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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第三部

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おっさんA、勇者と出会う01

王都に着き、軍務卿である元勇者になんとかつなぎをつけた翌朝。

不覚にもまた二日酔いで目を覚ます。

(いかん。つい嬉しそうなサーニャにつられて飲み過ぎてしまった)

と反省するが、同時にサーニャの嬉しそうな顔や軽快に踊る姿を思い出し、ふと頬を緩める。

(上手くいってよかった。しかしこれからだぞ)

と自分に言い聞かせ、少し気を引き締めながら宿の食堂に向かった。

たっぷりのスープにパンを浸し、さらに柔らかくして食べる。

(ああ、二日酔いの胃に染みるなぁ)

と思っていると、そこに宿の従業員が少し慌てた感じでやってきた。

「あの、お客様に御用があるという方が見えてまして、それが、そのどうも貴族様のお使いのようなんですが……」

と困った感じの顔で言う従業員に、私は一瞬、

「もう来たのか!?」

と驚きの声を上げてしまう。

しかし、その声を聞き、余計に不安顔になる宿の従業員を見て、

「ああ、安心してくれなにもヤバいことには巻き込まれてないからな。ちょっと商売の用件があって、呼び出されただけだ。そうそう、部屋はそのまま取っておいてもらって構わんからよろしく頼む」

となるべく落ち着いた声でそう言うと、大慌てで出かける準備に取り掛かった。

やがて、準備が整い宿の玄関に出る。

いかにも貴族の物らしい立派な馬車と執事らしき人物がいるのを見て、リズが、

「申し訳ございません。お待たせいたしました」

と声を掛けると、その執事は無表情のまま、

「いえ。主人から急ぐよう言われておりますので、さっそくですが、どうぞお乗りください」

と言い、私たちに馬車に乗るよう促してきた。

(なんだろうか? この違和感は? プロの執事と言えばプロの執事なんだろうがあの立ち姿の隙の無さはまるで剣豪のそれだ。もしかして元は軍人か?)

と思いつつ少しドキドキしながら馬車に乗り込み宿を後にする。

しばらく行くと馬車は例の検問をすんなり通り抜け、軍務卿の屋敷へと入っていった。

馬車を下り、執事の案内で控室のようなところに入る。

「あ! 私、普段着で来ちゃった!」

と今さらのように焦るリズに、

「心配するな。私も忘れていた。こうなったら腹を括るしかない」

と苦笑いで答えていると、すぐにまた執事がやって来て、

「お待たせいたしました。面談の準備が整ってございます。応接室にどうぞ」

と言ってきた。

コクリとうなずき席を立つ。

西の町の伯爵屋敷やヒースさんの自宅にも驚いたが、この屋敷はそれをはるかに上回っていると感じた。

広い廊下を彩る華やかな色彩の天井画やいかにも高そうな大きな壺に色とりどりの花が活けてあるのに少し圧倒されながら進んでいく。

そして、ひと際豪華な装飾が施された分厚そうな扉の前に立つと執事が中に声を掛けた。

「失礼いたします。お客様をお連れしました」

「入れ」

その言葉を受け、執事が扉を開ける。

中に入ると、そこにはやたらガタイのいい四十歳から五十歳くらいで黒髪の紳士と、それよりもずいぶんと若く見える金髪の女性が立っていた。

「サーニャ!」

金髪の淑女の方が声を上げ、こちらに向かって小走りに近づいてくる。

どうやらサーニャに用があるのだろうと思ってすっと脇に避けると、その女性はガバッと勢いよくサーニャに抱き着き、

「よかった。元気にしてたのね」

と言いつつ少し涙ぐみ始めた。

「もう、エリス、苦しいって」

とサーニャがどこか嬉しそうな苦笑いでその女性に語り掛ける。

するとその女性は少しサーニャを抱く手を緩め、

「うふふ。お久しぶりね」

と言い柔らかく微笑んだ。

「うん。久しぶり。ジャックもエリスも元気だった?」

「ええ。うちはみんな元気よ」

と二人が挨拶を交わしているところに、「こほん」と咳払いが聞こえてくる。

私はハッとして居住まいを正すと、

「お初にお目にかかります、軍務卿閣下。私はアレンと申しまして、こちらにいるエルフのマイ、そしてそのサーニャと共に、この行商人のリズの護衛をしながら旅をしております。本日はお時間をいただき誠にありがとうございます」

