はじめての
一人生き残った少女、彼女はアイムと名乗った。なんでも彼女の家族はいくつかの宿泊施設を経営していたそこそこの中流階級だったらしい。しかし、国境付近での緊張感が両国間で高まっているのを懸念して、両親が資産を金にして内地に移り住もうと提案。家族と雇い夫達総出で荷物をまとめて荒野を移動することとなった。だが、警護のために雇った傭兵が悪かった。彼らは野盗達と通じていて契約していても彼女らを守る気などさらさらなかった。彼らは巧みに彼女らの一団をこの場所に誘い込むと、両親を殺し資産の入った馬車の荷台だけを強奪し逃げ去ったという。
そのあとは野盗達が証人を全て殺すという手はずだったというわけだ。
「英霊士様、この度の恩は生涯決して忘れません。私でできることがありましたら、今後なんなりとお申し付けください」
健気にいってはいるが彼女は夜の荒野にひとり取り残されていた。
「なぁ、これからヴァルハラに帰ろうと思うんだが」
「帰りたいのなら、来た時と同じようにすればいいよ」
「英霊以外がヴァルハラに入る方法はあるのか」
率直に尋ねる。戦乙女はなんの感慨もなさそうにただこちらを見つめかえした。
「甘いね」
「イヤなのか?」
「甘いものが嫌いな女の子はいないよ」
容貌相応の少女のようにイタズラっぽく笑う。こちらの意図は理解しているらしい。
「指輪を持つ英霊士が認めた場合、認められたものは指輪を通じて入館を許可される。認める方法はわたしがしたのと同じことをあなたがすればいい」
言い終えると拗ねたように顔を横にそむけた。見てないからさっさとすませてこいということなのかもしれない。
アイムに近づくと、戸惑うその両肩にゆっくりと力強く手を添える。
「一つだけオレの願いを聞いてくれないか、少しだけ目を閉じてくれ」
「え? あ、はい」
素直にそして疑うことを知らない少女は意味を理解しないまま、ただ目を閉じた。
すかさず自分が戦乙女にされたことを今度は彼女にする。
彼女は何が起こったのか理解できず一瞬その体を強張らせたが、これといった抵抗はせずやがて力を抜き身を預けてきた。
両肩にかけた腕を伸ばし、体から引き離すと彼女はゆっくりと再び目を開く。
そこには先ほどまでの荒野とはまた別の景色が広がっていた。オレがこの世界に最初に目にした光景と同じ≪無限の天空≫を見渡せるその中心地へ。
「もしよければだけどこれから三人で一緒に暮らさないか。オレもまだこっちに来たばかりで身の回りの世話とかよくわかってないんだ」
「え、いえ、あの」
「ダメかな」
「……喜んで」
薄幸の少女アイムが仲間に加わった。




