プロローグ
今回が実質ほんとのプロローグなのです!
さて、いつも通りにキャラを選んでログインを選択します。視界が暗転し、次の瞬間、ギルドホームにある自室のベッドで目を覚ました。(領地持ちギルドにはギルドホームが与えられるのです)
するとさっそくログイン中のギルドメンバーからメンバー専用チャンネルで挨拶が飛んでくる。 それに適当に返事を返しつつ今日は何をしようかな~? なんて考えてると――
「やほー、サハラー。 マスターから聞いてる?」
(なんの事だろう?)
声を掛けて来たのは最近特に仲が良いメンバーの「レノア」です。 彼女(中身は男だけど)も黒髪黒目の18歳位の少女キャラです、ただし髪はストレートなうえに腰の辺りで真っ直ぐに切りそろえられた純和風な髪型なのです。
「やほ~、なんの事~?」
「なんかねー、まだwikiにも乗ってないスキル覚えたんだってさー、それで後で実験したいから付き合ってって言ってたよ」
(へー、wikiにも載ってないなんてどんなスキルなんだろう、こういうのってわくわくするよね)
「そうなんだ~、それでマスターいつ頃来るのかな?」
そう答えながら自室を出てホームの談話室的な部屋に移動します。
「ちょっと前に夕飯食べてくるって言ってたからそろそろ来るんじゃないかな」
「了解、じゃあ談話室でまったり待つよ~」
言いつつドアを開け談話室に入るとすでにレノアが寛いで居たので手を振りつつ隣に座りました。
「レノアは、新スキルってどんなのか聞いてる?」
「それがまだ教えてくれなかったんだよね」
「そっか~、きになるね~」
それから暫くの間新スキルについての予想やどこそこの狩場でレジェンドアイテムが出たらしいなどの他愛も無い会話で盛り上がっているとマスターがINしてきたので談話室で待ってる事を伝えます。
「やー、二人ともお待たせだよ!」
マスターの[プラーミャ]金髪碧眼で気の強そうなわがままお嬢様的なキャラで、年頃は13歳前後です。 こころなしかいつもよりテンションが高いです。
「待ちくたびれましたよマスター、いったいどんなスキルなんですかー?」
「まあまあ、とりあえず裏の森に移動しようよ」
レノアの言葉に曖昧に返しつつプラーミャは二人の手を取り引っ張ります。
「ちょっとちょっと、分りましたってばー、引っ張らないで下さいよー」
レノアはいつものマスターらしからぬ行動にでたプラーミャに少し戸惑いつつも同じゲーマーとして気持ちは分るので微笑んでしまいます。
「ふふ、プラーミャが珍しくはしゃいでますね~」
サハラも同じく微笑むと――
「もー、サハラはすぐそうやってお姉さん振るんだから」
(ちょっとからかったら思わぬ反撃が来ました、お姉さんって、自分は男なんだけどな~)
「まぁまぁ~、それじゃ行きましょうか~、ところで私は女性じゃないってば~」
「ふっふっふ、それこそどうでもよい問題なのだよ!」さらに横からレノアまで「うん、サハラはお姉さんで違和感無いな、むしろ男と言う申告がダウトだな」
なんですと~……、いつも通りの会話で談笑しつつ裏の森まで移動していく、距離はそんなに離れていないので10分も歩けばもう森の中です。
森、というよりは雑木林の様な明るく風通しも良い、まさに昼寝するのにはうってつけの場所でサハラとレノアはプラーミャに期待の眼差しを向けていました。
「さあさあ、マスター新スキルってどんなのなんですかー? やっぱマスターの事だから広域火炎魔法ですよね!」
「いえいえ、プラーミャさんがこんなに少人数で効果を確かめるんですからきっと最上級火属性単体攻撃魔法ですよね!」
二人が二人ともプラーミャならばどんな魔法だろうと火属性の攻撃魔法以外にはありえないと思っています。 何せ実際今まで覚えたスキルはほとんどが火属性攻撃魔法だったのです。
しかし、意外な事に――
「ごめーん、期待を裏切って悪いんだけど今回は違うんだよね」
予想外の答えに二人してキョトンとしていると、ちょっと真面目な顔になりながら続けました。
「実はさ、昨日突然変なメールが来てさ、スキル習得スクロールとか言うのが入ってたんだ」
「スキル習得スクロールですか、初めて聞きますね~」
「でしょー? なんかの悪戯かなー、とは思いつつも使ってみたんだよ、そしたらいきなりスクロールが光りながら燃え出してさ、無くなっちゃったんだけど」
持ってたスクロールが燃え出して焦って投げ捨てるジェスチャーをしつつ。
「で、一応スキル欄を確認したらさ、見覚えが無いスキルが一つ増えてたんだよね」
「なんだか凄い怪しいですね、実はウイルスでも仕掛けられたんじゃないんですか?」
「えー、レノちゃんおっかない事言わないでよね」
「う~ん、それでどんなスキルなんですか?」
「ああ、えっとね、【アナザーワールド】って名前だね、良くわかんないけどテレポ系の魔法みたいよ」
(なんだか凄く怪しいです、リアルだったら絶対にそんな怪しい物には関わらないけど、まぁゲームだし大丈夫だよね)
「じゃあ、マスターとりあえず使ってみようよ」
「そうですね~、まぁいきなり最終ダンジョンに飛ばされてもすぐ【リターンホーム】使えば大丈夫だよね」
「オッケー、じゃあ一回PT組みましょう、このスキルってPT全員のMPから発動するんだけどさ」
二人とも話を聞きながらPT申請にOKを出しました。
「なーんとMP3万もつかうんだよね、しかも4人以上だと倍々に使用MPが増えていくという・・・」
ちなみに普通の高レベル魔導士の平均MPが4000程なのです。
「ぶ、どんな大魔法なのさ」
「だから私が必要なんですね~」
「そうそう、フルサポーターのサハラちゃんじゃなきゃ全然MPが足りないんだよね」
サハラは魔力や精神力等のステータス依存のスキルは一つも取っていない、魔力や精神力が必要なスキルは全て攻撃魔法か相手にペナルティを与えるデバフといわれる魔法で、回復魔法や見方へ掛けるバフは使うMPを自分で設定し、それにより威力が変わるというシステムになっているのです。
なので本来はステータスアップに使うはずのポイントは半分はスキルに回し残りをMPに注ぎ込んだおかげでサーバーでも最高のMP量とスキル数を誇っている、ただし戦闘力は作ったばかりのレベル1の魔術士のが高いと言う……何せ攻撃は【殴る】以外に無いので…………。
「じゃあ、皆覚悟は良いかい?」
「いつでもOKさ!」 「だいじょうぶですよ」
「あ、そうだ、皆で手握っとこうよ」
「あいよ」 「そうですね、その方があんしんですね」
そして手と手を取り合い、互いの顔を見てうなずきあってから――
「じゃあはじめようか!」
そういってプラーミャはスキルリストから【アナザーワールド】を選び発動を選択しました。
プラーミャの周りに黒い光が広がったかと思うとその光はすぐに三人を包み込んだのです。
「わ!」「ちょ、ちょっと何も見えないよ」「あわわわわ」
プラーミャ、レノア、サハラの順に焦った声をあげます。 黒い光に包まれたお陰で周囲が全く見えなくなったので為です。 さらに次の瞬間、足元の感覚が無くなり、立っているのか倒れて居るのかすら分らなくなった所で今度は強烈な耳鳴りに襲われ、それと共に意識が薄れていってしまいました。
そして、森から三人の姿が消えました。
やっと次の話で異世界入りです!