レージングの鎖
だとしたらさっきの部隊長とかいう男、命知らずというかなんというかだな。計画が人生レベルで破綻しただろうから、今頃自暴自棄になってなければよいのだが。
無言でうなずくと、一足飛びで像までたどり着く。長年野ざらしの状態であったはずなのに件の盾には不思議とさびひとつ見えない。石像もまるで生きた人間を思わせるように生気を含んでいた。
パズズが盾に触れると左手の指輪がわずかに光を発した。そして取り外すための力を込める。
ガコリ
盾は何の抵抗もないまま像の左手から外れ、こちらの腕に納まった。
「やった!」
ベリトが背中で歓声をあげる。
その瞬間、像を支える台座から無数の鎖が飛び出してきた。こちらを一瞬でからめとり、引き寄せ台座へと叩きつける。
鉄臭いにおいが鼻孔をくすぐると同時に、台座に巻きつかれた鎖はこちらの体を轢断させんがまでの力で引き締まっていく。
「ちょっと! 大丈夫!?」
歓声を悲鳴にかえてベリトがこちらへと駆けつけに走り出した。
それに対し唇の端をほんの少しつりあげて笑みを返す。
「まあ、大切な遺物が野ざらしにされていた時点で多少はお察しだったかな。誰が仕組んだ魔法の罠かまでは知らないがな」
魔法に関しては覚えたばかりだが、罠型の魔法の外し方は魔法文字の文字列解析によって決まるとアイネ・クライネよりレクチャーを受けていた。
そして杖とは本来武器ではなくそれを打ち込むための鍵盤であるということも。だから、用心してさえいれば簡単な算術を解くのと同じように、罠の命令文字列を解くことができる。
罠を警戒し事前に持っていた杖によってあらなたる命令文字列を書き込み、その支配を打ち消す。
ジャラッ
鎖は息絶えた蛇のようにして、その力を失っていった。
なんにせよこれで、スヴァリンは手に入れることができたわけだ。




