現在の原罪
「アハハハあなた、面白いこというわね。現在この≪無限の天空≫にいる英霊はアメイジア様ただ一人よ。パズズなんて名前聞いたこともないわ」
そりゃあ昨日名乗ったばかりだからな。
彼女は腕を組みながら無意味に胸を張る。
「でもね、ついでいうとだけど私のご先祖様も英霊の一人だったのよ。といっても≪神々の黄昏≫で巨神に食べられてしまったらしいけれど」
「≪神々の黄昏≫?」
「英霊を名乗るのに何も知らないって顔ね。いいわついてらっしゃい。道すがら話をしてあげる。それと私の名前はベレトビュレト。ベレトでいいわ、よろしくね」
なにやら上機嫌な様子で、手を後ろに組みなおし歩き出す。鼻歌交じりで足取りも軽いがこれは元来の陽気な性格からきているに違いなかった。
庭園から宮殿を出て並木道を二人でともに歩く。
かつて、もう誰も思い出せないほど、そんな昔に大きく永い戦争があったの。この世界の秩序を創ったアースガルドの神々と大地を形づくった巨神達との戦い。それが≪神々の黄昏≫。
その戦いは予言によって神々の敗北が決定づけられていたの。でも、神々はそれを認めたりはしなかった。過去、あるいは別の世界からでも英霊を召喚し呼び集めたのよ。それがヴァルハラに集められた≪英霊士≫達。
≪英霊士≫達は戦乙女によって選別された真なる英雄の魂を持つもの達だったの。そしてこの世界で再び命と肉体を与えられて戦う戦士達。その肉体は不老不死であったはずなのだけれど、巨神とその眷属たる巨人族に食べられたり殺されたしたもの達は二度と決して蘇ったりはしなかったそうよ。
そして皆、予言の運命のとおり≪神々の黄昏≫によって滅ぼされたの。いえ、ただ一人、奇跡的に運命を覆し生き残った英霊がいた。それがアメイジア様。
アメイジア様は主神オーディン様の末期の遺言を聞いたただ一人の存在。そして、地上に投げ込まれ全てを破壊するはずだった≪破滅の杖レーバテイン≫を奪い取ることに成功し運命を書き換えた英霊。本来ならばそれが≪炎の剣≫へと姿を変え全てを焼き尽くすはずだったのだけれど。
なんにしてもそれが世界を救った救世の行為であったことわ間違いないわ。
でもね、それが今の世界をつくった原罪に繋がったのね。




