英霊を名乗るもの
「ここにおわすはなんとかの大英霊アメイジア様だ。てめぇらの私財をこれから現世で有効かつ活用してやるから安心して死ねぇ、んでもって死んでヴァルハラで再びお仕えになるんだなぁ」
数十人の野盗達が武装し、非武装の人間たちを追い立てその傲慢な刃を振るい鮮血をまき散らしている。
荒れた土がその渇きにあえぎ求めるかのようにその赤いを吸い込んでいく。
その周囲にはいくつかの馬車が横転し破損し幌の中の荷をぶちまけている。その持ち主であったはずの死体とともに。
略奪。ありきたりで場当たり的であまりに凄惨な行い。
「おい、見ろよこの女結構上玉だぜぇ、脱がすからこっちこいよぉ」
巨躯の男が華奢な女に覆いかぶさろうとしていた。
醜い面だなと思った。人間いやそれに限らず全生物において共通の。
「楽しんだ後はって、んだぁテメェは」
振り返りこちらと一瞬目が合ったそいつの頭に思いっきり蹴りをぶち込んだ。顎が裂け首の骨が軋む感触が靴底に伝わる。そして、巨木が地面に倒れるように転がったそいつの頭部を次は体重を込め踏み抜いた。
襲われていた娘がその双眸に怯えをたたえながら、こちらを仰ぎ見て呟いた。
「あなたは?」
「英霊」