あらすごい。あの状態で鞭をほどくなんて。まあ少ししか絡んでなかったしね」


「はぁはぁ、絶対殺す」


「ふふ、やってみなさい」


そこからヤスナは逃げに徹していた。

鞭の複雑な軌道を避けながらの攻撃はとても困難だと感じていたからだ。

防御をすれば電流を流されてしまう。

さらに実際に電流を流されたという体験が嫌でもヤスナの精神に絡みつく。

その結果大げさに後退や横に動いたりして攻撃に転じれない。


「私を絶対殺すんじゃないのかしら~」


「うるせ~!」


「じゃあこういうのはどう?」


ベラーダはさらに違う少し小さめの鈴を鳴らす。

すると近くの魔獣たちがベラーダのもとに集まり始める。


「な!汚ねーぞ!」


「私は『魔獣使い』よ。鞭使いじゃないの。これが『魔獣使い』の戦い方なのよ」


そしてベラーダを守る為集まってきた魔獣たちと戦い始めるヤスナ。

その隙にベラーダは先ほど魔獣たちと戦っていたエルフ達に向かう。

そのうちの一人に鞭を振るって絡ませ、先ほどから出力を上げた電流を流し意識を奪う。

周りのエルフ達がベラーダに攻撃を仕掛けようとすると、ヤスナと戦っていた魔獣たちがそのエルフ達にの前に立ちはだかる。

そしてベラーダは少し混乱しているヤスナに向かい鞭を振るう。

ヤスナは鞭に絡めとられ電流を流される。


「ガッ!」


ヤスナはその場に倒れ意識を失う。


「ふふ、これで厄介者が一人減ったわね。あとはあの指揮官の優男を殺ればもう消化試合ね。ん?」


ベラーダは気付く。

先ほど自分を守る為に呼んだ魔獣たちが一匹もいないことに。

もちろん近くのエルフ達にやられた可能性も考えたがそれにしては早すぎる。

そして…


「え?」


自分の胸から剣がはえていた。

ゆっくり後ろを向くとリンクスが無言でベラーダに剣を刺していた。


「そんな…何であなたが…ここに?」


「君は気付かなかったのかもしれないけど、少し前に増援がきたんだよ。入り口に回していた戦士団だ。だから魔獣たちはみんなに任せて僕が最前線にくることができたんだよ。サヤカさんに気を取られていて気付かなかったみたいだね」


「そう…あなたたちは『戦士団』だものね。忘れていたわ。ふふ…」


リンクスは剣を引き抜く。そしてベラーダは倒れ絶命した。

すると残りの魔獣たちもその場で倒れてしまった。


そして戦いは終わりを迎える。





一夜明け、戦士団を中心に魔獣たちの死体を片づけたり、負傷者たちの治療をしている。

死者も埋葬され葬儀も合同で行われた。

感情などが欠如してしまったエルフの子供たちは、恐れられていた暴走もなく、これからゆっくりと治療を行っていく方針だ。


そして次の日、慰霊碑にてユウヤとサヤカ。


「あの…こんな格好ですいません。この度はありがとうございました」


ユウヤにおんぶされながら、サヤカは隠し通路を教えてくれたエルフの霊にお礼を言う。

サヤカは筋肉痛でほぼ動けないのである。


「いや~いいってことよ!こっちこそ村を救ってくれてありがとうな!また来てくれよ~!」


「はい!必ず!」


えらい気さくなエルフだ。


「契約結べそうなエルフいなかったんだっけ?」


「あ~…そこまで気が回らなかったです」


「ですよね。あれ?」


「どうしました?」


「いやなんか見覚えのある霊がというか、間違いないなあれは。何してるんですか?ガンノウンさん」


「お、ユウヤ殿見えるのかい。嬉しいね~」


「…ということはあの研究所で亡くなったんですね」


「まあな。いけると思ったんだがな~。でも気付いたら慰霊碑にいてよ」


「軽い…こんなはずじゃ…もっと悲しがるみたいな展開になると思ってたのに…」


「はっはっはっ!で気になったんだけどよ、さっき話してた契約ってなんだ?」


「あ~それは…サヤカさん俺の言いたいことわかる?」


「はい…わかっちゃいました…でも将来のことを考えるとしなきゃですよね」


「うん…お願い」


「?なんだユウヤ殿?」


「いやなんでも。で契約っていうのは…」



「なるほど。で俺をそのサヤカちゃんとやらに降霊させる契約をしたいと」


「はい、できればでよろしいんですけど」


「う~ん…まあ少し考えさせてくれ」


「はい、構いませんよ」


まあいきなりだししょうがないよな。

言い方は悪いがあんま期待しないでおこう。


「ん?なんか村が騒がしいな」


「そうですね、行ってみましょう」


「あ~俺も俺も!」



村の中心にある広場でそれは起きていた。


「あんたのせいで主人が!主人が!」


「やめなさい、この娘は操られていたんだ」


「だって!だって!」


「どうしたんですか?リンクスさん」


「ルナがアジトで魔法を討った時、二人行方不明になっただろう?その二人の遺体が見つかったんだ。そのうちの一人の奥さんがルナに…ね」


「なるほど」


「おそらく本人もわかってるんだろう。ルナを責めたところでどうしようもないということは。でも色々抑えきれなかったんだろう」


「こいつのせいで!」


「さらに戦士団の同僚もあんな感じだ。何回も注意はしてるんだが…さてもうとめないとな」


「まったく恥ずかしいぜ」


「え?」


サヤカがユウヤの背中から降りて騒動の中心に向かった。


「あ、あれガンノウンさんだな」


「なに?」


「くそ、なんか動きずらいし体中が妙に痛い。まあいい。おいお前、戦士団として恥ずかしくねえのか?子供に向かってそんな文句言ってよ~」


「な、え、霊能力者さん?」


「ガンノウンだよ。あまりにも見てられないんでこの娘に体借りてるんだけどよ。ん?信じてないな?ん~お前はデックだな?俺との剣の訓練中にびびりすぎて漏らしたり、幼馴染のカインちゃんに告白したいて相談してきたリ、あとは」


「あ~!信じます信じます!」


「よ~しよし。いいか、戦士団てのは死を覚悟してる集団のはずだ。そういう誓いをたてたよな?入団式で。悲しいのはわかる。しかしそれで子供みたいに『こいつのせいで!』なんて言うのはどうなんだデクよ。死んでいった奴もひくぜ?じゃあルナを殺すのか?そんなやつは戦士団にいらん」


「は、はい…すいませんでした!」


「きっちり反省しな。ふ~じゃああとは団長頼んだぜ」


「あ、ああ。やっぱりガンノウンには敵わないな」


「俺はこういうのに慣れてるからな。これまでは俺とお前で役割分担してきたがこれからはそうはいかないからな。こういうことをできる副団長を育てるか、お前がこういうのもやるか決めておけよ」


「はいはい」


「はっはっはっ!じゃあな」


「…ふ~。あ~~~~!体が~~!」


「あ~はいはい今行くから」


その場はこうして収まった。

しかし一部のエルフはやはりルナに不満をもっているようだ。





さらに一夜明ける。


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