エピローグ
なし
曲を聴きながら
「ふるさとのなまりなつかし
停車場の・・・」
上野の喫茶店の石碑に
平川先生に連れて行かれたことが
目の前によみがえる。
「ふるさとという言葉には
日本人の心があるんです。」
そんなことを
ゼミ生みんなに心をこめて
訥々と語っていた先生。
先生はさびに向けて
一心に指揮をする。
いつだったか
平川先生が
私に教えてくださったことも
思い出される
「けやきさん
指揮者というものは
Inviteしなければいけないのです。
みなさんが
演奏したり、歌ったりしたいと
思うように
しむけなければならないのです。
そしてそれが、
本当の指揮というものなのです。」
いつの間にか
演奏は終わっていた。
私も泣いていた。
われんばかりの拍手。
拍手はなりやまない。
駅のホームに向かう人々も
立ち止まるほど。
この曲がいやだなあと言う
人は少ない。
この曲にはバックボーンがある。
日本人なら思い出すあの出来事。
みんなが
それを
また思い出すことができた。
年末に向け
人々の喧噪があわただしい
駅コンコース。
機材の後かたづけを
する人々を見やる
「さあてと、
くら。
えらいやつは帰った。
打ち上げ行くぞ。
う、ち、あ、げ。
最後の命令だ。
出てた学生、全員一人残さずつれてこいよ」
「じゃあ、このかっこだと
なんだから
ひとまず
おれ先にいってるからな」
後ろを見ずにタキシード姿で
手を上げて
バイバイをする金さん。
そんなあなたの方が
変ですよ。
邦男もAKIRANに
一言、二言何か
ささやいている。
そんな邦男に
AKIRAが
肩をたたいている。
伸びていく人を見る。
それぞれが自分の立ち位置で
もがいている。
高さがある人もいれば
伸び途中の人もいる。
自分はどうなのだろうか。
突然視線を感じて見渡せば
邦男がこちらを
向いて一礼する。
そうして
金髪男と機材をもって
帰っていく。
その後ろ姿を見送る。
1か月後の、盛山 けやきがあります。
エピローグの余韻で終わりたい方は、ここで終わってくださいませ。