と深々と頭を下げつつそう挨拶をした。

「うむ。書状は読んだ。さっそく詳しい話を聞かせてもらおう」

そう言われて広いソファを視線で指示されたので、「失礼します」と断ってから着席する。

私とリズとマイは普通に軍務卿の対面に座ったが、サーニャは堂々と聖女エリスの隣に座った。

「まず初めに確認しておきたいことがある。エリス。頼めるか?」

「ええ」

そんなやり取りでエリス様が立ち上がりマイの前までやってくる。

「少し魔力を見ますね。両手をお出しになって」

そう言われてマイが両手を出すと、エリス様はその手を取り、軽く目を閉じた。

一瞬で膨大な魔力が広がり辺りが青白い光に包まれる。

(な、なんだ、この大魔法は!?)

と思い思わず立ち上がって構えるが、その魔法はすぐに止み、エリス様が目を開けた。

「どうだ?」

「間違いありませんよ」

「そうか」

それだけ言ってエリス様がまたサーニャの隣に座る。

すると、そこでジャック軍務卿が口を開き、

「本当に聖魔法が使えるかどうか見ただけだ、安心しろ」

と言って私に座るよう目で促してきた。

「し、失礼いたしました」

と少し恥ずかしい感じでソファに座り直す。

すると今度はエリス様が口を開き、

「海に魔力を流した時、どんな感じだったか詳しく聞かせてちょうだい」

とマイに向かってそう質問した。

「あ、はい。えっと、私、海に魔力を流したのは初めてだったのですが、普通の水に魔力を流す時よりすんなり魔力が通っていきました。危うく全部持っていかれそうになるくらいだったので、慌てて止めたんです」

そう言ったマイの言葉にエリス様が軽くうなずき、ジャック軍務卿に向かい、

「間違いなくなにかがいると思うわよ」

とだけ言った。

「そうか。ならば動こう」

そう短く言ってジャック軍務卿が側に控えていた執事に視線を向ける。

「ヨーク。話は決まった。先遣隊としてさっそく影を動かす。指揮は任せたぞ」

「はっ」

そう言うと執事はきっちり一礼して部屋を出て行ってしまった。

(なんだ? なにがどうなっている?)

と疑問だらけの私にジャック軍務卿が視線を向け、

「心配ない。あとは任せろ」

とだけ言ってきた。

「あ、はぁ……」

とぼんやり返事をしてからハッとして、

「あの。具体的に教えていただくことは可能でしょうか? 一応、依頼主に状況を報告しないといけないので」

と言うと、ジャック軍務卿はうなずき、

「海水は通常、魔力が通りにくいものらしい。それがすんなり通ったということはおそらく魔素が薄くなっているんだろう。ということはどこかにその大量の魔素を食っている存在がいるということだ」

と言い私に真剣な表情を見せてきた。

「なるほど。ということは、これから先は国家にお任せしていいということですね?」

「ああ。そうだ。先遣隊をやって調査した後本格的な討伐に動くことになる。おそらく私自身も出張ることになるだろうな」

「それは心強いことでございます。で、期間はどのくらいと見積もっておられますか?」

「下準備に三十日程度は必要だ。それから一軍を率いてその海辺の町に行くことになるだろうから、五十日ほどで町に入ると思っておいてくれ。討伐自体はおそらく五日もあれば終わるだろう」

「かしこまりました。依頼主にはそのように伝えます」

「話は以上だ。しかし、せっかく来たのだから昼食くらい出そう。しばらくの間エリスに任せる」

そう言ってジャック軍務卿がさっさと部屋を出ていく。

その後姿に頭を下げて見送る私たちに向かってエリス様が、

「まずはお茶にしましょうか」

と言い私たちにいかにも淑女らしい微笑みを向けてきた。


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