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王座の間にて

「どうかなさったのかのぅ、ワシの顔に何かついておるかのぅ?」



俺がマーリンのスキルの多さに驚愕し呆けていたのを感じとり、不審に思ったのかマーリンが尋ねてくる。



「い、いや。マーリンがあまりにも強かったから……ついね」



俺の言葉にマーリンは目を見開かせる。何か不味いことでもいったかな。



「ほほぅ、ワシの名前とステータスが分かるということは主殿は鑑定眼をお持ちか? いや主殿には顔が無いゆえ、もしや特殊ユニークスキルの解析かのぅ。解析は異世界人しか持っておらぬゆえ、主殿は異世界の住人という訳か。ほっほっほ、珍しい者の眷属になってしまったのぅ」



やべぇよこの骸骨爺さん。俺のちょっとした一言で看破しやがった。寒気が走るよ。



「マーリンすごいな! もうバレてるみたいだから詳しく洗いざらい話すよーー」



俺は気づけばここにいたことと、地球という世界から転生したことを話す。記憶喪失のように断片的な記憶だが知ってることは全て話し、これからは平穏にゆっくりと暮らしていきたいことを伝えた。



「ふむ、なかなか男じゃのう。命を捨ててまで妹を守る、素晴らしい!」



マーリンに褒められ少しばかり照れる。まぁ、命まで捨てるつもりはなかったんだけどね。などと頭を過った考えは伝えない。

そんなことを考えているとマーリンが声のトーンを落とし話を再開した。



「しかし主殿よ。平穏に暮らすのは些か無理かもしれませんのぅ」



何故だ、俺は生前の苦しい鍛練とは無縁に自由気ままにそして怠惰なる日々を満喫したいだけだ。



「主殿とワシは魔物。いくら生前が人間だったとしてワシらは今や人類の敵という訳じゃ。ましてや主殿はデュラハンそしてワシはエルダーリッチ、上位魔人として恐れられる存在なのじゃよ。一度人類に目撃されてしまえばすぐさま討伐隊がやってくるじゃろうよ」



なんてことだ。そういえば解析の結果にもそんなことが書いてあったような気がする。別に人間と触れ合いたいという気持ちはない。デュラハンとして新たに生を受けた影響なのか、人間と聞いても今一親近感が湧かない。逆に嫌悪感もないが道端にいる蟻のような感覚だ。不思議で堪らない。



「何か方法はないか?」

「ありまするぞ」

「そうか、仕方かないか……諦め……ん? あるの?」

「ありまするぞ」



おいおいおい、骨の爺さんや。あるなら先に言おうや。悲観してしまったじゃないか。勿体ぶるなよ。



「勿体ぶらず教えてくれよマーリン」

「ほっほっほ、若い者をからかうのが生き甲斐ですからのぅ」



ほっほっほじゃねぇよ。まぁ歳よりを敬うのは日本人として当たり前のことだから許してやろう。というか仮に俺が許さないとしても実力行使されたら確実にやられるのはこっちだろう。



「はぁ、んで? 教えてくれよ」

「ほっほっほ、その前に主殿の名前をお聞きしてよろしいかのぅ」

「そういえば言ってなかったな。アキトだよ」

「アキト殿か、良き名じゃのう。さて主殿よ平穏に暮らす方法じゃったかのう」



名前を聞いておいて主殿か。からかってるのか本気なのかいまいち掴めないな。まぁ別に気にするほどのことじゃないが、主殿はやっぱりこそばいいな。



「そうそうそれ」

「うむ、それはワシのスキル<幻影現映リアルファントム>を使うんじゃよ。これは幻を現実に現実を幻にするスキルじゃ。まぁ誓約を幾つかあって使い勝手は良くないがのう」



何それめちゃくちゃ強そうじゃねぇか。



「つまりは主殿の顔をこのスキルで作ればいいんじゃよ。こんなふうにのぅ」



マーリンが持っている杖を一振りすると所々ヒビの割れていた骸骨だった顔が瞬時に人の顔へと変わる。

見るからに年季を感じさせる顔、それと同様に伸びきり乱れた白髪も長い年月を感じさせる。穏やかな顔にある瞳には骸骨の時と同じ色の深紅の瞳が何か歪さを感じさせるようだ。



「どうかのぅ」

「どこからどう見ても人間だよ!」

「ほっほっほ、それはよかった。ですが主殿よ、油断してはいけませぬぞ。主殿のような鑑定系のスキルを持っている人間にはバレてしまうからのぅ」

「それもそうか……」



油断大敵という言葉あるようにやはり自分は人間から見れば敵だという意識を常に持って行動しなければいつか痛い目を見るだろう。しかしやはりというべきかマーリンの持つ<幻影現映リアルファントム>はあったほうがいい。

いつ目撃されるか分からない状況で常に首無しであるのは不用心というものだ。



「だがやっぱりスキルを使用していないよりしていたほうがいいさ! だから幻術をかけてくれ」

「ふむ、その通りじゃのぅ。主殿よ、何か注文はあるかのう?」

「そうだな。とりあえずめちゃくちゃかっこよくしてくれ」



ん?当たり前だろう。自ら望む姿になれるチャンスなんだ。出来るだけイケメンにした方が特というものだ。それくらい男だったら分かるだろう。



「ほっほぅほ、主殿も男じゃのう。ではゆくぞ」



先程と同じようにマーリンが杖を横に振ると同時に自分の顔に何やら靄が掛かるような感覚が襲った。ちょっと気になるが仕方ないだろう。



「ほれ主殿よ。確認してみるとよい」



マーリンはローブの内側から鏡を取り出すと俺へ渡してくる。何故鏡を持っているかは気になるところだが今はそれ以上に気になることがある。



「おぉ!」



俺は鏡に映る自分の姿に驚愕した。

銀色の艶やかな髪は大雑把にオールバックにされており、一束だけ前へ垂れている。目はやや吊り上がっておりその内にある瞳は翡翠色に輝いており優しさを感じられる。顔は中性的で誰がどう見てもイケメンの部類に入るだろう。


しかし俺が驚いたのはそこではない。いや、顔なのだがこの顔は俺が生前にプレイしていたゲームのキャラの顔だった。

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