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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第一部

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おっさんA、商売をする01

リズと行動を共にすることになってから初めての村に入る。

その村はリネア村というらしく、南の町へ続く街道を少し入ったところにある小さな村だった。

(まぁ、いわゆるド田舎だな)

と思いつつも、自然豊かでどこかのんびりした田園風景を見てなんとなく心和ませる。

私たちは宿に入ると、リズの提案でまずは村長屋敷を訪ねた。

「こういう村はさ、村長が商売も取り仕切ってる場合が多いんだよね。だから、まずは村長に会って話すのが一番ってわけさ」

そういうリズについて村長屋敷を訪ねると、いかにも田舎の村長といった人の良さそうな老人が私たちを出迎えてくれた。

「ようこそ。こんな小さな村へ。今回はどのような用件ですかな?」

「ええ。絹織物を買い付けさせてもらいたいんです」

「ほう。それはそれは。この村の絹の買い付けはギースさんといって南の町を拠点にしている行商人さんにだけ卸しているんですが、ギースさんだけでは捌けない余剰在庫が出ておりましたので、ちょうどよかったです」

「それはお互いに好都合ですね。ちなみに一反いくらですか?」

「はい。大銀貨一枚になりますよ」

「え!?」

驚くリズに村長も驚いて、

「えっと、高いようであれば、多少は……」

と言ってくる。

しかし、リズはぶんぶんと激しく首を横に振り、

「それじゃあ安すぎますよ!」

と言った。

「え? どういうことでしょう? うちは長年その値段で取引してきたのですが……」

不安がる村長にリズが、

「絹織物は南の町に行くと一反小金貨一枚。つまり大銀貨五枚で取引されてるんです。もちろん仲卸でいくらか上乗せされた金額ですが、それでも卸値で二割は安すぎると思うんです。失礼ですが、この村の絹織物の品質は?」

と聞き返す。

すると村長は、「えっと……」と戸惑いながら、

「普通だと思うんですが……」

と言ってきた。

「よかったら見せてくれませんか? 一応の目利きはできるので」

「あ。はい。すぐにお持ちします」

そう言って村長がなにやら布を持ってくる。

それを見たリズは、

「けっこういい品ですね。これなら、二反で大銀貨五枚出せますよ」

と少しニヤッとしながらそう言った。

「え? そんなにですか?」

「ええ。この品質なら仲卸にでも確実に小金貨一枚で売り抜けます。なので、私は卸値が五割までなら出せると踏みました。ちなみに、在庫はどのくらい?」

「え? あ、はい。百反はあります」

「わかりました。じゃあ、全部ください。小金貨五十枚で買わせていただきます!」

「ありがとうございます! ああ、なんという幸運でしょう。ではさっそく倉庫の方にご案内いたしますので、どうぞこちらへ」

とんとん拍子に話が進みさっそく在庫を納めているという倉庫に向かう。

「えっと。荷馬車を持ってきてください。今若い衆を呼んで積み込ませますので」

ニコニコ顔でそう言ってくる村長に、リズが、

「いえ。大丈夫です。こう見えて小さな魔法鞄を持っていますから。サーニャ。お願いしていい?」

と言ってサーニャに視線を送った。

「りょーかーい」

サーニャは軽くそう言うと、布の入った箱を次々と魔法鞄の中にしまい始める。

「あ。ちゃんと数は数えてね?」

「そうだった。えっと、これが五つ目ね」

「ひと箱にだいたい五反入っておりますので、二十個で百反になります」

「了解」

そう言ってさっさと箱をしまっていくサーニャを村長は少し心配そうに見つめていたが、無事きっちり二十箱を納めたところで、ほっとし、

「では、代金をお願いいたします」

とニッコリ笑ってそう言ってきた。

「もちろん」

そう言ってリズがなにやら帳面を取り出し、なにやら書き始める。

そしてリズは、

「こちらが買い付けの証明書です。ちゃんと二反で大銀貨五枚と記してありますから、次回からそのギースという商人にも同じ値段で売るといいでしょう。あと、こちらの領収書に署名をください」

