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ふたりめの

「あら、この料理おいしいわね。あなたうちの調理師にならない。お父様にお願いして、雇ってあげてもいいのよ」

「あ、あの。その、ありがとうございます。で、でも(わたくし)は……いまはここしか」

 現状のヴァルハラはお世辞にも豪華とか煌びやかだとかいえない有様で、どちらかといえば汚い廃墟同前の家屋である。おそらくこの世界においてもその辺の民家と比べれば百人が百人民家に軍配をあげるだろう。

 アイムが清掃をしてくれてから、かなりのスピードでマシになりつつはある。だが、それでもまだまだ普通よりもほど遠いのが現状だ。なにせこの建物ムダにでかい。

 そんな廃墟の一室、厨房の広間に似つかわしくない花が二つ。ひとつは荒野に健気に咲く花一輪と形容しても世の男は誰も否定しないであろうアイム。エプロン姿で家事を行う様がとても似合っている。もうひとつは宮廷の温室で育てられた庭園のバラ。高貴に咲き誇っていると形容しても世の女性は誰も否定しないであろう。騎士とドレスを折衷したようなデザイン服をまとった女だ。二人とも共通しているのは指に同じ指輪をはめていることくらいだろう。

「遠慮しなくていいのよ。このベレト・ローレンツは完全実力主義者、人を人種や家柄で判断したりはしないわ」

 その言い方がすでに他人を見下していると性格をあらわしていると思うが。

 それも仕方ないのかもしれない彼女はいわゆる普通の人間の姿ではない。ほとんどパッと見は人間と一緒だが少しだけ違うところがある。まず人間に角は生えていない。そして細長い尾っぽも。

 こちらの視線に気づいたのかベレトはふふんとドヤ顔で、

「あらなにかしら、英霊様ともあろうかたが私の顔になにかついていて?」

「ああ、顔を拭いたほうがいいな」

「ちょっとウソでしょ」

 急いでハンカチをとりだし顔を拭きだす。

「よく見抜いたな。流石は淑女」

「もうっ」

 顔を赤くして憤慨する。大人びた外見とは裏腹に子供のように素直で騙されやすいのは愛嬌と受け取ってもいいだろう。

 その間、アイムがおずおずと近づいてきていてそっと耳打ちをする。

「英霊士様ぁ、ああのぅ、あのかたいつまでおられるんですか」

 正直な話、こっちがききたい気分だった。 

「頼まれていたものをムニンが届けてくれたよ」

 アイネが厨房に立ち入ってきた。そしてこちらの机に一枚の紙切れを届ける。

 彼女がいうムニンとはこのヴァルハラにいる一対のカラスのことでもう片方をフギンという。この二羽は常に地上の動向に詳しく、注文しておけばどこからかありとあらゆる地上の情報を仕入れてくれるというので、今回はじめておつかいにだしてみたしだいである。

 頼んだのは≪無限の天空(ラニアケア)≫四大国のひとつにして最大の軍事力を誇るという国。極点の国マクスウェル、その首都ローレンツで発行された情報紙である。

 この世界にも新聞程度の情報伝達手段はあったようだと安堵する。

 そっと手で触れる。版画だなこれ。活版印刷が開発されていないとは、どうりで一枚刷りなわけだ。

 その見出しに目をとおし、今回の結果を把握する。

「やれやれ、こうなったか」

 予想が的中して落胆することというのはままあるものなのだと理解する。

「そろそろなにがあったか聞かせてくれるかな?」

 こちらを興味ありげに覗き込むアイネ。それに嘆息してからオレは少女に述懐をはじめた。

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