大地に立つ
「これで地上の行きたい場所を目をつむり強く念じればどこへでもいけるし、逆にここに戻りたいと念じればいつでも帰ってこれる」
その時何かが聞こえたような気がした。
絹を裂く悲鳴のようなものが。目の前にいる少女のものではない。
「戦乙女、ここにいるのは確かオレ達だけのはずだよな」
「それにまちがいはない」
ふいに天を見やる。空の大地からまた同じような声が頭の奥で反響する。
ちょうどあの場所からだ。あそこの一点で間違いがない。不思議な確信があった。
「あの場所へ行って確かめてみたい。念じれば行けるんだったな」
「わたしも同行しよう」
一点を見やったまま静かに目をとざした。
再びまぶたを開くとそこには見渡す限りの赤い大地が広がっていた。足で踏みしめる土は確かにその先の圧倒的質量を感じさせる。木々はところどころに見えるがまばらで背は低い。荒野と表現するが適切であった。
生きていた頃のオーストラリアの風景とどことなく似ている。
空を見上げれば輝く太陽のようなものと、その上にはやはり丸みを帯びた大地が空へと張り付いていた。ちょうど位置的にあの太陽の近くから落ちてきたはずだが。
それにしても世界の真ん中に太陽があり輝いている。ということはこの世界に夜はないのかもしれない。いや、それはともかくとして。
「なぜ俺たちの足元に隕石落下のようなクレータができてるんだ?」
「落下してきたからね」
もしかして瞬間移動のようなものでなくて、サイヤ人襲来のような移動スタイルなのか。
今度降りてくるときは目を開けてみよう。
「それにしてもあなたの勘は正解のようだよ。どうやら向こうで野盗が民間人を襲っているようだよ。どうするパズズ?」
叫び声に不愉快な怒声が混じった音が荒野をこだました。