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Old Remember,Now Me.  作者: 玲於奈
2/15

平川 大二郎の場合

なし

平川 大二郎の場合


そして

御大。


平川大二郎先生は

今も

長野の築百年の

古民家にお住まい

歩けなくなったらと

市内にマンションも

買っているのだが

そこは

まだ使っていないご様子。


さらに

あいかわらず

先生においては


氣さくな人柄。

理論に裏打ちされた教養。

多数の論文。


3拍子そろっており、


それを

まわりは

ほおっておかないようで

私の講師推薦と同じく

4月より

都内の複数大学、短大から

非常勤での講師のお話が

寄せられていた。


あの時

見せられた山の写真。

その生活を続けながら

また東京にでる日々になろうとは。


非常勤でありながら

それでも、1コマ。


しかしながら

数もあれば

週1の

1コマといっても

週4回あったりもして

その他の

不定期、イレギュラーの

講話もあり

そこは

それらを調整する

スケジューリングが

必要となった。


母大学としても

そこらへんの

マネジメントを

する人をつけなければと

考えていられたようで

とどのつまり

それが私の仕事となった。


「あー、もしもし

 けやきさん

 そろそろ畑を

 おこさないといけないから 

 1週間の休みをくれないものかね」


「けやき秘書さんかね」


「梅雨に向けて

 古民家の大工仕事

 雨漏りも直さないと

 いけなんだ、

 なんとかやすみもらえんかね」


平川先生からの

神の声、

そんなリクエストに

右往左往しながらも

私は

パズルのようなコマを

調整した


母大も

先生への功労賞なのか

研究室をそのままに

私がそこで

事務をし

他大学とのスケジュールを

やりくりしていった。



7月。


雨が多くなると予想された

今年。


結局

開けてみれば

雨も多くなく

いつものとおり

暑くなり。


連日の暑さの中

私は

夏休みの平川先生の

集中講義のスケジューリングを

こなす日々だった。


上京の予定も

なかった先生が

昼に


「けやきさん

 ご飯でも食べようと」


突然現れ

そして

お昼に何を

食べるのか提案するよりも早く

思いついたように

私に言った


「けやきちゃん、

 ほいくえんの

 先生。

 やってみない。」


先生が

私をちゃんと

呼ぶときは

必ずなにか裏があるもので


聞けば

福島で高校生に

交じって保育園で

ボランティアの

アルバイトをするとのこと。


平川先生、

待って下さいよお。


とんがり唇をするも

規定の予定調和路線。


「じゃ、

 8月第一週からねえ」


ねえの語尾を歌うように

言って

手をひらひらしながら

先生は出て行った。


バタンと研究室の

扉が閉じるのを

聞きながら

はたと

先生のこれからの夏休みの

スケジューリングを

思い出した。


ああ、

こんなことなら

うなぎでも

先生に食べさせてもらんだった。


とうの先生も

昼を誘いに来たことなど

わすれての

有様。


私は

その後、

他大学との交渉を

締め切りに

追われながら

1週間で片をつけた。


なし

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