始めましてで始めましょう
「クリスそれ全部とるの?」
ダンがあきれた声を出す。
「ん~仕方がないんだ。ざっと講義内容を見たんだけどさっぱり分からないんだよ。村ではしっかり勉強していたはずなんだけど魔法関係が全く分からないんだ。基礎からやらなくっちゃ。」
「しかしいくらなんでもこの基礎魔力練習ってのはいらないだろう。ダール式呼吸法くらいしか教えてもらえないぞ。」
「そのダール式っていったい何なんだよ。さっぱりなんだ。」
「本当にさっぱりなんだね。逆に尊敬するよ。それでザガード先生と打ちあったって、ほんと尊敬するよ。すごいなあ、学院長先生が教えたがるはずだよ。」
そのユリシア学院長は新たに2名弟子に加えることにした。
朝になると忘れてしまうが、ユリシアは若きマーリンと二人の幸せな夢を見る。
そこにいつしか赤子が加わリ自分が抱いているのは自然な流れだった。
もちろんその子はマーリンやユリシアと同じ銀の髪をしている。
その髪が黒く代わったのはマーリンの手紙を見てからのこと。
マーリンが呪われる元凶にあたるクリスを心の底で憎んでいた。
それが心の上層に出なかったのは、マーリンがその子を大切にしていると理解しているから。
そして何よりも近くにいなかったから。
その感情の向きがマーリンの血で書いた手紙で180度変わってしまった。
マーリンが自分に、自分だけにその子を託した。
だから今は、昔からクリスちゃん、命であったと思い込んでるのだった。
その学院長が断りきれずに一人弟子を増やした。
個人的にもしがらみが有り断わりきれなかった。
シェリル・リーン
自分が教えられることは何も無いのだが、断われなかった。
そのシェリーは部屋で自分の姿を大きな姿見に映して最終チェックの真っ最中。
道具を買ったついでに化粧もしてもらった。
もともと白い肌に肩に流れる金の髪。
うっすらと頬にさした紅はまだまだ幼いながらもシェリーの美しさを引き出していた。
でもこの制服の色がちょっと気に入らない。
やっぱりさっき買ったわんぴ-スに着替えようと制服を脱ぎ、ちょっと好奇心が起きた。
もし急激に膨らんだ胸をそのまま見せてやったらどんな顔をするかな?
どんな驚き方をするかな?
ちょっと鏡に映してみる。
あ、鼻の穴がヒクヒクしてる。
これじゃちょっと気分が出ない。
あそこにドアがあるから角度はこの方がいいかな?
あんなふうにドアがあいて、あんなふうに呆然と見つめて、・・
「ごめんなさい!」
ぇ?
自分が想像したのは見えそうで見えなくて、きゃ~なんてかわいい声で、それからそれから・・
ぎぎぎぎぎっとく日を廻して時計を見る。
いつの間にかこんな時間。
視線を下に。
うん全く隠れてない。
これはもう もらってもらうしかないのか。
むかし一度だけ見たエルフの結婚式のシーンの花嫁に自分の顔が・・
まてまて現実逃避している場合では・・
大急ぎで服を着て鏡を見ると、今まで実阿古とがないくらいにまだ真っ赤のままの自分。
落ち着こう。
す~は~
ぉし
やっと落ち着いたときドアがノックされた。
「入っていいですか?いきなりドアを開けてごめんなさい。」
「どうぞ、だいじょうぶです。」
自分で言ってってだいじょうぶは違うんじゃないかな?
とか思ったりした。
そしてこうしようと決めていた挨拶をした。
長いこと一人暮らしをしていたからドアをノックしたことがなかった。
そもそもうちの小屋には表と繋ぐドアしかなかった。
まさか着替えてる途中だとは思わなかった。
そしってあんなに・・・
いやいやまてまて・・
学生生活の案内に寮はキッドと同室になることが書いてあった。
寮は空間魔法で部屋を増設してあるので、いったん決めた入居者は変更できない仕様になっている。
だからキッドが去っていったときてっきり一人で生活しなければならないんだと思っていた。
部屋のドアに在室と出ていたときは本当に嬉しくて、嬉しくて。
思いっきりドアを開けたら、芸術品が。
「ごめんなさい!」
あわててドアを閉める。
落ち着こう。
す~は~
ぉし
キッドの名前の呪いは解けたし、娘をよろしくって言われたから女の子なのは知ってたけど。
ぁ、目に焼きついてしまっってる。
落ち着こう。
す~は~
ぉし
今度こそ大丈夫。
支度できるまでもう少し待ったほうがいいよね。
ぉし
今度こそ大丈夫。
トントントン
「入っていいですか?いきなりドアを開けてごめんなさい。」
「どうぞ、だいじょうぶです。」
まだ空気が思い。
もじもじしていたキッドが切り出した。
「始めまして、シェリル・リーンです。」
やっぱりそこから始めたほうがいいよね。
「クリス・デ・マーリンですよろしく。」
ところで、ずっと女の子と寮が同室ってどうすればいいんだろう。