と言ってその書類と小金貨が入っていると思しき小袋を差し出した。

村長が軽く中身を確かめ、領収書に署名をする。

「これで取引成立ですね」

「ええ。いいお取引ができました」

そう言って二人が握手をしたところで商談は終わった。

「みなさんは宿にお泊りですか?」

「ええ。そうです」

「では、今晩はうちにお越しください。せめてものお礼に我が家の手料理などを振舞わせていただきます」

「それはありがとうございます。今後の商売の話もしたいと思っておりましたので、是非、お邪魔させていただきますわ」

「それは願ってもないことです。では夕暮れごろお越しください。お待ちしておりますよ」

そう挨拶を交わし、いったん宿に戻る。

道すがら、私が、

「いい買い物ができたみたいだな」

と問いかけると、リズは、

「うん。小金貨五十枚まる儲け。小さな村との一回の取引にしてはけっこうな商売になったわ」

とホクホク顔でそう答えた。

「今後の商売の話と言っていたが、継続的に商売をするつもりなのか?」

「そうだね。もし、アレンたちの都合が悪くないなら、もう一回くらい南の町とこの村を往復したいかな? それにギースっていう商人にも会ってみたいし」

「それは構わんが、そのギースとやらに会ってどうするんだ?」

「うん。ちょっと商売のイロハを教えてあげようと思ってね。ちゃんとやればちゃんと儲かるってことをしっかり伝えたいんだ」

「そりゃまた立派な心掛けだが、なんでまたそんな面倒なことを?」

「そりゃ、商人の心意気ってやつだね。売り手も買い手もそれなりに儲かって世間様が潤うような商売をするのが商人の基本でしょ? おそらくだけどそのギースって人も仲卸に買いたたかれてるんじゃないかな? だとしたら、適当な大商会に乗り込んで直接買い付けの道を拓いてやってもいいと思ってるくらい。おそらくだけど、その仲卸が一番美味しい思いをしてるんじゃないかと思うから、きっといいお灸になるはずだよ」

「ほう。そこまで読めているのか。さすがだな」

「えへへ。こう見えて勘はいいほうだからね」

そんな話をしていると宿に到着したので、さっそく風呂を使わせてもらうことにした。

ゆっくり風呂に浸かって風呂の入り口にあるちょっとした休憩所で牛乳を買い、ぐびっと飲む。

(風呂上がりにはやっぱり牛乳だよな)

と思っていると、サーニャたちも風呂から上がってきた。

「あ。牛乳いいな! 私も飲もう!」

「あ。私も欲しいです。リズはどうする?」

「あ、じゃあ私も。シロップ入りがいいかな」

「お。いいね。じゃあ、シロップ入り三つで!」

そう言ってサーニャが牛乳を買い、さっそく三人で飲み始める。

私はなんとなく三人がしっかりと打ち解けてくれたような雰囲気を感じ、

(よかった。これからも楽しい旅になりそうだな)

と思った。

湯上りの時間をゆったりと過ごし、夕暮れが近づいてきたのを見て村長宅に向かう。

村長宅で用意された心尽くしの膳をいただきながら、リズが何気なく村長に、

「この村で困っていることってなにかありますか?」

と話を切り出した。

「そうですね。絹織物の値段は今日教えていただきましたから、今後はなんとかしようと思っておりますが、あとは、たまにイノシシの魔獣が出て芋畑を荒らすくらいのものでしょうか?」

そんなことを苦笑いで言う村長に、今度はサーニャが、

「イノシシがでるの? じゃあ討伐してあげよっか?」

と気安く応じる。

村長はびっくりしていたが、

「ああ。この子たちは冒険者なんです。なんていうか、私の護衛のようなものだと思ってください」

とリズが説明すると、なんとなく納得して、

「じゃあ、お願いいたしましょうかね。しかし、あまり報酬は出せませんが……」

と遠慮がちに言ってきた。

「ああ。いいの、いいの。報酬よりお肉が目的だから。そんなわけで、報酬はお肉ってことでどう?」

「それはこちらも助かります。しかし、いいんですか?」

「いいよ。ちょっと体を動かしたい気分だったし。ね、アレン?」

「ん? ああ、そうだな。イノシシの駆除なら報酬が出たところで安いのはわかってるからな。それより、肉をもらえる方が嬉しい」

「ということで、どの辺で出るか教えてくれる?」

「ええ。それはもう。ああ、地図を持ってきますね」

そう言って村長は席を立ち、わりと簡素な地図を持って帰ってくる。

村長の説明だとイノシシはいつも村の南西側から出てくるらしかった。

「なるほど。じゃあ、この辺の森が怪しいね」

「おそらくそうだろうな。たぶんヌタ場が近くにあると思うんだが、村長、そういうイノシシが泥浴びをするのにもってこいな場所を知らないか?」

「それでしたらその森の中央辺りに小さな水場があります。水場といっても小さな水たまり程度ですからおそらくイノシシがそういうことに使うにはうってつけでしょう」

「なるほど。わかった。さっそく明日からいってこよう。なに、二、三日もあれば終わると思うぞ」

「それは助かります。なにからなにまですみませんなぁ」

「いや。こういうのはお互い様だ。うちらもタダで肉が手に入るんだからな」

「そう言ってくださるとありがたいです」

そう話してイノシシ狩りが決まる。

そして、村長宅を辞し、宿に戻るとさっそく明日に向けてゆっくりと体を休めた。


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