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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第三部

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おっさんA、王都で依頼を受ける01

ジャック軍務卿との会談の翌日。

まずは商業ギルドに報告に行く。

ハインリッヒさんは安心したような顔で、

「これで商業ギルドの面目も立ちます」

と言ってくれた。

なんでも、根回しをした貴族に、ガセ情報だったらどうするつもりだと相当詰められていたらしい。

(まったく。どこの世界にもつまらんやつがいるものだ)

と思う一方で、

(まぁ、保身しなければいけない側の気持ちもわからんじゃないがな)

とも思う。

そして、ハインリッヒさんがさっそくヒースさんに手紙を出してくれるというのを聞き、商業ギルドを後にした。

「どうせなら二、三日観光していこうよ! アタシ美味しい物食べたい!」

「そうね。私は服を見てみたいわ」

「いいね! じゃあついでに服とか小間物類を仕入れちゃおうよ。南の町に戻ったら売るの」

「露店の許可でももらって軽く商売か。いいな」

「じゃあ、決まりね。さっそく美味しそうなお店を探しに行こう!」

「「「おう!」」」

そんな話で王都にいくつかある商店街の中で最も大きい場所に向かう。

そこにはいろんな大店が店を構えていて一見すると飲食店がないように見えたが、一本路地を入ると、けっこうな数の飲食店があった。

「オムライスもいいし、ステーキもいいね。あ! あのお店なんてどう? 鉄板焼きって書いてあるよ」

「鉄板焼きってなにを焼くのかしら?」

「たぶんお好み焼きのことだろうな」

「おこのみやき、ってなんですか?」

「ああ、そうか。マイは知らないかもな。王都名物なんだよ。小麦粉の生地の中にたくさんのキャベツと具材をたっぷり入れて焼いたパンケーキって言えばだいたい想像つくか? そこにこってりしたソースとマヨネーズをかけて食うんだ」

「それは美味しそうですね」

「じゃあ、決まりね。今日のお昼はお好み焼きだ!」

「「「おう!」」」

みんなして少し興奮気味に鉄板焼きの店に入っていく。

その店はなかなか年季の入った作りだったが、鉄板は綺麗に磨かれており、それだけで味が確かであることが分かった。

「ジューッ」と美味しそうな音を立てて焼かれるお好み焼きをマイが興味津々で見つめる。

私は密かに、

(これを広めたのもジャック軍務卿なのだろうか? いや、他の転生者の可能性もあるな。とするとその転生者は関西圏の出身だったに違いない)

などと考えながら豚玉ができ上がるのを待った。

「あいよ。お待ち!」

そんな威勢のいい声と共に出されたお好み焼きをさっそく口に運ぶ。

「あふっ!」

マイがびっくりしたような顔でハフハフやっているのを見ながらみんなで笑ったりして楽しく食べ進めていく。

するとそこへ一人の男性が入ってきた。

「毎度! ノリッツ商会です!」

と言っているからおそらく納入業者だろう。

店の主人は慣れた調子で、

「おう、お疲れさん。そっちに置いといてくれ」

と言うが、その業者は、

「すみません。今日はキャベツがご注文の数揃えられませんでした。その代わりお代は割引させていただきますんで、それでご勘弁願えませんか?」

と申し訳なさそうな顔でそう店主に告げた。

「はぁ? どういうことだ?」

と驚いたのと怪訝なのを足して二で割ったような顔で問い返す店主に、その納入業者は、

「すみません。契約してる農家の畑が荒らされちまったみたいなんです。すぐに代わりの農家をみつけようと思ったんですが、なかなか思うようにいかなくって」

と本当に申し訳ないと言いまた頭を下げる。

「おいおい。キャベツが無きゃ商売あがったりだ。ていうか、なんだ? その畑が荒らされたってのは」

「はい。農家のおっちゃん曰く、歯形が特徴的なんで、ウサギの仕業じゃないかってことなんですけどね。それがまた大規模で畑の半分近くがやられちまったらしいんですよ。急いで冒険者ギルドには依頼を出したみたいなんですけど、なにしろ大量のウサギの駆除なんて依頼、誰もやったことがないだろうから、引き受け手がいるかどうかって話でしたよ」

