睡眠学習中は水難と落下物に注意
今日の座学は生物学。
これも10才以下は全員参加している。
僕だけちょっと年上だけど。
身長ももちろん飛びぬけているのでみんなから”お兄ちゃん”と呼ばれている。
サリーはマリスを”お兄様”、僕を”お兄ちゃん”と呼び分けている。
ここでは、いや夏至祭りのタリム村以外で兄弟を名乗れないのだが、かなりうれしい。
しかし親愛度と尊敬度はお兄様とお兄ちゃんのどっちが上なのだろうか?はて。
授業は生物の分類から始まった。
この世界は精霊界と重なり裏側に魔界がある、魔界はこの世界と同じように暗黒精霊界と重なっている。
それぞれの世界の生物は混じりあい今に至る。
知性のある、つまり会話のできる動物は順に、精霊族、妖精族、人族、魔族、暗黒精霊族に分かれている。
精霊族は精霊界に住み火、水、木、金、土の五行に分かれている。
妖精族は竜、エルフなどがおり、半分精霊で永遠の命を持つ。
シェリーのようなエルフはおとなになるまでは人と同じく成長し、そこからは老いることがない。
人族は僕のような人、夜叉、修羅、獣人に大体分かれ夜叉と修羅は人を二倍に引き伸ばした人生をおくる。
学院長先生やザガード先生は数の浮上に少ない夜叉族で、おじいちゃんも人だけれど夜叉の血を引いている。
夜叉は人より魔法適正が大きい。
夜叉は極端に数が少なく、出会いを作るためにフェロモンが発達していると言われている。
なるほどそれでなんだ。
魔族、暗黒精霊族は世界の裏側に住み現在交流は無い。
昼からは12歳以上全員参加の戦闘術の授業。
ただし今日は新入生が初回だからルールの説明だけ。
この学院では武術もそれぞれの武器ごとに授業がある。
剣術、槍術、それもいろいろな流派が実戦的に学べるようになっている。
魔法も同様に各属性ごとにあるのはもちろん、幻術などの特殊な魔法も細分化されて自由に学ぶことが出来る。
しかしこの世界は危険が満ち溢れていて、戦わねばならない相手はひとつの技だけを持って襲い掛かってくるのではない。
だから多様な相手との実戦経験が必要となってくる。
幻術士など相当上級の剣士であっても初見で対処するのは難しい。
それでこの授業ではあらゆる垣根を越えて戦闘訓練が行われる。
怪我を出来るだけしないようにルールの説明が詳細にわたって行われた。
あすの実力別のグルー分けが楽しみだ。
その夜は暗黒精霊魔法概略を枕にして寝た。
「うわぁ!!!」
「うるせぇ!!!」
「フギャ!」
上のベッドからジェットが吹っ飛ばされてきた。
乱暴なやつ!
夢の中で僕は一人の魔術士としての一生を追体験した。
魔界と交流のあった時代、今は滅びた国トラバニアで、彼女は魔界との貿易商の子として生まれ、こちらと向こうを行き来して育つ。
こちらでは通常の魔法を学び、向こうで暗黒精霊魔法を収めた。
魔族との大戦が始まり魔族と戦ったが、敵性魔法を使うと言うのでスパイ視され逃亡、この本の中に自分の記憶の全てを書き込み無実を訴えた。
寝汗をかいたのでベッドを”洗濯”できれいにして寝ようとすると上から覗き込んでいるシェリーと目が合った。
「クリスおねしょしたんだ。誰にも言わないからな。」
ニカッと笑って寝やがった。
ムカッ!
シェリーの枕の下に本を押し込んどいてやった。
「うわぁ!!!」
上でガサゴソする音がする。
「シェリー、誰にも言わないからな。」
バン!
「イタッ!」
飛んできたのが枕だったのでそのまま当たってやった。
たぶん真っ赤になってるんだろうな。
ムフフかわいいやつだ。
こんなことをしている場合ではなかった。
明日の試合が楽しみ。
早く寝よう。