閑話 サハラの決意 (補足回)
「え~と、とりあえず異世界転生したのは良いんだけど、困ったな~」
サハラは自身の黒髪の癖っ毛を手で弄りながら呟く。 艶っつやだしサラっとしてるうえにコシのある髪で触り心地が良くてついつい触ってしまうのです。
「この体、女なんですよね」
ついさっきたっぷり5分位凹んだばかりなのにまた悩み出す。
本当は格好良い男キャラで戦士か魔導士を作ろうと思ってただけにちょっとだけ残念なのです。 職業に関しては別に今から戦士に転職って手もあるのかもしれないけどステータス初期値なんですよね。 同じく魔導士になろうにも魔力も精神力も無いと思うんですよね。
まあ、回復とか支援とか補助〈暗い場所を明かりで照らすとかそういう便利系の魔法〉は使えるんだし良いか。
「でも、女なんですよね~」
う~ん、腕を組んで唸る。
「しかも、よくよく考えたら若返った事になるんだよね」
キャラ設定で17歳に設定したきがする。〈ただし紗原はリアルでも童顔な為初対面の人にはしょっちゅう「20歳位ですか?」と言われたので正直あまり歳を実感した事は無かったりする〉
「そう言えばギルドに一人女性になりたいって言ってた人が居たな~」
仲が良いギルドメンバーの一人が以前コッソリサハラにだけ打ち明けてくれた事がある。
『実は私、ネカマなんです』
その子は周りから完璧に女だと思われてる子だったので結構びっくりした覚えがある、その子が教えてくれたのだけどネカマプレイは何も相手を欺く為に行う訳では無くて、自分の願望を叶える為にするのだと言っていた。
ただしその願望は人により色々あって、女の子の振りしてチヤホヤされたい、とかアイテム貢いで欲しい、とかは一番メジャーな所かもしれない。
他にも色々な理由はあるけどとりあえずそれは置いといて、その子の理由は『女になりたかったんです。』これは女の子の振りをする、に似ているけど実は全然違ってほんとの意味で女になりたいと言う事なのです。 どう違うのかはその時はあんまり良く分っていませんでした。
なんでサハラに告白したのかと言うとその子は全員を騙し秘密を抱えながら女を演じるのがかなりの負担になってきていたので、おっとりした優しげなサハラを相談役に選んで打ち明けたらしい。
それ以降サハラに女の良さを〈注、男として接する女性と言う事では無いです〉延々と説きつつあれやこれや相談や協力をお願いに来ていた。
そんなこんなで長い時間洗脳を受けていたら何となくネカマプレイも良いかも、とかこっそり思って来てたりした。 でもほんとに女になるとは予想外ですね。
※中には女キャラを使ってたら勝手に周りが女と決めつけて接してきてついつい男だと言うタイミングを逃しちゃってなし崩し的に女の振りをしてるだけの人も居たりする※
このタイミングでその事を思い出すのも何かの縁かな、と思い決心を固めた。
「よし! これからは女として生きる!」
人生自体にはこれと言って不満も無かったけど、男としてはあんまり上手く行ってなかったしそれも良いよね。 前向きに行かないとね!
紗原は女友達も結構居るし仲が良い子も居るが好きになった子に告白すると大抵「紗原くんって良い人ね」で終わるタイプなのだ。
「そうと決めたからには、この世界では元男だとばれない様に頑張ろう、ゲームのキャラだし顔は可愛いはず。 うん、大丈夫!」
何が大丈夫なのか良く分らないけど、サハラはそう決めて悩まなければならない事は終わったと足取り軽く歩き出すのだった。
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丁度良かったのだが、女の体になったのに心では「自分は男だ!」と強く思い続けるのは精神に非常に悪かったのだ。 何故ならそれは性同一性障害と呼ばれる状態に非常に近いし、その他にも生理現象に見舞われる度に精神的に不安定になってそのうち精神分裂症に陥る程危険な事だった。
でも、精神は肉体に引っ張られやすいので実際には遅かれ早かれ大丈夫だったかもしれない。
サハラさんは基本的に楽天家ですね。