火のつけ方がやっと分かりました
小皿の上で燃えている火をじっと見ている。
これは、火打石を使ってつけた火だ。
どうしても火が付かない。
授業で配られた”初級魔法実践方法”を見てもさっぱり分からない。
魔力を集めて思い描いた火の形に変形せよ。
この一行でみんなの皿のおがくずに火が付くのが不思議だ。
ふぅ・・
出来ない。
「何してるんだ?」
シェリーめ、自分はノックしろとか言ってるくせに。
「初級?」
見れば分かるだろ、何をしているか。
「火をつけるならこうすりゃいいだけだろ。」
上に向けた手のひらで小さな炎が踊る。
それ精霊魔法でしょ。
足元にジェットが体をこすり付けてきた。
こいつ最近ずっとシェリーにくっついている。
誰の使い魔過覚えていたんだな、てっきり忘れてたと思っていたよ。
ジャンプひとつで机の上に上って、次に使う皿を見つめ・・
おいっ、何で火が付くんだよ?
「ジェットでも出来るってさ。」
ジェットはそのままシェリーの肩に。
こいつらの相手なんてしていられない。
シェリーがだまって僕の戸棚から団子を取り出し、ジェットと分けてほおばりだす。
それ二人のためにとってあったんだから別にいいんだけどねって、短いスカートはいて胡坐かくなよ。
この場合きちんと行ってやったほうがいいんだろうか?
う~気が散る。
そういえば、もう一冊初級の本が箱に入っていたっけ。
見てみよ。
”初級魔法実践方法”
題は同じ。
えっと、
一般魔法はこの世界にある魔力を使って行うものであり、よく使用される”明かり”などがある。
精霊魔法は精霊界とこの世界を繋げて行うもので、加護を持つものは、それぞれの属性の最下級精霊を火や水あるいは小石として召喚し支配して自分の一部として行使しているのである。
最下級精霊を召喚するには、この世界に切れ目を入れて精霊界と繋ぐ必要がある。
水の魔術士が種火の魔法が使えるのは、火をイメージして火の精霊界とこの世界を繋げ、火を取り出しているだけである。
だから、火の最下級精霊を支配できない火以外の魔術士は付いた火を操ることが出来ない。
これは他の属性でも同じことである。
一般的に初級魔法の指導書は種火から入っているために加護を持たない者に最初の挫折をもたらすものであり、そのできないと言う認識が魔法の発動を妨げるのである。
よって、初級とされるものも厳密に精霊魔法とその他を分けるべきで、まず”明かり”から入門すべきである。
そして厳格な定義においての一般魔法は誰でも使用できる。
誰でも使用できる。
誰でも。
なんか涙が出てきた。
この本さえあったなら。
「クリス~初級入門書を見ながら泣いてるやつって始めてみるぞ。」
うるさい、ひぃっく。
「カバさんパンツって始めてみるぞ。」
シェリーの顔が赤くなって青くなる。
しまった。
この後おこったアクシデントによって僕の初級魔法の実践は翌日になった。