「おいおい。そりゃコトだな。その農家さんは大丈夫なのか?」

「いえ。大打撃らしいですよ。ただ、キャベツ以外にも作物は作ってるので、急におまんまの食い上げってことにはならないようですが」

「そうかい。それは不幸中の幸いだったな。でも、明日からの仕入れはどうするんだ?」

「それはうちの総力をあげて仕入れてきますんで」

「よろしく頼むぞ」

「はい!」

という話を聞いてサーニャがキラキラした目を私に向けてきた。

「おいおい。まさか受ける気か?」

「面白そうじゃん! 受けようよ!」

「ウサギさんの駆除なんてちょっとかわいそうな気がしますけど……」

「でも、農家にとっちゃ深刻な獣害だよ?」

「そうですね。アレンさんどうしますか?」

「……とりあえず、ギルドに行って依頼が残ってるかどうか見てみよう」

「やった!」

そんな話で急遽、ウサギ駆除の依頼があるかどうか確認しに冒険者ギルドに向かう。

そして、案の定、その依頼は売れ残っていた。

(調査と駆除に金貨一枚。まぁ、一日仕事ならそれでも受けるやつはいるだろうが、何日かかるか、はたして本当にウサギかどうかもわからない依頼で金貨一枚は安い方だよな。こりゃ放置しておいても誰も受けんぞ)

と思いその依頼票を持って受付に行く。

詳しい話を聞くと、ここから歩いて二、三時間ほどの所にある農家だということだったので、私たちはさっそくその農家に向かうことにした。

夕暮れの少し前、ギルドでもらった地図を片手にその農家を訪ねる。

玄関でおとないを告げ、

「冒険者ギルドで依頼を受けた冒険者だ。農家のケニーさんの家であってるか?」

と聞くとご婦人と思われる女性はたいそう喜び、大歓迎で家に上げてくれた。

そこで改めてケニーさんと挨拶を交わし、詳しい状況を聞く。

「へい。それがひどいんですよ。畑の半分くらいがごっそりやられちまいまして。それでどうしたもんかと思ってたところなんですよ」

と困り顔のケニーさんに、

「どっちの方角から来たとかどのくらいの数がいるかとかはわかるか? なにも手掛かりがないんじゃこっちも討伐のしようがないからな」

と聞くと、ケニーさんはしばらく考えるような仕草を見せ、

「おそらく十や二十じゃきかねぇ数だと思います。なにしろ一晩で畑の半分がやられちまったんですから。すぐに畑の周りを見て回りましたが、巣みたいなものはありませんでした」

と面目無さそうに答えてきた。

(おいおい。全く手がかりなしかよ……)

と思い、少しため息を吐く。

すると横で話を聞いていたサーニャが、

「近所に原っぱってある?」

と聞いた。

少しきょとんとするケニーさんに、

「ウサギってさ、原っぱにいるんだよ」

とサーニャが続ける。

私はなるほどと思い、

「そうか。そうだったな。この近辺でそういう場所に心当たりはないか? 少し開けて見通しのいい原っぱなんかが怪しいんだが」

と聞くと、ケニーさんはハッとした顔で、

「ああ、それなら、畑の奥にある林を抜けたところに小さな草原があったと思いますよ。昔は炭焼きの爺さんが住んでいたって話を聞いたことがありますが、もう何十年も前の話です。なにもない原っぱなんで最近では誰も近づかない場所なんです」

と答えてくれた。

「そうか。ならそこが怪しいな。どれ、詳しい場所を教えてくれ」

「はい」

と話して周辺の略図を書いてもらう。

ケニーさんの大雑把な記憶によるとその場所はここから歩いて二、三時間の所だということだった。

「一応、今晩は畑の周辺で見回りついでに野営をしよう。人の気配があったらウサギも近寄りにくいだろうからな」

と話し、その日はみんなで畑の脇を借り、野営をすることにする。

私たちはちょっとしたキャンプ気分でのんびりカレーを食うと交代で見張りながら寝ることにした。

夜中。

ごそごそっという音で目を覚ます。

慌てて起きると、すでにサーニャが剣を抜いていた。

「すぐに明かりをつける!」

と言って慌てて灯りの魔道具を取り出し、空に向かって射出する。

するとそこには百近い角ウサギの群れがいた。


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